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Ⅰ.診 断

中皮腫の診断

文献検索と採択

中皮腫の診断
1-1.頻度・危険因子,臨床症状
推 奨
明らかなアスベスト曝露歴(職業性曝露・環境曝露)のある場合は中皮腫検出のための画像検査を行うよう勧められる。(グレードA)

a.頻度:全中皮腫の年間死亡数は1,410人(2013年)であり,急増している。

b.危険因子:アスベスト曝露歴(職業性曝露,環境曝露),中皮腫の家族歴

c.症状:胸部圧迫感,労作時呼吸困難,胸痛,咳嗽など

エビデンス
a.
中皮腫は胸膜,腹膜,心膜および極めて稀に精巣鞘膜の中皮細胞に発生する悪性腫瘍であり,男女比は4:1,85%が胸膜発生である1)。人口動態統計(ICD-10)による年間死亡数は1,410人(2013年)で,1995年から2.8倍に増加している。
b.
中皮腫の発生とアスベスト曝露の関係は明らかであり,アスベスト関連の職業歴やアスベスト取扱い工場近くの居住歴のある場合(環境曝露)は,検診を受けることが勧められる(推奨グレードA)。非アスベストであるエリオナイトも中皮腫を発生させるが,国内からの報告はみられない。中皮腫の発生リスクを増加させない安全な累積アスベスト曝露量は明らかではない2)。がんの家族歴を有する中皮腫患者の6%に,生殖細胞系列(Germline)BAP1遺伝子変異があり,BAP1遺伝子変異の保因者はmutationのない中皮腫患者よりも若く発症し,腹膜中皮腫の比率が高いとの報告があり,遺伝的素因の可能性が示されている3)
c.
放射線治療後に,電離放射線によって中皮腫が引き起こされる可能性を示唆する報告がある。一方,電離放射線と中皮腫発生の関係は明らかではないとの報告4)もあり,両者の因果関係は明らかではない。
d.
悪性胸膜中皮腫は,病初期は無症状であるが,胸水の増加に伴い胸部圧迫感や労作時呼吸苦(DOE)が出現する。胸壁浸潤が始まるT2期以降になると胸痛・背部痛を自覚するようになる。疼痛は病期の進行につれて高度になる。中皮腫細胞は胸腔穿刺路や手術創に沿って高率に播種巣を形成する。
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