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Ⅰ.診 断

確定診断

文献検索と採択

確定診断
3-1.確定診断
推 奨

a.切除可能と判断される場合には,針生検による確定診断を回避して外科的切除を行うよう勧められる。(グレードB)

b.切除不能と判断される,術前治療を計画する,および他の疾患との鑑別が必要な場合には,経皮針生検を行うよう勧められる。(グレードB)

c.経皮針生検においては,十分な組織検体を採取することが可能な針を用い,胸膜を貫通するルートは避けるべきである。(グレードB)

エビデンス
a.
縦隔腫瘍の鑑別診断は,臨床情報によりある程度可能であることが多い。奇形腫以外の胚細胞性腫瘍はほとんどが若年男性発生であり,重症筋無力症を合併していればほぼ胸腺腫である。また前項に述べられているが,画像診断の精度も高くなっており,悪性リンパ腫や脂肪腫などの軟部腫瘍と胸腺上皮性腫瘍をある程度鑑別できるようになってきている。そのため胸腺上皮性腫瘍が疑われ,切除可能ならば確定診断を得ることを省略して外科的切除を行うことは妥当である。この診断・治療戦略には明確なエビデンスはないが,NCCNガイドラインにも明記されており1),またESTSメンバーを対象としたサーベイランスにおいても,91%の施設が術前に組織診断をルーチンには行っていないと回答している2)。したがってエキスパートのコンセンサスは得られていることとし,グレードBとした。
b.
しかしながら切除不能と判断される場合や術前治療を計画する場合には,胸腺腫と胸腺癌で用いる化学療法レジメンが異なる場合が多いことより確定診断を得るべきである。また画像所見や臨床情報から悪性リンパ腫などの可能性が否定できない場合にも同様である。これらは十分に科学的根拠があると思われ,グレードBとした。
c.
縦隔腫瘍に対する生検としては,多くの場合CTガイド下経皮針生検が行われる。しかし方法も穿刺吸引細胞診(fine-needle aspiration;FNA)から皮膚切開を行うものまでいくつかの報告があり,用いられた穿刺針の太さも一定ではない3)。Morrisseyらは,FNA(19-22 G)での60例とTru-Cut針(14 G)での34例を比較し,診断正確度はFNAで77%,Tru-Cut針で94%であり,より正確な診断のためにはより大きな検体が必要であると報告している4)。さらにYonemoriらは18-20 Gの生検針を用いた報告で,胸腺上皮性腫瘍においても高い確率でWHO組織型まで診断可能としている5)。一方で,免疫染色などを駆使すればFNAでも十分に診断できるとする報告も散見される6)。合併症(血痰,血腫,気胸など)についてはほとんどの報告で数%程度であるが,胸膜を貫通するルートではそれだけでなく悪性細胞の胸腔内散布のリスクもあり,回避すべきと考えられている。さらにかなり稀ではあるが,穿刺通路に腫瘍の再発をきたしたとの報告もある7)。なお,経皮針生検が困難または組織診断が得られなかった場合には,外科的生検(縦隔鏡,胸腔鏡を含む)を考慮してもよい8)
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