6

Ⅱ.非小細胞肺癌(NSCLC)

Ⅳ期非小細胞肺癌

文献検索と採択

Ⅳ期非小細胞肺癌

本文中に用いた略語および用語の解説

CBDCA カルボプラチン IFM イホスファミド
CDDP シスプラチン nab-PTX ナブパクリタキセル
CPT-11 イリノテカン PEM ペメトレキセド
DTX ドセタキセル PTX パクリタキセル
GEM ゲムシタビン VNR ビノレルビン
PD-1阻害剤 ペムブロリズマブ,ニボルマブの総称
S-1 テガフール・ギメラシル・オテラシルカリウム配合剤
プラチナ製剤 CDDPとCBDCAの総称
第1・2世代のEGFR-TKI ゲフィチニブ・エルロチニブ・アファチニブの総称
ALK anaplastic lymphoma kinase 未分化リンパ腫キナーゼ
ECOG eastern cooperative oncology group 米国東海岸癌臨床試験グループ
EGFR epidermal growth factor receptor 上皮成長因子受容体
MST median survival time 生存期間中央値
ORR objective response rate 客観的奏効率
OS overall survival 全生存期間
PFS progression free survival 無増悪生存期間
PS performance status 一般状態
QOL quality of life 生活の質
TKI tyrosine kinase inhibitor チロシンキナーゼ阻害剤
ECOG(Eastern Cooperative Oncology Group)Performance Status
Score 定 義
0 全く問題なく活動できる。
発病前と同じ日常生活が制限なく行える。
1 肉体的に激しい活動は制限されるが,歩行可能で,軽作業や座っての作業は行うことができる。例:軽い家事,事務作業
2 歩行可能で自分の身の回りのことはすべて可能だが作業はできない。
日中の50%以上はベッド外で過ごす。
3 限られた自分の身の回りのことしかできない。
日中の50%以上をベッドか椅子で過ごす。
4 全く動けない。
自分の身の回りのことは全くできない。
完全にベッドか椅子で過ごす。

出典:Common Toxicity Criteria Version2.0 Publish Date April 30, 1999
(JCOGホームページhttp://www.jcog.jp/より引用)

高齢者の定義
 日本における高齢者の定義は70~75歳以上とされており,2010年版の肺癌診療ガイドラインでは70歳以上を高齢者と定義していた。
 しかしながら,日本の臨床試験においては75歳以上の患者が除外されていることが多く,75歳以上の高齢者のデータは少ない。また,近年の70歳以上の高齢者を対象とした第3世代細胞障害性抗癌剤単剤とプラチナ製剤併用療法を比較した2編の第Ⅲ相試験において両試験とも登録された患者の多くが75歳以上であった。
 以上より,本ガイドラインでは「75歳以上」を高齢者と定義する。
維持療法(Maintenance)の定義
  • Switch maintenance:プラチナ製剤併用療法による導入療法後,導入療法で使用した薬剤とは別の薬剤に切り替えて投与する方法。
  • Continuation maintenance:プラチナ製剤併用療法による導入療法後,プラチナ製剤と併用した薬剤を継続して投与する方法。

樹形図

Ⅳ期非小細胞肺癌:サブグループ別の治療方針 CQ22

Ⅳ期非小細胞肺癌における薬物療法の意義とサブグループ別の治療方針

解 説
 Ⅳ期非小細胞肺癌で用いられる薬物療法では長らく細胞障害性抗癌剤がその中心を担ってきた。細胞障害性抗癌剤と緩和治療を比較したメタアナリシスによって,細胞障害性抗癌剤が有意に生存を延長させることが示されている1)。これは1年生存率にして9%(20%から29%)の改善,もしくは約1.5カ月のOS延長に相当する。第3世代細胞障害性抗癌剤を用いた検討では,第3世代細胞障害性抗癌剤単剤療法でも緩和治療に比して1年生存率で約7%の改善がみられたことが示されている2)。毒性については,別のメタアナリシスで進行非小細胞肺癌における細胞障害性抗癌剤の治療関連死が1.26%であったと報告されており,その内訳は発熱性好中球減少,虚血や血栓などの心血管系の毒性,肺炎や間質性肺障害などの肺毒性であった3)。QOLに関しては,第3世代細胞障害性抗癌剤単剤は緩和治療と比較してQOLを改善させることが報告されている4)。また,第3世代細胞障害性抗癌剤にプラチナ製剤を追加することの意義を評価した第Ⅲ相試験では,プラチナ製剤と第3世代細胞障害性抗癌剤の併用がOS・PFS延長を示すと同時にQOLは同等であったと報告されている5)
 一方,2000年代以降になって分子標的治療薬・免疫チェックポイント阻害剤といった新規治療が登場し,これらは細胞障害性抗癌剤との比較によってその有効性を示している。
 分子標的治療薬の多くはEGFR遺伝子変異,ALK遺伝子転座,ROS1遺伝子転座,BRAF遺伝子変異といった癌発生の直接的な原因となるようなドライバーと称される遺伝子変異に対する阻害剤である。全身状態良好で,これらドライバー遺伝子の変異を有する患者に対して,それぞれのキナーゼ阻害剤を投与することでORRの増加,PFSの延長などの有効性が報告されている。EGFR遺伝子変異,ALK遺伝子転座では細胞障害性抗癌剤と比較した第Ⅲ相試験が実施され,キナーゼ阻害剤のほうは細胞障害性抗癌剤に対して有効であることが報告されている6)~12)。頻度の少ないEGFRのuncommon mutation,ROS1遺伝子転座,BRAF遺伝子変異陽性例では細胞障害性抗癌剤と比較した第Ⅲ相試験が実施されていないが,第Ⅱ相試験や第Ⅲ相試験のサブセットではそれぞれの阻害剤によって同程度の高い有効性が報告されている13)~16)。また多くの分子標的治療薬は一般的に細胞障害性抗癌剤よりも有害事象が軽度であることが多く,少数例の検討ながらPS不良例における前向き試験での有効性が報告されている点も重要である17)18)
 2015年以降,本邦で使用可能となった免疫チェックポイント阻害剤は細胞障害性抗癌剤,分子標的治療薬と異なる作用機序を有する新規薬剤で,腫瘍免疫における負の調節因子であるPD-1などの免疫チェックポイント分子を標的とした抗体薬である。PS 0-1でEGFR遺伝子変異,ALK遺伝子転座を有さない,PD-L1陽性腫瘍細胞(TPS)が50%以上の非小細胞肺癌を対象としたPD-1阻害剤(ペムブロリズマブ)とプラチナ製剤併用療法の第Ⅲ相試験(KEYNOTE-024試験)では,ペムブロリズマブ群においてORR,PFS,OSの有意な改善が示され,有害事象も忍容可能であった19)
 以上,全身状態良好なⅣ期非小細胞肺癌患者に対しては薬物療法(細胞障害性抗癌剤,分子標的治療薬,免疫チェックポイント阻害剤)が緩和治療に比して生存期間を延長し,QOLも改善することが示されている。治療方針の決定に際して,分子標的治療薬では腫瘍における遺伝子変異の有無を,ペムブロリズマブではPD-L1の発現状態を確認する必要があり,これらの薬剤を適切なタイミングで使用するためには組織,病期診断と並行して目の前の患者が1)遺伝子変異陽性例,2)PD-L1≧50%,3)それ以外,のいずれのサブグループに属するのかを診断することが重要である。以下に各サブグループにおける治療方針を述べる。

1) 遺伝子変異陽性例:☞CQ18~34

 遺伝子変異陽性例では前述したようにそれぞれのキナーゼ阻害剤によってORR,PFSの改善が報告されている。なおこれらの第Ⅲ相試験では,プラチナ製剤併用療法の後治療としてキナーゼ阻害剤へのクロスオーバーが高率に行われたために,OSの差は示されていない。EGFR遺伝子変異陽性例の大規模研究において,1次から3次治療のエルロチニブ単剤のPFSに有意差を認めないことが報告されており20),キナーゼ阻害剤と細胞障害性抗癌剤の投与順序に関して,現時点で明確な結論はない。しかしながら,米国で行われた前向き観察研究では,733人を対象に10遺伝子について解析し,466人(64%)にドライバー遺伝子変異を認めたが,ドライバー遺伝子変異があり,それを標的とした治療薬を使用した260人のMSTは3.5年であったのに対し,ドライバー遺伝子変異があったにもかかわらず,それを標的とした治療をしていない患者のMSTは2.4年であった(propensity score-adjusted hazard ratio:0.69,95%CI:0.53-0.9, P=0.006)21)。以上より,遺伝子変異陽性例に対してキナーゼ阻害剤の投与機会を逸しないことは重要であり,細胞障害性抗癌剤よりも優先して投与することを推奨する。増悪後の2次治療としては全身状態に応じて細胞障害性抗癌剤が勧められる(CQ37~39)。遺伝子変異陽性例に対する免疫チェックポイント阻害剤についてはCQ22を参照のこと。また,扁平上皮癌で遺伝子変異陽性であった場合についてはCQ34を参照のこと。

2) PD-L1強陽性(≧50%)例:☞CQ35,36

 ペムブロリズマブとプラチナ製剤併用療法を比較した第Ⅲ相試験(KEYNOTE-024試験)では,プラチナ製剤併用療法群の後治療としてペムブロリズマブへのクロスオーバーが行われたものの副次評価項目であるOSはHR 0.60(両群とも中央値に到達せず,95%CI:0.41-0.89,P=0.005)とペムブロリズマブ単剤群で有意に長かった19)。以上より,PD-L1強陽性(≧50%)例では初回治療としてペムブロリズマブ単剤療法を行い,増悪後の2次治療として全身状態に応じて細胞障害性抗癌剤を行うよう勧められる。

3)遺伝子変異陰性,PD-L1<50%,もしくは不明:☞CQ37~47

 このサブグループに対する1次治療として分子標的治療薬や免疫チェックポイント阻害剤が,細胞障害性抗癌剤よりも有効であることは示されていないため,従来どおりPS,年齢,組織型に応じた細胞障害性抗癌剤を行う。免疫チェックポイント阻害剤による治療は2次治療以降で対象となる。
引用文献

6-1.遺伝子変異陽性

樹形図

Ⅳ期非小細胞肺癌:遺伝子変異陽性の治療方針> CQ18 CQ21 CQ21 CQ18 CQ19 CQ20 CQ21 CQ22
Ⅳ期非小細胞肺癌:遺伝子変異陽性>EGFR <2次治療以降> CQ28 CQ19 CQ21 CQ28 CQ19
Ⅳ期非小細胞肺癌:遺伝子変異陽性>ALK<1次治療> CQ29 CQ30 CQ29 CQ30 CQ19
Ⅳ期非小細胞肺癌:遺伝子変異陽性>ALK <2次治療以降> CQ31 CQ21 CQ31 CQ19
Ⅳ期非小細胞肺癌:遺伝子変異陽性>ROS1 CQ32 CQ19 CQ21 CQ32 CQ19
Ⅳ期非小細胞肺癌:遺伝子変異陽性>BRAF CQ33 CQ19 CQ21 CQ33 CQ19

6-1-1.遺伝子変異陽性の治療方針

GRADE
CQ18.全身状態良好(PS 0-1)な遺伝子変異陽性例に対する最適な1次治療は何か?
推 奨
遺伝子変異(EGFR遺伝子変異,ALK遺伝子転座,ROS1遺伝子転座,BRAF遺伝子変異)を有するPS 0-1の患者に,それぞれの遺伝子を標的とするキナーゼ阻害剤を行うよう推奨する。(1A)
解 説
 EGFR遺伝子変異,ALK遺伝子転座,ROS1遺伝子転座,BRAF遺伝子変異は癌発生の直接的な原因となるような遺伝子変異であり,本ガイドラインではこれらの遺伝子をドライバー遺伝子と総称する。全身状態良好で,これらドライバー遺伝子の変異を有する患者に対して,それぞれの遺伝子を標的とするキナーゼ阻害剤によるORRの増加,PFSの延長などの有効性が報告されている。EGFR遺伝子変異,ALK遺伝子転座では細胞障害性抗癌剤との比較試験が実施され,キナーゼ阻害剤のほうが有効性が明らかに高いことが報告されている1)~7)。EGFRのuncommon mutation(CQ27参照),ROS1遺伝子転座(CQ32参照),BRAF遺伝子変異陽性(CQ33参照)では患者数が少ないために,細胞障害性抗癌剤との第Ⅲ相試験は実施されていないが,第Ⅱ相試験や第Ⅲ相試験のサブセットではそれぞれクリゾチニブやアファチニブによって高い有効性を示している6)8)~10)。米国で行われた前向き観察研究では,733人を対象に10遺伝子について解析し,466人(64%)にドライバー遺伝子変異を認めたが,ドライバー遺伝子変異があり,それを標的とした治療薬を使用した260人のMSTは3.5年であったの対し,ドライバー遺伝子変異があったにもかかわらず,それを標的とした治療をしていない患者のMSTは2.4年であった(propensity score-adjusted HR 0.69,95%CI:0.53-0.9,P=0.006)12)。遺伝子変異陽性例に対する免疫チェックポイント阻害剤のデータは乏しいが,現時点でキナーゼ阻害剤の効果を上回るものではない(CQ22参照)。
 なお,これらの試験では後治療としてクロスオーバーが認められていることから,OSの差は示されておらず生存期間において優先順位を付けることはできない。EGFR遺伝子変異陽性例の大規模研究において,1次から3次治療のエルロチニブ単剤のPFSに有意差を認めないことが報告されており13),EGFR-TKI単剤と細胞障害性抗癌剤の投与順序に関しては,現時点で明確な結論はない。毒性についてはキナーゼ阻害剤で軽い傾向にあるものの,薬剤により毒性のプロファイルおよび程度が異なる。しかしながら,EGFR-TKIをはじめとするキナーゼ阻害剤はPFS,ORRで細胞障害性抗癌剤より優れており,投与の機会を逸しないことが重要であることから,細胞障害性抗癌剤よりも優先することを推奨する。下記に,ガイドライン検討委員会薬物療法及び集学的治療小委員会(作成班)において推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。
行うことを
推奨
行うことを
弱く推奨(提案)
評価不能・推奨なし 行わないことを
弱く推奨(提案)
行わないことを
推奨
77% 23% 0% 0% 0%
 以上より,ドライバー遺伝子変異を有する患者に対する最適な1次治療は,それぞれの遺伝子を標的とするキナーゼ阻害剤と考えられる。エビデンスレベルはA,また総合的評価では行うよう強く推奨(1で推奨)できると判断し,推奨度は1Aとした。
GRADE
CQ19.PS 2-4の遺伝子変異陽性例に対する最適な1次治療は何か?
推 奨

a.遺伝子変異(EGFR遺伝子変異,ALK遺伝子転座,ROS1遺伝子転座,BRAF遺伝子変異)を有するPS 2の患者に,それぞれの遺伝子を標的とするキナーゼ阻害剤を行うよう推奨する。(1C)

b.遺伝子変異(EGFR遺伝子変異,ALK遺伝子転座,ROS1遺伝子転座,BRAF遺伝子変異)を有するPS 3-4の患者に,それぞれの遺伝子を標的とするキナーゼ阻害剤を行うよう提案する。(2C)

解 説
a.
EGFR遺伝子変異陽性やALK遺伝子転座陽性の患者を対象とした細胞障害性抗癌剤との比較試験にもPS 2の患者が5~10%程度含まれており,PS 0-1と同等の有効性が示されている3)4)7)。また,EGFR遺伝子変異陽性の患者に対するゲフィチニブや,ALK遺伝子転座陽性の患者に対するアレクチニブはPS不良例に対する有効性が報告されている14)15)
 PS 2のEGFRのuncommon mutation,ROS1遺伝子転座,BRAF遺伝子変異陽性に関するデータは患者数が少ないために限られているが,EGFRやALKの結果を鑑みて,キナーゼ阻害剤による治療を行うよう推奨される。エビデンスレベルはC,ただし総合的評価では行うよう強く推奨(1で推奨)できると判断し,推奨度は1Cとした。
b.
PS 3-4のEGFR遺伝子変異陽性の患者を対象としたゲフィチニブや,ALK遺伝子転座陽性の患者を対象としたアレクチニブはPS不良例に対する有効性が報告されており,患者数はそれぞれ22人,6人と少ないが,安全性について大きな問題は認められなかった14)15)。また,ゲフィチニブの検討では奏効率が66%であり,79%の患者でPSの改善を認めている。
 PS 3-4のROS1遺伝子転座,EGFRのuncommon mutation,BRAF遺伝子変異陽性に関するデータはPS 2よりもさらに限られているが,PS 2と同様に有効性が期待される。
 一方,キナーゼ阻害剤によって有害事象の頻度やプロファイルは様々であり,全身状態良好例においてさえも高い頻度で休薬・減量を必要とする薬剤が存在するため,PS 3-4で用いる場合はより一層の注意が必要である。
 以上より,エビデンスレベルはC,また総合的評価では行うよう弱く推奨(2で推奨)できると判断し,推奨度は2Cとした。下記に,ガイドライン検討委員会薬物療法及び集学的治療小委員会(作成班)において推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。
行うことを
推奨
行うことを
弱く推奨(提案)
評価不能・推奨なし 行わないことを
弱く推奨(提案)
行わないことを
推奨
9% 91% 0% 0% 0%
GRADE
CQ20.75歳以上の遺伝子変異陽性例に対する最適な1次治療は何か?
推 奨
遺伝子変異(EGFR遺伝子変異,ALK遺伝子転座,ROS1遺伝子転座,BRAF遺伝子変異)を有する75歳以上の患者に,それぞれの遺伝子を標的とするキナーゼ阻害剤を行うよう推奨する。(1C)
解 説
 75歳以上のEGFR遺伝子変異陽性進行非小細胞肺癌を対象とした国内でのゲフィチニブ単剤の第Ⅱ相試験において,ORR 74%,PFS中央値12.3カ月と若年者と同等の有効性と安全性が報告されている16)。エルロチニブ単剤については国内での第Ⅱ相試験において,75歳超と75歳以下で同等の有効性が示されている17)
 EGFRのuncommon mutation,ALK遺伝子転座,ROS1遺伝子転座,BRAF遺伝子変異に関して,75歳以上のサブグループのデータはないが,一般にキナーゼ阻害剤は有害事象が細胞障害性抗癌剤と比べて軽いため,高齢者に対しても比較的安全に使用することができる。EGFR-TKIの研究結果を鑑みて,ALK遺伝子転座,ROS1遺伝子転座,BRAF遺伝子変異に対しては75歳以上でもキナーゼ阻害剤を行うように推奨する。エビデンスレベルはC,ただし総合的評価では行うよう強く推奨(1で推奨)できると判断し,推奨度は1Cとした。ただし,薬剤による有害事象には若年者より一層の注意が必要である。
GRADE
CQ21.遺伝子変異陽性例に細胞障害性抗癌剤は勧められるか?
推 奨
遺伝子変異陽性例の患者においても,遺伝子変異のない患者で推奨される細胞障害性抗癌剤を行うよう推奨する。(1A)
解 説
 遺伝子変異のある患者におけるキードラッグはキナーゼ阻害剤であるが,これまでに行われた第Ⅲ相試験では,多くの症例がキナーゼ阻害剤の前後で細胞障害性抗癌剤の投与を受けている。後解析ではあるが,これらの第Ⅲ相試験にて細胞障害性抗癌剤を投与されている患者の予後が良い傾向にあり18)19),日本の大規模観察研究においても同様の傾向が認められている20)
 これらの結果,遺伝子変異のある患者においても,いずれかのタイミングで細胞障害性抗癌剤を行うよう推奨する。エビデンスレベルはA,また総合的評価では行うよう強く推奨(1で推奨)できると判断し,推奨度は1Aとした。
GRADE
CQ22.遺伝子変異陽性例に免疫チェックポイント阻害剤は勧められるか?
推 奨
遺伝子変異陽性例の患者に免疫チェックポイント阻害剤を勧めるだけの根拠が明確ではない。(推奨なし)
解 説
 1次治療におけるPD-L1≧50%の非小細胞肺癌に対するペムブロリズマブとプラチナ製剤併用療法の第Ⅲ相試験(KEYNOTE-024試験)において,EGFR遺伝子変異陽性,ALK遺伝子転座陽性の患者は除外されていた。2次治療において,免疫チェックポイント阻害剤(ニボルマブ,ペムブロリズマブ,アテゾリズマブ)とDTXの第Ⅲ相試験を統合解析した報告の中で,EGFR遺伝子変異陽性例における免疫チェックポイント阻害剤のDTXに対するOSはHR 1.05(95%CI:0.70-1.55,P<0.81)であった21)。単施設の報告ではEGFR遺伝子変異陽性,ALK遺伝子転座陽性例における免疫チェックポイント阻害剤のORRは3.8%と低かった22)。これらの報告は対象となった患者数が少なく,背景因子も明らかでないところが多いため,遺伝子変異のある患者に免疫チェックポイント阻害剤を勧めるか否かについては十分な根拠がない。
 これらの結果,本CQに対しては推奨度を決定するのに十分なデータがないことから推奨なし,とした。

6-1-2.EGFR遺伝子変異陽性

■EGFR遺伝子変異陽性の1次治療:エクソン19欠失またはL858R変異陽性

GRADE
CQ23.PS 0-1の場合,1次治療としてどのEGFR-TKIが勧められるか?
推 奨
EGFR-TKI(ゲフィチニブ,エルロチニブ,アファチニブのいずれか)を行うよう推奨する。(1A)
解 説
 EGFR遺伝子変異の約90%を占めるエクソン19の欠失変異とエクソン21のL858R変異は,EGFR-TKIの感受性を高める。進行非小細胞肺癌を対象にしたEGFR-TKI(ゲフィチニブ,エルロチニブ,アファチニブ)とプラチナ製剤併用療法の比較第Ⅲ相試験におけるEGFR遺伝子変異の患者はエクソン19の欠失変異とL858R変異に限定されているか1)3)4),大部分を占めていた2)5)6)。すべての試験において一貫してEGFR-TKIのプラチナ製剤併用療法に対するPFSの有意な延長が報告され,QOL指標の一部が改善することも示されている23)
 これらの結果,PS 0-1,75歳未満に対しては,EGFR-TKIを行うように推奨する。
 EGFR-TKI同士を直接比較した第Ⅲ相試験で優越性が示されたものはなく,特定の薬剤を推奨することはない。ランダム化第Ⅱ相試験では,アファチニブがゲフィチニブに対して,PFSの延長を示したものの,毒性はより高度であった24)25)。効果と毒性を考慮したうえで,いずれかのEGFR-TKIを選択することが推奨される。エビデンスレベルはA,また総合的評価では行うよう強く推奨(1で推奨)できると判断し,推奨度は1Aとした。
GRADE
CQ24.PS 2の場合,1次治療としてどのEGFR-TKIが勧められるか?
推 奨
EGFR-TKI(ゲフィチニブ,エルロチニブのいずれか)を行うよう推奨する。(1C)
解 説
 EGFR遺伝子変異陽性の進行非小細胞肺癌を対象としたエルロチニブとプラチナ製剤併用療法の2つの第Ⅲ相試験において,PS 2は各々7%,14%含まれておりPS 0-1と同等の有効性が示されている3)4)。また,ゲフィチニブはPS不良例に対する有効性が報告されている14)16)。アファチニブに関しては,PS 2に対する安全性と有効性の検討は十分ではない5)11)
 これらの結果,PS 2に対しては,ゲフィチニブまたはエルロチニブによる治療を推奨する。エビデンスレベルはC,ただし総合的評価では行うよう強く推奨(1で推奨)できると判断し,推奨度は1Cとした。
GRADE
CQ25.PS 3-4の場合,1次治療としてどのEGFR-TKIが勧められるか?
推 奨
ゲフィチニブを行うよう推奨する。(1C)
解 説
 EGFR遺伝子高感受性変異陽性でPS 3-4が大多数を占める予後不良群を対象としてゲフィチニブの投与が行われ,約80%の患者でPSが改善し,ORR 66%,OS 17.8カ月,PFS中央値6.5カ月と極めて良好な治療効果が得られた14)。一方,PS不良,男性,喫煙歴,既存の間質性肺炎,正常肺領域が少ない患者,心疾患を合併した患者などで間質性肺障害発症のリスクが高いことが報告されており26)27),慎重な検討も必要である。なお,ガイドライン検討委員会薬物療法及び集学的治療小委員会(作成班)では,特にPS 4に対する投与の是非について議論がなされた。このような集団においては益のアウトカムとしてPSや症状の改善は重要であり,EGFR-TKIによってこれらの改善が期待されるものであるのかを十分吟味する必要がある。
 以上より,エビデンスレベルはC,ただし総合的評価では行うよう強く推奨(1で推奨)できると判断し,推奨度は1Cとした。下記に,ガイドライン検討委員会薬物療法及び集学的治療小委員会(作成班)において推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。
行うことを
推奨
行うことを
弱く推奨(提案)
評価不能・推奨なし 行わないことを
弱く推奨(提案)
行わないことを
推奨
60% 40% 0% 0% 0%
GRADE
CQ26.エクソン19欠失またはL858R変異陽性に1次治療としてEGFR-TKIの併用療法は勧められるか?
推 奨
エルロチニブ+ベバシズマブを行うよう提案する。(2C)
解 説
 エルロチニブ+ベバシズマブは国内で行われたランダム化第Ⅱ相試験であるが,PFS中央値16.0カ月vs 9.7カ月(HR 0.54,95%CI:0.36-0.79)と差が認められた24)。毒性については,併用群でベバシズマブ関連の有害事象が認められている(Grade 3以上の高血圧が60%,Grade 1/2の出血性事象が69%など)。現時点で1つの第Ⅱ相試験の結果のみであり,OSなどの長期データが不十分であることから,エビデンスレベルはC,また総合的評価では行うよう弱く推奨(2で推奨)できると判断し,推奨度は2Cとした。
 なお,EGFR-TKIと細胞障害性抗癌剤の併用も複数報告されているが,これについては標準治療であるEGFR-TKI単剤の1次治療とその後の細胞障害性抗癌剤も含めた治療成績との比較が不明であり,現時点でその有効性は不明である。

■EGFR遺伝子変異陽性の1次治療:エクソン18-21変異(エクソン19欠失・L858R変異を除く)

GRADE
CQ27.PS 0-1の場合,1次治療としてどのEGFR-TKIが勧められるか?
推 奨

a.エクソン18-21の遺伝子変異(エクソン19欠失・L858R変異・エクソン20の挿入変異・T790M変異以外)にはEGFR-TKI(ゲフィチニブ,エルロチニブ,アファチニブ)による治療を行うよう提案する。(2C)

b.エクソン20の挿入変異にはEGFR-TKIを行わないよう推奨する。(1C)

c.EGFR-TKI未治療のT790M変異にオシメルチニブを行うよう勧めるだけの根拠が明確ではない。(推奨なし)

*EGFR遺伝子変異の種類,検査法などの詳細については「肺癌患者におけるEGFR遺伝変異検査の手引き」(日本肺癌学会)を参照

*Uncommon mutationがある場合は,エクソン19の欠失とL858R変異が同時にあったとしても,uncommon mutationに分類する。

解 説
a.
EGFR遺伝子変異の約90%をエクソン19の欠失変異,エクソン21のL858R変異が占める28)。その他の遺伝子変異はuncommon mutationと称され,エクソン18-21にわたり(E709X,G719X,S768I,P848L,L861Q,エクソン19の挿入変異など)が報告されている。これらの変異でもEGFR-TKIの感受性はあるが奏効率はやや劣ると報告されている29)。第Ⅲ相試験の多くは,これらの変異が除外されているが1)4)21),含まれたとしても全体の1割程度に過ぎない2)5)6)
 T790Mとエクソン20の挿入変異以外のuncommon mutationでは,EGFR-TKIにて48~71%の奏効率が得られている29)30)。なかでもアファチニブの奏効率は71.1%であり,ゲフィチニブやエルロチニブより高い傾向にあった30)。アファチニブのデータは前向き試験の結果ではあるものの少数のサブセットであり,他のEGFR-TKIと差を付けるだけの根拠に乏しいと考えられた。
 以上より,EGFR-TKIによる治療を提案する。エビデンスレベルはC,また総合的評価では行うよう弱く推奨(2で推奨)できると判断し,推奨度は2Cとした。
b.
エクソン20の挿入変異の報告は少なく奏効率も10%弱であることから,1次治療としてEGFR-TKIを行わないよう推奨する30)31)。エビデンスレベルはC,ただし総合的評価では行わないよう強く推奨(1で推奨)できると判断し,推奨度は1Cとした。
c.
EGFR-TKI(ゲフィチニブ,エルロチニブ,アファチニブ)による治療の前にT790M変異陽性の患者の報告は少なく,オシメルチニブを行うように勧めるだけの根拠が明確ではない。

■EGFR遺伝子変異陽性の2次治療以降

GRADE
CQ28.1次治療EGFR-TKI耐性または増悪後のT790M変異陽性例に対する最適な2次治療は何か?
推 奨
1次治療EGFR-TKI耐性または増悪後のT790M変異陽性例に対するオシメルチニブによる治療を行うよう推奨する。(1B)
解 説
 オシメルチニブは,活性型EGFR遺伝子変異と耐性変異であるEGFR T790M変異の両方を阻害する第3世代EGFR-TKIである。第1・2世代のEGFR-TKI(ゲフィチニブ,エルロチニブ,アファチニブ)による治療の後にT790M変異陽性となった患者を対象にオシメルチニブと細胞障害性抗癌剤(CDDPまたはCBDCA+PEM)の第Ⅲ相試験が報告された32)。主要評価項目であるPFS中央値はオシメルチニブ群が10.1カ月,細胞障害性抗癌剤群が4.4カ月(HR 0.30,95%CI:0.23-0.41,P<0.001)であった。Grade 3以上の有害事象もオシメルチニブ群が低かった(6% vs 34%)。
 これらの結果,オシメルチニブによる治療を行うよう勧められる。エビデンスレベルはB,また総合的評価では行うよう強く推奨(1で推奨)できると判断し,推奨度は1Bとした。

6-1-3.ALK遺伝子転座陽性

■ALK遺伝子転座陽性の1次治療

GRADE
CQ29.PS 0-1の場合,1次治療としてどのALK-TKIが勧められるか?
推 奨

a.アレクチニブによる治療を行うよう推奨する。(1A)

b.クリゾチニブによる治療を行うよう提案する。(2A)

c.セリチニブによる治療を行うよう提案する。(2B)

解 説
 1次治療としてALK遺伝子転座陽性の進行非小細胞肺癌に対してはアレクチニブ,クリゾチニブ,セリチニブが使用可能である。クリゾチニブ,セリチニブは従来の標準治療であるプラチナ製剤併用療法との第Ⅲ相試験を行っている。前者におけるPFS中央値はクリゾチニブ群10.9カ月vsプラチナ製剤併用療法群7.0カ月(HR 0.45,95%CI:0.35-0.60,P<0.0001),ORRも74% vs 45%とクリゾチニブのプラチナ製剤併用療法に対するORR,PFSの有意な改善が報告された7)。後者についても,PFS中央値はセリチニブ群16.6カ月vsプラチナ製剤併用療法群8.1カ月(HR 0.55,95%CI:0.42-0.73,P<0.0001),ORRも72.5% vs 26.7%とセリチニブのプラチナ製剤併用療法に対するORR,PFSの有意な改善が報告された33)。アレクチニブはクリゾチニブとの第Ⅲ相試験を行い,国内で実施された試験ではPFS中央値が未到達vs 10.2カ月(HR 0.34,95%CI:0.17-0.71,P<0.0001),海外で行われた試験ではアレクチニブの投与量が600 mgであったが,HR 0.47,95%CI:0.34-0.65,P<0.001であった34)35)。以上,現時点ではアレクチニブについて,ORRの改善や主要評価項目であるPFSの延長が国内外の第Ⅲ相試験で示されており,アレクチニブによる治療を行うよう推奨される。エビデンスレベルはA,また総合的評価では行うよう強く推奨(1で推奨)できると判断し,推奨度は1Aとした。一方で,これらの試験ではOSのデータが不十分であり,現時点では両群間にOSの差があるかは不明である。また,クリゾチニブ耐性後にアレクチニブを投与する第Ⅰ/Ⅱ相試験ならびに第Ⅱ相試験が海外で行われ,ORR 48-50%,PFS中央値8.1-8.9カ月の良好な成績が報告されている36)~38)。現時点ではクリゾチニブによる1次治療も選択肢となり得る。エビデンスレベルはA,また総合的評価では行うよう弱く推奨(2で推奨)できると判断し,推奨度は2Aとした。セリチニブについても同様に選択肢とはなり得るものの,他のALK-TKIとの比較試験がない。エビデンスレベルはB,また総合的評価では行うよう弱く推奨(2で推奨)できると判断し,推奨度は2Bとした。
 なお,高齢者について,クリゾチニブとプラチナ製剤併用療法の第Ⅲ相試験には65歳以上の患者が16%含まれており,65歳未満と比べて有効性が劣ることはなかった7)
 アレクチニブとクリゾチニブの第Ⅲ相試験では75歳以上の患者が11%おり,75歳未満と比べてもクリゾチニブに対するアレクチニブの有効性は変わらなかった。
GRADE
CQ30.PS 2-4の場合,1次治療としてどのALK-TKIが勧められるか?
推 奨
アレクチニブによる治療を行うよう推奨する。(1C)
解 説
 ALK遺伝子転座陽性の患者に対するアレクチニブは,PS不良例に対する有効性が報告されている13)。患者数はPS 2:12人,PS 3:5人,PS 4:1人であるが,安全性に大きな問題はなかった。ORRは72%であった。アレクチニブとクリゾチニブの第Ⅲ相試験では,PS 2の患者が2%しか含まれていなかったが,クリゾチニブよりも有害事象が少なかった34)。エビデンスレベルはC,ただし総合的評価では行うよう強く推奨(1で推奨)できると判断し,推奨度は1Cとした。

■ALK遺伝子転座陽性の2次治療以降

GRADE
CQ31.1次治療ALK-TKI耐性または増悪後のPS 0-2に対する最適な治療は何か?
推 奨

a.初回ALK-TKIがクリゾチニブの場合は,アレクチニブによる治療を行うよう推奨する。(1C)

b.初回ALK-TKIがクリゾチニブの場合は,セリチニブによる治療を行うよう提案する。(2C)

c.初回ALK-TKIがアレクチニブまたはセリチニブの場合は,「遺伝子変異陰性,PD-L1<50%,もしくは不明に対する最適な1次治療」に準じて治療する。(☞CQ21,22

解 説
a.
クリゾチニブ耐性後のALK遺伝子転座陽性進行非小細胞肺癌を対象とし,アレクチニブを投与する第Ⅰ/Ⅱ相試験ならびに第Ⅱ相試験が海外で行われ,ORR 48~50%,PFS中央値8.1~8.9カ月の良好な成績が報告されている36)~38)。日本で行われたクリゾチニブ既治療の23例に対しアレクチニブを投与した試験では,ORR 65%,PFS中央値は12.9カ月であった39)。プラチナ製剤併用療法と比較したデータはないが,少なくとも同程度の有効性は期待できる。エビデンスレベルはC,ただし総合的評価では行うよう強く推奨(1で推奨)できると判断し,推奨度は1Cとした。
b.
ALK遺伝子転座陽性の患者を対象としセリチニブを投与する第Ⅰ相試験が行われ,expansion phaseでのサブグループ解析において,クリゾチニブ既治療の80例でORR 56%,PFS中央値6.9カ月であった40)。また,クリゾチニブならびにプラチナ製剤併用療法後に増悪したALK遺伝子転座陽性例を対象とした単アームの第Ⅱ相試験において,ORR 38.6%,PFS中央値5.7カ月の成績が報告されている41)。本邦で行われた第Ⅰ相試験においては,クリゾチニブ既治療の9例中5例でPRの効果が得られた42)。アレクチニブ同様,プラチナ製剤併用療法と比較したデータはないものの,少なくとも同程度の有効性は期待できる。エビデンスレベルはC,また総合的評価では行うよう弱く推奨(2で推奨)できると判断し,推奨度は2Cとした。下記に,ガイドライン検討委員会薬物療法及び集学的治療小委員会(作成班)において推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。
行うことを
推奨
行うことを
弱く推奨(提案)
評価不能・推奨なし 行わないことを
弱く推奨(提案)
行わないことを
推奨
20% 80% 0% 0% 0%
c.
初回ALK-TKIがアレクチニブまたはセリチニブの場合には,ALKの耐性変異遺伝子の測定が保険承認されていない現状では,他のALK-TKIを行うように勧めるだけの根拠が明確ではない。その場合,「遺伝子変異陰性,PD-L1<50%,もしくは不明に対する最適な1次治療」に準じて治療する(CQ21)。遺伝子変異陽性例に対する免疫チェックポイント阻害剤についてはCQ22参照。

6-1-4.ROS1遺伝子転座陽性

GRADE
CQ32.ROS1遺伝子転座陽性に1次治療としてクリゾチニブは勧められるか?
推 奨
クリゾチニブを行うよう推奨する。(1C)
解 説
 ROS1遺伝子転座ではクリゾチニブの効果が複数報告されている。米国を中心とした試験では50人が参加し,ORRは72%,PFS中央値19.2カ月であった8)。東アジアで実施された試験では,127人が登録され,奏効割合69.3%,PFS中央値13.4カ月であった9)。これらはクリゾチニブのALK阻害剤に対する効果と同等以上である。エビデンスレベルはC,ただし総合的評価ではドライバー遺伝子に対する分子標的薬の他剤の効果と併せて行うよう強く推奨(1で推奨)できると判断し,推奨度は1Cとした(CQ18も参照のこと)。

6-1-5.BRAF遺伝子変異陽性

GRADE
CQ33.BRAF遺伝子変異陽性に1次治療としてダブラフェニブ+トラメチニブは勧められるか?
推 奨
ダブラフェニブ+トラメチニブを行うよう提案する。(2C)
解 説
 BRAF遺伝子変異ではダブラフェニブ単剤や,ダブラフェニブ+トラメチニブ併用療法の効果が複数報告されている。Ⅳ期非小細胞肺癌のBRAF V600E遺伝子変異陽性の既治療例57人を対象とした,ダブラフェニブとトラメチニブの併用療法の第Ⅱ相試験が行われ,主要評価項目のORRは,既治療例で66.7%であった。PFS中央値は9.7カ月(6.9-19.6カ月)であった10)。ただし本試験に登録された日本人の症例数が限られており,エビデンスレベルはC,また総合的評価では行うよう弱く推奨(2で推奨)できると判断し,推奨度は2Cとした。

*2017年11月30日時点で,BRAF V600E遺伝子変異陽性例に対するダブラフェニブ+トラメチニブの併用療法は,本邦で保険償還されていない。承認後の使用に際しては,添付文書の記載をよく確認すること。

6-1-6.遺伝子変異陽性:扁平上皮癌

GRADE
CQ34.扁平上皮癌で遺伝子変異陽性であった場合に,チロシンキナーゼ阻害剤は推奨できるか?
推 奨

a.EGFR遺伝子高感受性変異(エクソン19の欠失またはL858Rの変異)陽性の扁平上皮癌患者に対してEGFR-TKIを使用することを提案する。(2D)

b.ALK遺伝子転座陽性,ROS1遺伝子転座陽性,BRAF遺伝子変異陽性の扁平上皮癌に対して,それぞれのキナーゼ阻害剤を使用することを提案する。(2D)

解 説
a.
EGFR遺伝子変異陽性の扁平上皮癌患者を対象としたEGFR-TKIを用いた比較試験は存在せず,非小細胞癌患者を対象とした前向き試験のサブグループ,それらを集めたpooled analysisのみ存在する。前向き試験から治療成績を確認できた11例の奏効率は9.1%であり,その効果は限定的であったが,エクソン18-21の遺伝子変異(エクソン19欠損・L858R変異)以外の変異症例が3例以上は含まれているため,有効性の解釈に注意が必要である43)~45)。後ろ向き研究からは奏効率25~32%,PFSは1.4~3.9カ月と報告されているが症例数は少ない43)46)47)
 以上より,EGFR遺伝子高感受性変異(エクソン19の欠失またはL858Rの変異)陽性の扁平上皮癌患者に対するEGFR-TKIの効果は限定的であるが,奏効例も存在するため行うことを提案する。エビデンスレベルはD,ただし総合的評価では行うよう弱く推奨(2で推奨)できると判断し,推奨度は2Dとした。
b.
扁平上皮癌患者のEGFR uncommon mutation,ALK遺伝子転座陽性,ROS1遺伝子転座陽性,BRAF遺伝子変異陽性患者を対象とした臨床試験は存在せず,エビデンスに乏しいが同じ対象におけるEGFR-TKIでの報告を鑑みて,それぞれのキナーゼ阻害剤を使用することを提案する。エビデンスレベルはD,ただし総合的評価では行うよう弱く推奨(2で推奨)できると判断し,推奨度は2Dとした。
引用文献

6-2.PD-L1≧50%

樹形図

Ⅳ期非小細胞肺癌: PD-L1≧50%の治療方針 CQ35 CQ36 CQ43 CQ35 CQ36
GRADE
CQ35.全身状態良好(PS 0-1)なPD-L1≧50%に対する最適な1次治療は何か?
推 奨
ペムブロリズマブ単剤療法を行うよう推奨する。(1B)
解 説
 EGFR遺伝子変異やALK遺伝子転座のない,PD-L1陽性腫瘍細胞(TPS)が50%以上のPS 0-1のⅣ期非小細胞肺癌患者を対象として,ペムブロリズマブ単剤200 mg/body 3週毎またはプラチナ製剤併用療法を比較する第Ⅲ相試験(KEYNOTE-024試験)が行われた1)。305人がランダム化され,細胞障害性抗癌剤群の患者66人(43.7%)が病勢進行後ペムブロリズマブ単剤へクロスオーバーされた。主要評価項目はPFS,副次評価項目はOS,ORRであった。中間解析において,主要評価項目であるPFSはHR 0.50(10.3 カ月vs 6.0カ月,95%CI:0.37-0.68,P<0.001),副次評価項目であるOSはHR 0.60(両群とも中央値に到達せず,95%CI:0.41-0.89,P=0.005)であり,ペムブロリズマブ単剤は細胞障害性抗癌剤に対しPFS,OSを有意に延長することが示された。また,ORRは44.8% vs 27.8%であり,ペムブロリズマブ単剤が有意に優れていた。なお,EGFR遺伝子変異陰性例におけるゲフィチニブ・エルロチニブの知見から,遺伝子変異陰性例に対するキナーゼ阻害剤は有効性が乏しい。また,本ガイドラインにおいて高齢者と定義付けられている75歳以上の症例においては,上述する試験のサブセット解析や前向きなデータともに報告はなく有効性,安全性に関しては明らかになっていない。
 以上より,PD-L1陽性細胞≧50%のⅣ期非小細胞肺癌(EGFR遺伝子変異陰性およびALK遺伝子転座陰性),PS 0-1症例に対する最適な1次治療としてペムブロリズマブ単剤療法を行うよう勧められる。エビデンスレベルはB,また総合的評価では行うよう強く推奨(1で推奨)できると判断し,推奨度は1Bとした。
GRADE
CQ36.PS 2のPD-L1陽性細胞≧50%に対する最適な1次治療は何か?
推 奨
ペムブロリズマブ単剤療法を行うよう提案する。(2D)
解 説
 KEYNOTE-024試験では,適格基準としてPS 0-1を満たす患者のみが登録されており1),PS 2のⅣ期非小細胞肺癌の1次治療でペムブロリズマブ単剤療法を投与した際の臨床成績,安全性は不明である。そのため,ペムブロリズマブ単剤療法を1次治療において推奨するだけの根拠が明確でない。一方でPS 2に対する細胞障害性抗癌剤のエビデンスも十分とはいえず,有効性は限定的で有害事象も懸念される。ガイドライン検討委員会薬物療法及び集学的治療小委員会(作成班)では,PD-1阻害剤は細胞障害性抗癌剤と比較して重篤な有害事象の頻度が低いことから,益と害のバランスを考慮し治療選択肢として考えてもよいという意見が多くみられた。
 以上より,PS 2のPD-L1≧50%のⅣ期非小細胞肺癌に対し投与の是非を慎重に検討したうえで1次治療においてペムブロリズマブ単剤療法の投与を行うことをエキスパートオピニオンとして提案する。エビデンスレベルはD,ただし総合的評価では行うよう弱く推奨(2で推奨)できると判断し,推奨度は2Dとした。下記に,ガイドライン検討委員会薬物療法及び集学的治療小委員会(作成班)において推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。
行うことを
推奨
行うことを
弱く推奨(提案)
評価不能・推奨なし 行わないことを
弱く推奨(提案)
行わないことを
推奨
0% 61% 30% 9% 0%

6-3.遺伝子変異陰性,PD-L1<50%,もしくは不明

樹形図

Ⅳ期非小細胞肺癌: 遺伝子変異陰性,PD-L1<50%,もしくは不明 <2次治療以降> CQ44 CQ43 CQ44 CQ45 CQ46 CQ47

■遺伝子変異陰性,PD-L1<50%,もしくは不明の1次治療

GRADE
CQ37.遺伝子変異陰性,PD-L1<50%,もしくは不明のPS 0-1,75歳未満に対する最適なレジメンは何か?
推 奨
プラチナ製剤と第3世代以降の細胞障害性抗癌剤併用を行うよう推奨する。(1A)

*PEMは非扁平上皮癌への投与が推奨される。

*ネダプラチンは扁平上皮癌への投与が推奨される。

解 説
 メタアナリシスによってプラチナ製剤(CDDPもしくはCBDCA)を含む治療が緩和治療に対して有意に生存に寄与していることが示されている1)。また,プラチナ製剤併用の薬剤を第2世代と第3世代細胞障害性抗癌剤で比較したメタアナリシスにおいて,後者がORRで12%,1年生存率で6%優ると報告されている2)。本邦では,4種類の第3世代細胞障害性抗癌剤とプラチナ製剤併用の第Ⅲ相試験(FACS試験)の結果が報告されており,いずれの効果も同等であった3)
 新規薬剤においても,複数の第Ⅲ相試験によって有効性が示されているが,いくつかの薬剤は特定の組織型に対してのみ有効性が示されている。PEMはそのような薬剤の1つであり,非扁平上皮癌に対して用いられる。CDDP+PEMとCDDP+GEMの第Ⅲ相試験(JMDB試験)が行われ,全体では同等の効果であったが組織型による差が認められ,非扁平上皮癌においてはCDDP+PEM群でOSの有意な延長(11.8カ月vs 10.4カ月,HR 0.81,95%CI:0.70-0.94,P=0.005)を認めた一方で,扁平上皮癌においてはCDDP+PEM群でPFS(4.4カ月vs 5.5カ月,HR 1.36,95%CI:1.12-1.65,P=0.002), OS(9.4カ月vs 10.8カ月,HR 1.23,95%CI:1.00-1.51,P=0.05)ともに劣っていた4)。サブセット解析ではあるが,有効性ならびに毒性の観点から非扁平上皮癌においてはCDDP+PEMは至適レジメンの1つである。また,CBDCA+PEMは生存期間を主要評価項目とした比較試験がないものの,患者が自覚する毒性がCDDPよりも軽度であることから実地臨床では頻用されている。CBDCA+PEMとCBDCA+GEM,CBDCA+DTXやCBDCA+PTX+ベバシズマブとの比較試験では,生存期間や主要評価項目であった有害事象などで優越性を示せていない5)~7)。しかしながら,CBDCA+PTX+ベバシズマブと比較しても生存曲線に大きな差はなく7),ベバシズマブを併用した試験ではCBDCA+PTX+ベバシズマブよりPFSが上回る傾向にある8)。以上より,CBDCA+PEMを行うことは許容される。
 扁平上皮癌に対しては,ネダプラチン+DTXとCDDP+DTXの比較第Ⅲ相試験が本邦で実施され,OSの有意な延長が認められた(13.6カ月vs 11.4カ月,HR 0.81,95%CI:0.65-1.02,P=0.037)。毒性はプロファイルが異なり,ネダプラチン群では白血球減少・好中球減少・血小板減少が多く,CDDP群では悪心・倦怠感・低ナトリウム血症・低カリウム血症が多かった。本邦において第3世代以降の細胞障害性抗癌剤併用で唯一の優越性が示された有望なレジメンである9)
 その他,S-1の有効性を評価した2編の第Ⅲ相試験(LETS試験,CATS試験)では,CBDCA+S-1はCBDCA+PTXに対して,CDDP+S-1はCDDP+DTXに対する非劣性が示された10)11)。ヒト血清アルブミンとPTXを結合させたナノ粒子製剤であるnab-PTXとCBDCAの併用療法はCBDCA+PTXとの第Ⅲ相試験において,有意にORRの上昇を認めた(33.0% vs 25.0%,response rate ratio 1.31,95%CI:1.08-1.59,P=0.005)12)。これらのレジメンは組織型にかかわらず使用可能である。
 以上より,75歳未満,PS 0-1症例に対して,プラチナ製剤と第3世代以降の細胞障害性抗癌剤併用を行うよう勧められる。エビデンスレベルはA,また総合的評価では行うよう強く推奨(1で推奨)できると判断し,推奨度は1Aとした。各レジメンに固有の毒性プロファイルが報告されており,これらも踏まえて選択するべきと考えられる。
GRADE
CQ38.遺伝子変異陰性,PD-L1<50%,もしくは不明のPS 0-1,75歳以上に対する最適なレジメンは何か?
推 奨

a.第3世代細胞障害性抗癌剤単剤を行うよう推奨する。(1A)

b.カルボプラチン併用療法を行うよう提案する。(2B)

*PEMは非扁平上皮癌への投与が推奨される。

解 説
 1次治療の第Ⅲ相試験と術後補助化学療法を対象とした検討では,65歳以上と以下で治療効果の差は認めず,暦年齢よりも日常生活自立度が予後に関係していた13)。また,80歳以上でもPS 0-1と良好なものは80歳以下と比べて,OSにおいて80歳以上で7カ月,80歳未満で11カ月(P=0.20)と生存期間に有意な差がなく,毒性についても明らかな差を認めなかったと報告されている14)。以上より,暦年齢のみで薬物療法の対象外とするべきではない。
a.
高齢者においては,緩和治療に対してVNRが有意にOSを延長し薬物療法が有効であること,VNRと比較してGEMが同様の有効性を示していることが確認されている15)16)。その後,本邦で行われた第Ⅲ相試験(WJTOG9904試験)において,DTXはVNRに対して,PFSで5.5カ月vs 3.1カ月(HR 0.61,95%CI:0.45-0.82,P<0.001),OSで有意差は認めなかったものの14.3カ月vs 9.9カ月(HR 0.78,95%CI:0.56-1.09,P=0.138)と良好な成績を示した17)
 以上より,高齢者に対する標準治療はDTXをはじめとした第3世代細胞障害性抗癌剤単剤と考えられ行うよう勧められる。エビデンスレベルはA,また総合的評価では行うよう強く推奨(1で推奨)できると判断し,推奨度は1Aとした。
b.
高齢者を対象とした第3世代細胞障害性抗癌剤単剤とプラチナ製剤併用を比較した第Ⅲ相試験が2編報告され,両試験とも登録された患者の多くが75歳以上であった。本邦ではJCOG0803/WJOG4307L試験が行われ,weekly CDDP+DTX vs DTXが比較された。この試験では,中間解析において併用療法が単剤療法の成績を上回らないことが示され(OS 13.3カ月vs 14.8カ月,HR 1.18,95%CI:0.83-1.69),試験中止となった18)。IFCT0501試験では,CBDCA+weekly PTXとGEMもしくはVNRのランダム化比較が行われ,併用療法でPFSの有意な延長(6.0カ月vs 2.8カ月,HR 0.51,95%CI:0.42-0.62,P<0.0001),OSの有意な延長(10.3カ月vs 6.2カ月,HR 0.64,95%CI:0.52-0.78,P<0.0001)が示された19)。しかしながらこの成績は,上記aに述べた本邦での単剤療法の成績を大きく上回っているとはいえず,併用群における治療関連死が4.4%と高いなどの問題点として指摘されている。また,投与量も本邦における標準的なものとは異なっており,データの解釈には注意を要する。
 以上より,PS 0-1の75歳以上症例に対して,CBDCA併用療法は選択肢の1つと考えられる。エビデンスレベルはB,また総合的評価では行うよう弱く推奨(2で推奨)できると判断し,推奨度は2Bとした。
GRADE
CQ39.遺伝子変異陰性,PD-L1<50%,もしくは不明のPS 2に対する最適なレジメンは何か?
推 奨

a.第3世代細胞障害性抗癌剤単剤を行うよう推奨する。(1A)

b.プラチナ製剤併用療法を行うよう提案する。(2B)

*PEMは非扁平上皮癌への投与が推奨される。

解 説
 PS 2は多様な集団であり,標準治療は定まっていない。しかし,薬物療法と緩和治療を比較したメタアナリシスのサブセットにおいて,PSにかかわらず薬物療法によるOSの延長が認められている〔PS 2以上の場合,薬物療法によって1年生存率にして6%(8%から14%)の改善〕1)
a.
メタアナリシスにおいて第3世代細胞障害性抗癌剤(DTX,PTX,VNR,GEM)単剤療法は緩和治療に比して1年生存率約7%の改善が示されているが,この中にPS 2以上は約30%含まれていた2)。また,この解析でも取り上げられた3編の試験においてPS 2のサブセットの治療成績が明らかになっており,いずれもOSが延長する傾向が確認されている20)
 以上より,PS 2症例において,第3世代細胞障害性抗癌剤単剤を行うよう勧められる。エビデンスレベルはA,また総合的評価では行うよう強く推奨(1で推奨)できると判断し,推奨度は1Aとした。
b.
PTX単剤とCBDCA+PTXとを比較した第Ⅲ相試験(CLGB9730試験)においてPS 2のサブセットが報告されており,CBDCA+PTXはPTX単剤に対して1年生存率で優位に上回っていた(18% vs 10%,HR 0.60,95%CI:0.40-0.91,P=0.016)21)。PS 2に対するCBDCA+PTXとCDDP+GEMとを比較した試験(ECOG1599試験)では,OSは各6.2カ月,6.9カ月と報告され,毒性に関しても忍容可能と考えられた22)。また,CBDCA+GEMとGEM単剤の比較試験が行われ,有意差が認められなかったものの,併用群でOSが6.7カ月vs 4.8カ月(P=0.49),PFSが4.1カ月vs 3.0カ月(P=0.36)の延長傾向が示された23)。さらに,PS 2症例を対象としたCBDCA+PEMとPEM単剤の第Ⅲ相試験が報告されている。この試験では第Ⅲ相試験としては登録数が205例と小規模で,扁平上皮癌を含む患者を対象としているなど問題があるが,併用群でPFSの有意な延長(5.8カ月vs 2.8カ月,HR 0.46,95%CI:0.35-0.63,P<0.001),OSの有意な延長(9.3カ月vs 5.3カ月,HR 0.62,95%CI:0.46-0.83,P=0.001)が示されている。毒性に関しては,併用群で貧血や好中球減少が高く,3.9%の治療関連死が認められた24)
 以上より,毒性が忍容可能と思われるPS 2症例に対してはプラチナ製剤併用療法を考慮してもよいと考えられる。エビデンスレベルはB,また総合的評価では行うよう弱く推奨(2で推奨)できると判断し,推奨度は2Bとした。ただし,PS 2症例に関するエビデンスは限られており,そのほとんどはCBDCA併用レジメン,もしくは通常より減量した用量が用いられていることに注意が必要である。
GRADE
CQ40.プラチナ製剤併用療法を受ける場合の推奨される投与期間は?
推 奨
プラチナ製剤併用療法のプラチナ製剤投与期間を6サイクル以下とするよう推奨する。(1C)
解 説
 第3世代細胞障害性抗癌剤とプラチナ製剤との併用について,3サイクルもしくは4サイクルを6サイクルと比較した試験によると,いずれにおいても1年生存率やOSは同等で毒性は前者が軽いと報告された25)26)。上述する2編の試験を含む,6サイクルとそれ以下のサイクルを比較した試験の個票データを利用したメタアナリシスでは,6サイクル群で有意なPFSの延長を認めたがOSは同等であった27)
 一方,近年行われた第Ⅲ相試験では,1次治療におけるプラチナ製剤の投与サイクル数を4もしくは6サイクルと規定しているものがほとんどであり,CDDP+PEMとCDDP+GEMを比較した第Ⅲ相試験(JMDB試験)では,プラチナ製剤併用療法の投与中央値はどちらも5サイクルであった4)
 以上より,プラチナ製剤併用療法の投与期間は4~6サイクルとするよう勧められる。エビデンスレベルはC,ただし総合的評価では行うよう強く推奨(1で推奨)できると判断し,推奨度は1Cとした。効果および毒性の観点から,6サイクルを超えるプラチナ製剤の投与は推奨されない。
GRADE
CQ41.プラチナ製剤併用療法を受ける場合にベバシズマブの上乗せは勧められるか?
推 奨

a.ベバシズマブの適応となる75歳未満,PS 0-1症例に対して,プラチナ製剤併用療法にベバシズマブを併用するよう提案する。(2A)

b.75歳以上,もしくはPS 2症例に対して,ベバシズマブの併用を行わないよう提案する。(75歳以上:2C,PS 2:2D)

*ベバシズマブは扁平上皮癌への投与は行わない。

解 説
a.
メタアナリシスでは,プラチナ製剤併用療法にベバシズマブを追加することでORRの上昇,PFSの延長が示されており,OSについても延長が認められたとする報告がある28)29)。一方で,ベバシズマブの併用でGrade 3以上の毒性(蛋白尿,高血圧,出血性イベント,好中球減少,発熱性好中球減少,治療関連死)の有意な増加が報告されている28)~30)
 出血リスクに関しては,扁平上皮癌や空洞を有する症例,大血管への浸潤や隣接を認めるもの,その他,喀血,コントロール不能な高血圧,重篤な大血管病変や消化管における活動性出血の既往があるものなどが高リスク群と考えられており,ベバシズマブの投与に際してはその適応を十分に検討する必要がある30)
 CBDCA+PTXにベバシズマブを追加することの有効性を評価した第Ⅲ相試験(ECOG4599試験)では,ベバシズマブ併用群でORRの上昇,PFSの有意な延長(6.2カ月vs 4.5カ月,HR 0.66,95%CI:0.57-0.77,P<0.001)ならびにOSの有意な延長(12.3カ月vs 10.3カ月,HR 0.79,95%CI:0.67-0.92,P=0.003)を認めた31)。一方,CDDP+GEMにベバシズマブを追加した第Ⅲ相試験(AVAiL試験)においては,PFSは有意に延長したがOSでは有意な延長を認めなかった32)。本邦ではCBDCA+PTXにベバシズマブを追加するランダム化第Ⅱ相試験(JO19907試験)が行われ,併用群においてORRの上昇(60.7% vs 31.0%,P=0.0013),PFSの延長(6.9カ月vs 5.9カ月,HR 0.61,95%CI:0.42-0.89,P=0.0090)を認め,新たな毒性を認めなかったが,OSについては有意な延長を認めなかった(22.8カ月vs 23.4カ月,HR 0.99,95%CI:0.65-1.50,P=0.9526)33)。中国において同じレジメンを比較した第Ⅲ相試験(BEYOND試験)では,ベバシズマブを1次治療以後も継続することが可能なデザインであったが,PFSの有意な延長(9.2カ月vs 6.5カ月,HR 0.40,95%CI:0.29-0.54,P<0.001)と,OSの有意な延長(24.3カ月vs 17.7カ月,HR 0.68,95%CI:0.50-0.93,P=0.0154)が認められた34)
 以上より,ベバシズマブの適応となる75歳未満,PS 0-1症例に対してプラチナ製剤併用療法を用いる際にはベバシズマブを追加することが勧められる。エビデンスレベルはA,ただし総合的評価では行うよう弱く推奨(2で推奨)できると判断し,推奨度は2Aとした。下記に,ガイドライン検討委員会薬物療法及び集学的治療小委員会(作成班)において推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。
行うことを
推奨
行うことを
弱く推奨(提案)
評価不能・推奨なし

(記載方法の変更含む)

行わないことを
弱く推奨(提案)
行わないことを
推奨
10% 69% 21% 0% 0%
 ベバシズマブの投与についてはその薬剤の特性からプラチナ製剤併用療法の終了後,病勢進行もしくは毒性中止まで投与を継続する方法が一般的である31)~34)

b-1.75歳以上

 高齢者におけるプラチナ製剤併用療法+ベバシズマブについて,ECOG4599試験におけるサブセット解析で70歳以上の高齢者では効果の上乗せは認められず,若年に比してGrade 3以上の好中球減少,出血,蛋白尿が多かったとされている35)。その後に報告されたECOG4599試験とPoint Break試験を統合したサブセット解析では,OSおよびPFSにおいて75歳以上で特にベバシズマブの上乗せ効果に乏しい傾向がみられた36)。米国におけるベバシズマブ併用療法の後方視的研究(ARIES)では,65歳未満と65歳以上,および75歳未満と75歳以上のサブグループ解析でどちらも有効性は同等であったが,毒性の面において高齢者群でGrade 3以上の動脈血栓塞栓症が増える傾向にあり,75歳以上ではさらに高かった(65歳未満1.5%,65歳以上2.9%,75歳以上3.5%)37)。また,欧州を中心に施行されたベバシズマブ併用療法のコホート研究(SAiL)では,70歳未満と70歳以上で有効性は同等であったが,高齢者群でGrade 3以上の出血の有害事象が増える傾向がみられた(70歳未満3.5%,70歳以上5.3%)38)。ただし,後者に示す2試験はいずれも非ランダム化試験でありエビデンスは低い。
 本邦においては75歳以上の高齢者におけるベバシズマブ併用療法の十分なデータはなく,有効性や安全性は確認されていない。以上より,高齢者に対するベバシズマブ併用を行うよう勧めるだけの根拠が明確ではなく,現時点では行わないよう勧められる。エビデンスレベルはC,また総合的評価では行わないよう弱く推奨(2で推奨)できると判断し,推奨度は2Cとした。

b-2.PS 2

 ベバシズマブ併用の臨床試験ならびに観察研究においてその大半がPS 0-1であり,PS 2に対するベバシズマブの安全性や有効性に関してのデータは少ない37)38)。よって,PS 2に対するベバシズマブは行うよう勧めるだけの根拠が明確でない。ベバシズマブを併用することにより毒性の頻度は有意に増加することから,益と害のバランスを考慮し現時点では行わないよう勧められる。エビデンスレベルはD,ただし総合的評価では行わないよう弱く推奨(2で推奨)できると判断し,推奨度は2Dとした。下記に,ガイドライン検討委員会薬物療法及び集学的治療小委員会(作成班)において推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。
行うことを
推奨
行うことを
弱く推奨(提案)
評価不能・推奨なし 行わないことを
弱く推奨(提案)
行わないことを
推奨
0% 0% 12% 88% 0%

*CBDCA+PTX+ベバシズマブの第Ⅱ相試験においてGrade 3以上の肺出血が9.1%に認められ,扁平上皮癌では4/13例(31%)で重篤な肺出血をきたした39)。その後,出血リスクに関する検討が行われ,扁平上皮癌や空洞を有する症例,大血管への浸潤や隣接を認めるもの,その他,喀血・コントロール不能な高血圧,重篤な大血管病変や消化管における活動性出血の既往があるものなどが高リスク群と考えられた30)。以上より,ベバシズマブは扁平上皮癌に対して用いない。

GRADE
CQ42.プラチナ製剤併用療法を受ける場合に維持療法は勧められるか?
推 奨
〈非扁平上皮癌〉

a.シスプラチン+ペメトレキセド併用療法4サイクル後,病勢進行を認めず毒性も忍容可能な症例に対してペメトレキセドによるcontinuation maintenanceを行うよう推奨する。(1B)

b.プラチナ製剤併用療法4サイクル後,病勢進行を認めず毒性も忍容可能な症例に対してペメトレキセドによるswitch maintenanceを行うよう提案する。(2B)

〈扁平上皮癌〉

c.プラチナ製剤併用療法4サイクル後,病勢進行を認めず毒性も忍容可能な症例に対してswitch maintenance,continuation maintenanceを行わないよう推奨する。(1C)

解 説
a.
CDDP+PEM併用療法後のPEMを用いたcontinuation maintenanceの第Ⅲ相試験(PARAMOUNT試験)で,PFSの有意な延長(4.1カ月vs 2.8カ月,HR 0.62,95%CI:0.50-0.73,P<0.0001),OSの有意な延長(13.9カ月vs 11.0カ月,HR 0.78,95%CI:0.64-0.96,P=0.0195)が示された40)。QOLの低下は認めず,維持療法群において毒性の増強はみられたものの許容範囲内であった。ベバシズマブの併用に関しては,CDDP+PEM+ベバシズマブ併用療法後にPEM+ベバシズマブ群とベバシズマブ単独群の第Ⅲ相試験(AVAPERL試験)が行われ,前者でPFSの有意な延長(7.4カ月vs 3.7カ月,HR 0.48,95%CI:0.44-0.75,P<0.0001)を認めたが,OSの有意な延長は認めなかった41)
 以上より,CDDP+PEM併用療法4サイクル後,病勢進行を認めず毒性も忍容可能な症例に対するPEMのcontinuation maintenanceは行うよう勧められる。エビデンスレベルはB,また総合的評価では行うよう強く推奨(1で推奨)できると判断し,推奨度は1Bとした。
b.
プラチナ製剤併用療法後のPEMを用いたswitch maintenanceの第Ⅲ相試験で,PFSの有意な延長(4.3カ月vs 2.6カ月,HR 0.50,95%CI:0.42-0.61,P<0.0001),OSの有意な延長(13.4カ月vs 10.6カ月,HR 0.79,95%CI:0.65-0.95,P=0.012)が示された42)。しかしながら,プラセボ群に対する2次治療以降でのクロスオーバーが少ないこと,すなわち,プラセボ群において2次治療以降に有効とされているPEMが投与されていないこと(18%)が問題とされている。
 以上より,プラチナ製剤併用療法4サイクル後,病勢進行を認めず毒性も忍容可能な症例に対するPEMによるswitch maintenanceは選択肢の1つと考えられる。エビデンスレベルはB,また総合的評価では行うよう弱く推奨(2で推奨)できると判断し,推奨度は2Bとした。

*エルロチニブを用いたswitch maintenanceについて

 プラチナ製剤併用療法後のエルロチニブを用いたswitch maintenanceは,第Ⅲ相試験(SATURN試験)でPFSの有意な延長(12.3週vs 11.1週,HR 0.71,95%CI:0.62-0.82,P<0.0001),OSの有意な延長(12.0カ月vs 11.0カ月,HR 0.81,95%CI:0.70-0.95,P=0.0088)が示されている43)。しかしながら,プラセボ群に対する2次治療以降でのクロスオーバーが少ないこと,すなわち,プラセボ群において2次治療以降に有効とされているエルロチニブが投与されていないこと(21%)が問題とされていた。その後,EGFR遺伝子変異陰性進行期非小細胞肺癌に対する早期からエルロチニブ維持療法を行う群とPD後にエルロチニブ療法を行う群の第Ⅲ相試験(IUNO試験)が行われた。その結果,OSにおいて早期からエルロチニブ維持療法を行う群の優位性は示されなかった(9.7カ月vs 9.5カ月,HR 1.02,95%CI:0.85-1.22,P=0.82)44)。以上より,非扁平上皮癌(治療標的となる遺伝子変異陰性もしくは不明)におけるエルロチニブの維持療法(switch maintenance)は有効性と間質性肺障害のリスクなどから臨床的有用性は低いと考えられる。
c.
プラチナ製剤併用療法後のPEM,エルロチニブを用いたswitch maintenanceの第Ⅲ相試験でPFS,OSの延長が示されたが,扁平上皮癌のサブセットにおいてはOSにおける有意差が消失していた42)43)。さらに,早期からエルロチニブ維持療法を行う群とPD後にエルロチニブ療法を行う群を比較した第Ⅲ相試験(IUNO試験)が行われたが,前述の試験と同様に扁平上皮癌のサブセットにおいてもOSの延長は示されなかった(9.7カ月vs 9.5カ月,HR 1.00,95%CI:0.74-1.35,P=0.82)44)。以上より,扁平上皮癌に対するswitch maintenanceは推奨するだけの根拠に乏しい。また,continuation maintenanceについても扁平上皮癌に対する有効性は示されていない。維持療法において毒性が増強する点も考慮すると,プラチナ製剤併用療法4サイクル後,病勢進行を認めず毒性も忍容可能な扁平上皮癌に対してswitch maintenance,continuation maintenanceともに行わないよう勧められる。エビデンスレベルはC,ただし総合的評価では行わないよう強く推奨(1で推奨)できると判断し,推奨度は1Cとした。
GRADE
CQ43.PS 3-4の患者(遺伝子変異陰性もしくは不明,PD-L1発現は問わない)に薬物療法は勧められるか?
推 奨
薬物療法を行わないよう推奨する。(1D)
解 説
 PS 3-4症例(遺伝子変異陰性もしくは不明,PD-L1発現は問わない)に対する細胞障害性抗癌剤は,一般に適応がない。PD-1阻害剤はPS良好例(PS 0-1)を中心に臨床試験が行われているため,PS不良例のエビデンスは乏しく,安全性も不明であることから細胞障害性抗癌剤と同様にPS 3-4についてのPD-1阻害剤も推奨されない。エルロチニブについて,PS不良や合併症のため細胞障害性抗癌剤の適応とならない進行非小細胞肺癌に対してエルロチニブ単剤と緩和治療の第Ⅲ相試験(TOPICAL試験)が行われた45)。患者背景として,年齢中央値77歳,PS 3が30%を占め,EGFR遺伝子変異については陰性,不明がそれぞれ52%,46%であった。組織型では,扁平上皮癌と非扁平上皮癌が各40%,60%含まれていた。この試験において,主要評価項目であるOSの延長は認められなかった(エルロチニブ単剤3.7カ月,プラセボ群3.6カ月,HR 0.94,95%CI:0.81-1.10,P=0.46)。
 以上より,PS 3-4の患者(遺伝子変異陰性もしくは不明,PD-L1発現は問わない)に対する薬物療法は行わないよう推奨される。エビデンスレベルはD,ただし総合的評価では行わないよう強く推奨(1で推奨)できると判断し,推奨度は1Dとした。

■遺伝子変異陰性,PD-L1<50%,もしくは不明の2次治療以降

GRADE
CQ44.1次治療耐性または進行例,PS 0-2に推奨される2次治療は何か?
推 奨

a.PD-L1≧1%症例に対して,PD-1阻害剤を先行するよう提案する。(2B)

b.PD-L1<1%症例に対して,

b-1.非扁平上皮癌ではニボルマブもしくは細胞障害性抗癌剤のいずれかを行うよう提案する。(推奨なし)

b-2.扁平上皮癌ではニボルマブを行うよう推奨する。(1B)

c.PD-L1発現率が測定不能な場合,ニボルマブを行うよう提案する。(2B)

*PD-L1<1%,測定不能な場合はペムブロリズマブの投与は行わない。

解 説
 遺伝子変異陰性例の2次治療では,ペムブロリズマブやニボルマブといった免疫チェックポイント阻害剤による生存期間の延長が3つの第Ⅲ相試験において示されている。いずれもDTX単剤を対照としており,ペムブロリズマブはPD-L1>1%の非小細胞肺癌を対象とし(KEYNOTE-010試験),ニボルマブはPD-L1の発現を問わず非扁平上皮癌(CheckMate017試験),扁平上皮癌(CheckMate057試験)をそれぞれ対象として試験を行った。
 一方で,その後に行われた1次治療における第Ⅲ相試験(KEYNOTE-024試験)の結果,PD-L1≧50%に対しては1次治療としてペムブロリズマブ単剤が標準治療となっており,2次治療で免疫チェックポイント阻害剤を考慮すべき対象はPD-L1 50%未満となっている。そこで本項ではPD-L1の発現に基づく推奨度の検討を行った。
 なお,上記の第Ⅲ相試験はいずれもPS 0-1の症例を対象として実施しており,PS 2の1次治療耐性または進行後のⅣ期非扁平上皮非小細胞肺癌症例に対するPD-1阻害剤の有用性は効果・安全性ともに現時点で不明である。そのため,PS 2に対してPD-1阻害剤の使用を推奨するだけの根拠は十分でない。ただしガイドライン検討委員会薬物療法及び集学的治療小委員会(作成班)では,PD-1阻害剤は細胞障害性抗癌剤と比較して重篤な有害事象の頻度は低いことから,投与の是非を慎重に検討したうえでPD-1阻害剤の投与を考慮してもよいという意見が多くみられた。下記に,ガイドライン検討委員会薬物療法及び集学的治療小委員会(作成班)において推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。
行うことを
推奨
行うことを
弱く推奨(提案)
評価不能・推奨なし 行わないことを
弱く推奨(提案)
行わないことを
推奨
0% 83% 17% 0% 0%
 また,細胞障害性抗癌剤については,PS 0-2を対象とした第Ⅲ相試験が複数行われ有効性が示されているものの(CQ45参照),PS 2のサブセットに関する結果は限られている。
a.
本CQの対象であるPD-L1:1~49%のサブセット解析に関する報告はKEYNOTE-010試験に基づくペムブロリズマブのデータのみである。この試験はPD-L1:1%以上の非小細胞肺癌を対象としたペムブロリズマブ2 mg/kgもしくは10 mg/kgをDTX単剤と比較した第Ⅲ相試験で,全体ではペムブロリズマブ群において生存期間の延長が得られている(10.4カ月vs 12.7カ月vs 8.5カ月で,DTX群に対していずれも有意差あり)。この試験のPD-L1:1-49%におけるサブセット解析ではペムブロリズマブ2 mg/kg群でOSはHR 0.79(95%CI:0.61-1.04),10 mg/kg群でOSはHR 0.71(95%CI:0.53-0.94)であり,統合したOSはHR 0.76(95%CI:0.60-0.96)と,ペムブロリズマブが優れる傾向がみられた46)。またGrade 3以上の毒性はペムブロリズマブ2 mg/kg群で13%,10 mg/kg群で16%,DTX群で35%とペムブロリズマブ群で頻度が低く,ペムブロリズマブの免疫関連の毒性として甲状腺機能障害,肺臓炎,皮膚障害などが認められた。なおペムブロリズマブ2 mg/kg群と10 mg/kg群での有効性や毒性の差は認めなかったことも報告されている46)(PD-L1陽性の切除不能な進行・再発非小細胞肺癌に対する本邦でのペムブロリズマブの投与量は,添付文書より200 mg/bodyの3週毎投与である)。
 ニボルマブは扁平上皮癌を対象としたCheckMate017試験において,PD-L1発現の有無を問わずDTXと比較しOSの有意な延長が示されている(9.2カ月vs 6.0カ月,HR 0.59,95%CI:0.44-0.79,P<0.001)。また非扁平上皮癌を対象としたCheckMate057試験においても同様にDTXと比較しOSの有意な延長が示されている(12.2カ月vs 9.4カ月,HR 0.73,95%CI:0.59-0.89,P=0.002)。同試験においてニボルマブの有効性はPD-L1発現レベルに応じて上昇し,PD-L1発現率≥1%のサブセットではOSはHR 0.58(95%CI:0.43-0.79),PFSはHR 0.70(95%CI:0.53-0.94)と有意に生存期間を延長することが示されている47)。主な毒性としてペムブロリズマブ同様に肺臓炎,甲状腺機能障害,大腸炎,肝機能障害,皮疹,1型糖尿病などの免疫関連の毒性が報告されており,毒性管理には注意が必要である。
 以上より,PD-L1発現率≧1%の1次治療耐性または進行後のⅣ期非小細胞肺癌に対してはPD-1阻害剤を行うよう提案する。エビデンスレベルはB,また総合的評価では行うよう弱く推奨(2で推奨)できると判断し,推奨度は2Bとした。下記に,ガイドライン検討委員会薬物療法及び集学的治療小委員会(作成班)において推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。
[PD-1発現率≧1%の患者群に対して推奨または提案すべき治療選択肢に関する投票結果]
PD-1阻害剤を推奨 細胞障害性抗癌剤を推奨 評価不能
78% 11% 11%
[PD-1発現率≧1%の患者群に対するPD-1阻害剤の推奨度に関する投票結果]
行うことを
推奨
行うことを
弱く推奨(提案)
評価不能・推奨なし 行わないことを
弱く推奨(提案)
行わないことを
推奨
12% 87% 0% 0% 0%
b-1.
非扁平上皮癌を対象としたCheckMate057試験のPD-L1陰性例におけるサブセット解析において,ORRはニボルマブ群で9%,DTX群で15%であり,またPFSのDTX群に対するHRは1.19(95%CI:0.88-1.61)と短期的な効果の指標はDTX群で良い傾向があったものの,1年のPFS率など長期の指標はニボルマブ群で優っており(18% vs 8%),OSのHRは0.90(95%CI:0.66-1.24)であった47)。主な毒性としてニボルマブ群で倦怠感,吐き気,食欲低下,DTX群で好中球減少,倦怠感,脱毛などであり,Grade3以上の毒性はニボルマブ群で有意に少なかった(10% vs 54%)。一方,ニボルマブ群で肺臓炎,甲状腺機能障害,大腸炎,肝機能障害,皮疹,1型糖尿病などの免疫関連の毒性が報告されており,免疫関連の毒性管理には注意が必要である。ペムブロリズマブはPD-L1≧1%を対象として臨床開発が行われているため,PD-L1<1%を対象としたデータはない。
 以上より,現在のデータからはPD-L1<1%の非扁平上皮癌に対してニボルマブと細胞障害性抗癌剤のいずれかを勧めるだけの根拠が明確でなく,患者と腫瘍の状態を勘案しいずれかを選択するよう提案する。下記に,ガイドライン検討委員会薬物療法及び集学的治療小委員会(作成班)において推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。ガイドライン検討委員会薬物療法及び集学的治療小委員会(作成班)による投票によっても,いずれかの治療に値するコンセンサスは得られなかった。
[非扁平上皮癌におけるPD-1発現率<1%の患者群に対して推奨または提案すべき治療選択肢に関する投票結果]
ニボルマブを推奨 細胞障害性抗癌剤を推奨 評価不能
38% 24% 38%
 なお,PD-L1<1%の治療方針においては,厚生労働省により作成・公表された最適使用推進ガイドライン48)において「PD-L1発現率が1%未満であることが確認された非扁平上皮癌患者においては,原則,ドセタキセルなどの本剤(ニボルマブ)以外の抗悪性腫瘍剤の投与を優先する」と記載されており,本ガイドラインの推奨と異なる。実際の治療選択にあたっては,最適使用推進ガイドラインも参考のうえで治療方針を決定するよう推奨される。
b-2.
扁平上皮癌を対象としたニボルマブのCheckMate017試験のPD-L1発現率に基づくサブセット解析では,PD-L1の発現によらずニボルマブの有効性が示されている49)。主な毒性は,ニボルマブ群で倦怠感や食欲低下,DTX群で好中球減少,倦怠感,脱毛などであり,Grade 3以上の毒性はニボルマブ群で有意に少なかった(7% vs 55%)。一方,ニボルマブ群で肺臓炎,甲状腺機能障害,大腸炎,肝機能障害,皮疹,1型糖尿病などの免疫関連の毒性が報告されており,免疫関連の毒性管理には注意が必要である。以上より,エビデンスレベルはB,また総合的評価では行うよう強く推奨(1で推奨)できると判断し,推奨度は1Bとした。
c.
厚生労働省により作成・公表された最適使用推進ガイドライン48)では,原則として腫瘍のPD-L1発現に基づき治療選択をすることが推奨されており,可能なかぎりPD-L1発現率の検討を行うことが勧められるが,十分な腫瘍組織が得られないなどの理由がある場合にはそのかぎりではない。その場合にはCheckMate057試験の結果47)に基づきニボルマブの使用を提案する。エビデンスレベルはB,また総合的評価では行うよう弱く推奨(2で推奨)できると判断し,推奨度は2Bとした。下記に,ガイドライン検討委員会薬物療法及び集学的治療小委員会(作成班)において推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。
行うことを
推奨
行うことを
弱く推奨(提案)
評価不能・推奨なし 行わないことを
弱く推奨(提案)
行わないことを
推奨
15% 85% 0% 0% 0%
GRADE
CQ45.PS 0-2に対して2次治療以降で推奨される細胞障害性抗癌剤は何か?
推 奨
ドセタキセル±ラムシルマブ,ペメトレキセド単剤,S-1単剤を行うよう推奨する。(1A)

*PEMは非扁平上皮癌の投与が推奨される。

解 説

〈ドセタキセル単剤〉

 プラチナ製剤を含む薬物療法無効または奏効後に再発した非小細胞肺癌患者を対象としたDTX単剤の第Ⅲ相試験が2編報告されている。1つはDTX(100 mg/m2 or 75 mg/m2)vs VNR or IFMの比較試験(TAX320試験)でMSTでは有意差を認めないもDTX 75 mg/m2群で対照群と比較してORR,26週PFS率,1年生存率の有意な改善を認めた50)。また,DTX(100 mg/m2 or 75 mg/m2)と緩和治療の比較ではMSTと1年生存率は,DTX 75 mg/m2群,緩和治療群でそれぞれ7.5カ月と37%,4.6カ月と19%で,DTX群で有意に優れ(P=0.010,P=0.003),QOLの改善も認められた51)。いずれの試験においても,DTX 75 mg/m2群が最も治療成績が優れており,プラチナ製剤を含む治療後の不応ないし再発例に対する非小細胞肺癌の薬物療法としてはDTX 75 mg/m2の有用性が確立された。本邦における推奨用量は60 mg/m2であるが,本邦で行われたこの用量における第Ⅱ相試験でORR 18.2%,MST 7.8カ月と上記2編の第Ⅲ相試験のDTX 75 mg/m2と同等の効果を有する結果を報告した52)

〈ドセタキセル+ラムシルマブ〉

 CQ46参照

〈ペメトレキセド単剤〉

 Ⅳ期非小細胞肺癌の2次治療におけるPEM単剤とDTX単剤の第Ⅲ相試験が報告され,ORR,MSTはPEM群で9.1%,8.3カ月,DTX単剤群で8.8%,7.9カ月であり,主要評価項目であるOSで非劣性は証明されなかったが同等の効果(HR 0.99,95%CI:0.80-1.20)が報告された。毒性に関しては,Grade 3/4の好中球減少,発熱性好中球減少,全Gradeの脱毛の発現率がDTX群で有意に高かった53)。同試験を組織学的に後方視的解析した結果,OSは非扁平上皮癌でそれぞれ9.3カ月と8.0カ月(HR 0.78,95%CI:0.61-1.00,P=0.047)と有意差を認めた。また,PFSにおいても非扁平上皮癌でそれぞれ3.1カ月と3.0カ月(HR 0.82,95%CI:0.66-1.02,P=0.076)と有意差を認めなかったが,効果はほぼ同等であった54)。一方,有害事象に関しては,Grade 3以上の発熱性好中球減少(1.9% vs 12.7%),好中球減少(5.3% vs 40.2%),好中球減少に伴った感染(0.0% vs 3.3%)の発現頻度は有意に少なく,ALT上昇(1.9% vs 0.0%)の頻度は有意に高いと違いを認めたが,QOLに関しては差を認めなかった。

〈S-1単剤〉

 プラチナ既治療のⅣ期非小細胞肺癌,PS 0-2の2次もしくは3次治療例を対象とし,S-1単剤とDTX単剤を比較する第Ⅲ相試験が本邦を含むアジアで行われた。主要評価項目であるOSはS-1群で12.8カ月,DTX群で12.5カ月(HR 0.95,95%CI:0.83-1.07,P=0.38)であり,DTX単剤に対するS-1単剤の非劣性が示された。PFSはS-1群2.9カ月,DTX群2.9カ月(HR 1.03,95%CI:0.91-1.17)で両群に差を認めず,ORRはS-1群8.3%,DTX群9.9%であった。毒性に関しては,発熱性好中球減少ならびにGrade 3以上の好中球減少の頻度はDTX群で高く(0.9% vs 13.6%,5.4% vs 47.7%),全Gradeの下痢と口腔粘膜障害の頻度はS-1群で高かったが(37.2% vs 18.2%,23.9% vs 14.5%),Grade 3以上の頻度は低く忍容性は良好であった55)
 以上より,1次治療耐性または進行後のⅣ期非小細胞肺癌症例に対してDTX±ラムシルマブ,S-1単剤,(非扁平上皮癌の場合)PEM単剤の投与を行うよう勧められる。エビデンスレベルはA,また総合的評価では行うよう強く推奨(1で推奨)できると判断し,推奨度は1Aとした。
GRADE
CQ46.2次治療でドセタキセルを用いる場合にラムシルマブの併用は推奨されるか?
推 奨

a.ラムシルマブの適応となるPS 0-1症例に対して,ドセタキセルにラムシルマブを併用するよう提案する。(2B)

b.75歳以上,もしくはPS 2症例に対して,ドセタキセルにラムシルマブを併用しないよう提案する。(75歳以上:2D,PS 2:2D)

解 説
a.
プラチナ製剤併用療法後に進行したPS 0-1の進行非小細胞肺癌症例を対象とし,DTX+ラムシルマブ併用療法とDTX単剤を比較する第Ⅲ相試験(REVEL試験)が行われ,主要評価項目であるOSは,ラムシルマブ併用群で有意な延長を認めた(10.5カ月vs 9.1カ月,HR 0.86,95%CI:0.75-0.98,P=0.023)。また,ラムシルマブ併用群において,PFS(4.5カ月vs 3.0カ月,HR 0.76,95%CI:0.68-0.86,P<0.0001),ORR(23% vs 14%,P<0.0001)も有意に良好であった。毒性に関しては,ラムシルマブ併用群でGrade 3/4の好中球減少,発熱性好中球減少,全Gradeの血小板減少,口内炎がより高頻度であったが,Grade 3以上の高血圧は6%で出血性イベントの多くはGrade 1/2であった56)
 また本邦において,DTX+ラムシルマブ併用療法とDTX単剤のランダム化比較第Ⅱ相試験(JVCG試験)が行われ,ラムシルマブ併用群においてPFS(5.2カ月vs 4.2カ月,HR 0.83,95%CI:0.59-1.16),OS(15.2カ月vs 13.9カ月,HR 0.77,95%CI:0.56-1.32),ORR(28.9% vs 18.5%)ともに良好な結果が示された。毒性に関しては,ラムシルマブ併用群において発熱性好中球減少の頻度が高く(34% vs 19%),低アルブミン血症,血小板減少,口内炎,鼻出血,蛋白尿などもDTX単剤よりも高頻度であったが,ほとんどはGrade 1/2であった57)。ラムシルマブにおいてもベバシズマブと同様に出血リスクには注意が必要であり,投与に際してはその適応を十分検討する必要がある。
 以上より,ラムシルマブは適応と考えられる症例においてDTXに追加するよう勧められる。エビデンスレベルはB,ただし総合的評価では行うよう弱く推奨(2で推奨)できると判断し,推奨度は2Bとした。

b-1.75歳以上

 前述の第Ⅲ相試験(REVEL試験)における75歳以上のサブセットは不明である。また,本邦において実施された第Ⅱ相試験(JVCG試験)でも75歳以上の症例は10例と少数であるため75歳以上の高齢者に対するラムシルマブの安全性や有効性に関してのデータは十分ではない。一方,本ガイドラインの1次治療では,エビデンスレベルは低いものの骨髄抑制や血栓塞栓症,出血などの有害事象増加への懸念から,75歳以上に対してプラチナ製剤併用療法にラムシルマブと同じ血管新生阻害剤であるベバシズマブの併用を勧める根拠が乏しく,行わないよう提案されている(CQ41)。ラムシルマブについても若年者を中心とした本邦の第Ⅱ相試験において発熱性好中球減少をはじめとした毒性の増強が懸念されることを考えると,現時点で高齢者にラムシルマブを併用する根拠は明確ではない。エビデンスレベルはD,また総合的評価では行わないよう弱く推奨(2で推奨)できると判断し,推奨度は2Dとした。下記に,ガイドライン検討委員会薬物療法及び集学的治療小委員会(作成班)において推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。
行うことを
推奨
行うことを
弱く推奨(提案)
評価不能・推奨なし 行わないことを
弱く推奨(提案)
行わないことを
推奨
0% 0% 11% 89% 0%

b-2.PS 2

 上記のREVEL試験,JVCG試験においては対象症例がPS 0-1であり56)57),PS 2に対するラムシルマブの安全性や有効性に関してのデータはない。よって,PS 2に対するラムシルマブは行うよう勧めるだけの根拠が明確でない。PS 0-1を対象とした試験では,ラムシルマブ併用群で発熱性好中球減少の発現頻度が高く,PS不良例においてはラムシルマブの併用により毒性の悪化が懸念される。
 以上より,益と害のバランスを考慮し現時点では行わないよう勧められる。エビデンスレベルはD,ただし総合的評価では行わないよう弱く推奨(2で推奨)できると判断し,推奨度は2Dとした。下記に,ガイドライン検討委員会薬物療法及び集学的治療小委員会(作成班)において推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。
行うことを
推奨
行うことを
弱く推奨(提案)
評価不能・推奨なし 行わないことを
弱く推奨(提案)
行わないことを
推奨
0% 0% 28% 72% 0%
GRADE
CQ47.2次治療でエルロチニブは推奨されるか?
推 奨
EGFR遺伝子変異陰性もしくは不明の患者に対して,エルロチニブ投与を推奨するだけの根拠が明確ではない。(推奨なし)
解 説
 2次治療以降のⅣ期非小細胞肺癌を対象としたエルロチニブ単剤とプラセボとを比較する第Ⅲ相試験(BR21試験)において,ORRがそれぞれ8.9%と1%(P<0.001),PFSがそれぞれ2.2カ月と1.8カ月(HR 0.61,95%CI:0.51-0.74,P<0.001),主要評価項目であるOSが6.7カ月と4.7カ月(HR 0.70,95%CI:0.58-0.85,P<0.001)でいずれもエルロチニブ単剤群が有意に優れており,エルロチニブ単剤はⅣ期非小細胞肺癌に対する2次治療以降の治療選択肢の1つとなった58)
 その後,プラチナ製剤治療歴のあるEGFR遺伝子変異野生型症例を対象とし,2次治療としてDTX単剤とエルロチニブ単剤を比較する第Ⅲ相試験(TAILOR試験)が報告され,OSはDTX群が8.2カ月に対して,エルロチニブ群が5.4カ月(HR 0.73,95%CI:0.53-1.00,P=0.05)とDTX群が有意に良好であった59)。また本邦においても,主要評価項目をPFSとしてプラチナ製剤治療歴のある2次もしくは3次治療例を対象に,DTX単剤とエルロチニブ単剤を比較する第Ⅲ相試験(DELTA試験)が報告され,EGFR遺伝子変異陰性例におけるエルロチニブ群のPFSは1.3カ月,DTX群は2.9カ月(HR 1.57,95%CI:1.18-2.11,P<0.01)とエルロチニブ群で劣る結果であり,扁平上皮癌を含むEGFR遺伝子変異陰性非小細胞肺癌におけるエルロチニブ単剤の有効性はDTX単剤より低いことが示された60)
 近年,Ⅳ期非小細胞肺癌の2次治療においては,PD-1阻害剤であるニボルマブ単剤やペムブロリズマブ単剤,DTX+ラムシルマブ療法は,DTX単剤との比較試験において有意な生存期間の延長を認めⅣ期非小細胞肺癌の標準治療となり,S-1単剤もDTX単剤に対する非劣性が示され標準治療の1つとなった。新たに標準治療となったこれらの薬剤の治療成績と前述のDTX単剤との比較試験の結果を考慮するとエルロチニブ単剤は有効性が低く,EGFR遺伝子変異陰性例においてはEGFR-TKIの間質性肺障害発症のリスク因子と報告されている臨床的背景をもつことが多いため,間質性肺障害発症のリスクを考慮した慎重な患者選択が必要とされる。
 以上より,遺伝子変異陰性もしくは不明におけるエルロチニブ単剤は有効性と間質性肺障害のリスクなどから推奨するだけの根拠が明確でなく,「推奨なし」とした。下記に,ガイドライン検討委員会薬物療法及び集学的治療小委員会(作成班)において推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。
行うことを
推奨
行うことを
弱く推奨(提案)
評価不能・推奨なし 行わないことを
弱く推奨(提案)
行わないことを
推奨
0% 22% 43% 35% 0%
引用文献

レジメン:Ⅳ期非小細胞肺癌

遺伝子変異陽性

EGFR遺伝子変異陽性例 ゲフィチニブ 250 mg/日 1日1回
エルロチニブ 150 mg/日 1日1回
アファチニブ 40 mg/日 1日1回
(EGFR T790M遺伝子変異陽性のみ)
オシメルチニブ
80 mg/日 1日1回
ALK遺伝子転座陽性例 クリゾチニブ 500 mg/日 1日2回
アレクチニブ 600 mg/日 1日2回
セリチニブ 750 mg/日 1日1回
ROS1遺伝子転座陽性例 クリゾチニブ 500 mg/日 1日2回
BRAF遺伝子変異陽性例 ダブラフェニブ
トラメチニブ
300 mg/日
2 mg/日
1日2回
1日1回

PD-L1≧50%

ペムブロリズマブ 200 mg/body,day 1 q3w

すべてのサブグループ

プラチナ製剤と第3世代以降の細胞障害性抗癌剤のレジメン

CDDPレジメン

CDDP 75 mg/m2,day 1 q3w
PEM 500 mg/m2,day 1

4コース終了後,増悪を認めなければPEM単剤の維持療法を考慮する
維持療法:PEM 500 mg/m2,day 1

※PEMの投与に際しては下記ビタミンの補充を行う

①葉酸:投与の7日以上前から葉酸として1日1回0.5 mgを連日経口投与する。なお,本剤の投与を中止または終了する場合には,本剤最終投与日から22日目まで可能なかぎり葉酸を投与する。

②ビタミンB12:初回投与の少なくとも7日前に,ビタミンB12として1回1 mgを筋肉内投与する。その後,本剤投与期間中および投与中止後22日目まで9週ごと(3コースごと)に1回投与する。

CDDP 80 mg/m2,day 1 q3w
DTX 60 mg/m2,day 1
CDDP 80 mg/m2,day 1 q3w
GEM 1000 mg/m2,day 1,8
CDDP 80 mg/m2,day 1 q3w
VNR 25 mg/m2,day 1,8
CDDP 80 mg/m2,day 1 q4w
CPT-11 60 mg/m2,day 1,8,15
CDDP 60 mg/m2,day 8 q4-5w
S-1 40 mg/m2,1日2回,day 1-21

CBDCAレジメン

CBDCA (AUC=6),day 1 q3w
PTX 200 mg/m2,day 1

PTX投与30分前までにデキサメタゾン,H1,H2 blockerの前投薬を行う

CBDCA (AUC=5),day 1 q3w
GEM 1000 mg/m2,day 1,8
CBDCA (AUC=5),day 1 q3w
S-1 40 mg/m2,1日2回,day 1-14
CBDCA (AUC=6),day 1 q3w
nab-PTX 100 mg/m2,day 1,8,15
CBDCA (AUC=5-6),day 1 q3w
PEM 500 mg/m2,day 1

4コース終了後,増悪を認めなければPEM単剤の維持療法を考慮する
維持療法:PEM 500 mg/m2,day 1

※PEMの投与に際しては上記CDDP+PEMレジメンの注釈を参照のこと
  • 増悪しなければ上記を6コース以内で繰り返す。
  • 維持療法を行う場合はプラチナ製剤併用を4コースで終了し,病勢増悪を認めず,毒性が忍容可能な場合に(プラチナ製剤を含まない)単剤療法に移行する。

ネダプラチンレジメン

ネダプラチン 100 mg/m2,day 1 q3w
DTX 60 mg/m2,day 1
ベバシズマブ併用レジメン
CBDCA (AUC=6),day 1 q3w
PTX 200 mg/m2,day 1
ベバシズマブ 15 mg/kg,day 1
 PTX投与30分前までにデキサメタゾン,H1,H2 blockerの前投薬を行う
  • 増悪しなければ上記を6コース以内で繰り返す。
  • ベバシズマブについてはプラチナ製剤併用療法の終了後,病勢増悪もしくは毒性中止まで単剤投与を継続する。
単剤療法
免疫チェックポイント阻害剤 (PD-L1≧1%のみ)
ペムブロリズマブ
200 mg/body,day 1 q3w
ニボルマブ 3 mg/kg,day 1 q2w
細胞障害性抗癌剤 DTX
ラムシルマブ
60 mg/m2,day 1
10 mg/kg,day 1
q3w
DTX 60 mg/m2,day 1 q3w
PEM 500 mg/m2,day 1 q3w
S-1 80-120 mg/body,1日2回,day 1-28 q6w
GEM 1000 mg/m2,day 1,8,15 q4w
VNR 25 mg/m2,day 1,8 q3w

※PEM の投与に際しては下記ビタミンの補充を行う

①葉酸:投与の7日以上前から葉酸として1日1回0.5 mgを連日経口投与する。なお,本剤の投与を中止または終了する場合には,本剤最終投与日から22日目まで可能なかぎり葉酸を投与する。

②ビタミンB12:初回投与の少なくとも7日前に,ビタミンB12として1回1 mgを筋肉内投与する。その後,本剤投与期間中および投与中止後22日目まで9週ごと(3コースごと)に1回投与する。

このページの先頭へ