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Ⅲ.小細胞肺癌(SCLC)

再発小細胞肺癌

文献検索と採択

再発小細胞肺癌

本文中に用いた略語および用語の解説

AMR アムルビシン
CDDP シスプラチン
CPA シクロフォスファミド
CPT-11 イリノテカン
DXR ドキソルビシン
ETP エトポシド
NGT ノギテカン
VCR ビンクリスチン
BSC best supportive care 緩和治療,ベストサポーティブケア
G-CSF granulocyte colony stimulating factor 顆粒球刺激因子
HR hazard ratio ハザード比
MST median survival time 生存期間中央値
OS overall survival 全生存期間
SCLC small cell lung cancer 小細胞肺癌
再発小細胞肺癌におけるSensitive relapseとRefractory relapseの分類
 再発小細胞肺癌に対するCDDP+ETP1),ETP2),teniposide(本邦未承認)3)など多くの第Ⅱ相試験において,初回薬物療法終了後から再発までの期間が長い患者は,再発後の薬物療法の奏効率が高いことが報告されている。このため,初回薬物療法が奏効し,かつ初回治療終了後から再発までの期間が長い患者(60~90日以上の場合が多い)は「Sensitive relapse」,それ以外は「Refractory relapse」と定義されることが多く,Sensitive relapseのほうが再発時の薬物療法の効果が高く,生存期間が長い4)5)

樹形図

再発小細胞肺癌 CQ77 CQ79
GRADE
CQ78.再発小細胞肺癌(sensitive relapse)に薬物療法は勧められるか?
推 奨
Sensitive relapseには薬物療法を行うよう推奨する。(1B)
解 説
 BSCとNGTを比較する第Ⅲ相試験において,NGTの有意な生存期間の延長が報告され(HR 0.64,95%CI:0.45–0.90,P=0.01,MST 13.9 週 vs 25.9 週),サブグループ解析で,sensitive relapseにおいてもNGT群で生存期間の有意な延長が報告されている1)
 以上より,sensitive relapseに対しては薬物療法を行うよう推奨される。エビデンスレベルはB,また総合的評価では行うよう強く推奨(1で推奨)できると判断し,推奨度は1Bとした。
GRADE
CQ79.再発小細胞肺癌(sensitive relapse)に対する最適な薬物療法は何か?
推 奨

a.Sensitive relapseに対してノギテカン単剤を行うよう提案する。(2A)

b.Sensitive relapseに対してシスプラチン+エトポシド+イリノテカン療法を行うよう提案する。(2B)

c.Sensitive relapseに対してアムルビシン単剤を行うよう提案する。(2C)

解 説
a.
Sensitive relapseを含む再燃小細胞肺癌を対象としたBSCと内服NGTを比較する第Ⅲ相試験において内服NGT群の生存期間の優越性が示された(MST 13.9 週 vs 25.9 週,HR 0.64,95%CI:0.45–0.90,P=0.01)1)。Sensitive relapse を対象としたNGTとCPA+DXR+VCR療法を比較する第Ⅲ相試験では,NGTと併用療法の生存期間は同等であり(MST 25.0 週 vs 24.7 週,HR記載なし,P=0.795),NGTで症状改善の優越性が示された2)。また,sensitive relapse を対象としたNGTと内服NGTを比較する第Ⅲ相試験ではNGTと内服NGTの生存期間は同等であった(MST 35.0 週 vs 33.0 週,HR 0.98,95%CI:0.77–1.25,P値記載なし)3)。これらの結果より,現時点ではNGTがsensitive relapseに対する標準治療とみなされている。しかしながら,有効性と労力(5日間投与を要する)を考慮し行うよう提案する。エビデンスレベルはA,また総合的評価では行うよう弱く推奨(2で推奨)できると判断し,推奨度は2Aとした。下記に,ガイドライン検討委員会薬物療法及び集学的治療小委員会(作成班)において推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。
行うことを
推奨
行うことを
弱く推奨(提案)
評価不能・推奨なし 行わないことを
弱く推奨(提案)
行わないことを
推奨
0% 92% 0% 8% 0%
b.
本邦でNGTとCDDP+ETP+CPT–11療法を比較する第Ⅲ相試験が行われ,CDDP+ETP+CPT–11療法の生存期間の優越性が証明された(MST 18.2カ月 vs 12.5カ月,HR 0.67,95%CI:0.51–0.88,P=0.0079)4)。しかしながら,併用療法においてG-CSF製剤の予防投与を行っているにもかかわらずGrade 3以上の発熱性好中球減少の発現頻度31%(NGT群で7%)と報告されており,同併用療法は患者の条件が許す場合のオプションの1つと考えられる。
 以上より,sensitive relapseに対するCDDP+ETP+CPT–11併用療法は,効果と有害事象のバランス,社会的背景(10週間以上の入院を要する)を考慮し行うよう提案する。エビデンスレベルはB,また総合的評価では行うよう弱く推奨(2で推奨)できると判断し,推奨度は2Bとした。下記に,ガイドライン検討委員会薬物療法及び集学的治療小委員会(作成班)において推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。
行うことを
推奨
行うことを
弱く推奨(提案)
評価不能・推奨なし 行わないことを
弱く推奨(提案)
行わないことを
推奨
21% 79% 0% 0% 0%
c.
AMRとNGTを比較する3つの試験が行われ5)~7),sensitive relapseのみを対象とした第Ⅱ相試験においてはMST 9.2カ月 vs 7.6カ月(HR,P値記載なし)と同等であり5),第Ⅲ相試験のサブグループ解析においてもsensitive relapseのOSはMST 9.2カ月vs 9.9カ月,HR 0.936,95%CI:0.724–1.211,P=0.615とAMRのNGTに対する優越性は示されなかった6)。9つの試験のシステマティックレビューが行われた結果,日本人のsensitive relapseに対するAMRの効果は奏効率 61%,1年生存率 51%と報告されている8)
 Sensitive relapseに対するETP9),CPT–1110),初回化学療法と同じレジメンの再投与(re-challenge)の有効性も報告されているが11)12),その後の前向き比較試験で有効性は確認されておらず,標準治療とはいえない。
 以上より,AMRはsensitive relapseに対して他の薬剤に対する優越性を示すデータは存在しないものの,その有効性と利便性の高さから行うよう提案する。エビデンスレベルはC,ただし総合的評価では行うよう弱く推奨(2で推奨)できると判断し,推奨度は2Cとした。下記に,ガイドライン検討委員会薬物療法及び集学的治療小委員会(作成班)において推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。
行うことを
推奨
行うことを
弱く推奨(提案)
評価不能・推奨なし 行わないことを
弱く推奨(提案)
行わないことを
推奨
30% 70% 0% 0% 0%
GRADE
CQ80.再発小細胞肺癌(refractory relapse)に薬物療法は勧められるか?
推 奨
Refractory relapseには,標準治療は確立されていないが,全身状態を考慮したうえで,薬物療法を行うよう推奨する。(1C)
解 説
 BSCとNGTを比較する第Ⅲ相試験においてNGTの生存期間の優越性が証明された(MST 13.9 週 vs 25.9 週,HR 0.64,95%CI:0.45–0.90,P=0.01)ものの,refractory relapseに対する生存期間の優越性は示されなかった1)
 Refractory relapseに対する薬物療法の意義は確立されていないと考えられるが,AMRのシステマティックレビューが行われた結果,日本人のrefractory relapseに対するAMRの効果は奏効率 38%, 1年生存率 34%と報告されており8),sensitive relapseを含むBSCとNGTを比較する第Ⅲ相試験のBSC群の6カ月生存率 26%より優れていると判断される。
 以上より,refractory relapseに対して,薬物療法を行うよう推奨される。エビデンスレベルはC,ただし総合的評価では行うよう強く推奨(1で推奨)できると判断し,推奨度は1Cとした。
GRADE
CQ81.再発小細胞肺癌(refractory relapse)に対する最適な薬物療法は何か?
推 奨
Refractory relapseに対して,アムルビシン単剤を行うよう推奨する。(1C)
解 説
 再発小細胞肺癌に対するNGTと AMRの第Ⅲ相試験のサブグループ解析では,refractory relapseにおいて,OSはMST 5.7カ月 vs 6.2カ月,HR 0.776,95%CI:0.589–0.997,P=0.047とAMRによる生存期間の有意な延長効果を認められている6)。また,本邦においても refractory relapse症例に対するAMRの第Ⅱ相試験が行われ,奏効率は32.9%,MSTは8.9カ月であった14)。9つの試験のシステマティックレビューが行われた結果,日本人のrefractory relapseに対するAMRの効果は奏効率 38%,1年生存率 34%と報告されている9)
 以上より,refractory relapseに対してAMRを行うよう推奨される。エビデンスレベルはC,ただし総合的評価では行うよう強く推奨(1で推奨)できると判断し,推奨度は1Cとした。下記に,ガイドライン検討委員会薬物療法及び集学的治療小委員会(作成班)において推奨度決定のために行われた投票結果を記載する。
行うことを
推奨
行うことを
弱く推奨(提案)
評価不能・推奨なし 行わないことを
弱く推奨(提案)
行わないことを
推奨
70% 30% 0% 0% 0%
引用文献

レジメン:再発小細胞肺癌

AMR療法 AMR 40 mg/m2, day 1, 2, 3 q3w
NGT療法 NGT 1.0 mg/m2, day 1, 2, 3, 4, 5 q3w
CDDP+ETP+CPT-11療法
(G-CSF製剤予防投与有)
CDDP 25 mg/m2, day 1, weekly for 10 weeks
ETP 60 mg/m2, day 1, 2, 3, on weeks 1, 3, 5, 7, 9
CPT-11 90 mg/m2, day 1, on weeks 2, 4, 6, 8, 10
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