一般演題(ポスター)12
中皮腫2
座長:廣瀬  敬(国立病院機構東京病院呼吸器内科)
P-70.鉄誘発ラット悪性中皮腫モデルにおけるTBXAS1遺伝子発現の抑制
南  大輔1・瀧川 奈義夫2・工藤 健一郎3・加藤 有加3・磯崎 英子3・原田 大二郎4・越智 宣明2・二宮  崇1・久保 寿夫1・大橋 圭明1・堀田 勝幸1・田端 雅弘1・豊岡 伸一5・谷本 光音3・木浦 勝行1
岡山大学病院呼吸器・アレルギー内科1;川崎医科大学附属川崎病院総合内科学42;岡山大学大学院医歯薬学総合研究科血液・腫瘍・呼吸器内科3;四国がんセンター呼吸器内科4;岡山大学病院呼吸器外科・臨床遺伝子医療学5

【背景・目的】鉄誘発ラット悪性中皮腫モデルにおいてCDKN2A/B遺伝子のホモ欠失が発癌に関与するとされており,我々もラット中皮腫における遺伝子異常を探索した.
【方法】健常雄性Slc:Wistarラットに,生理食塩水,キレート剤のみ,あるいは鉄+キレート剤を腹腔内へ反復投与した.2年後にsacrificeし,中皮腫組織を確認後,免疫組織染色,Array-Based Comparative Genomic Hybridization(array-based CGH analysis),および定量polymerase chain reaction(PCR)を用いて解析した.
【結果】鉄+キレート剤を投与したラット10匹中5匹で悪性腹膜中皮腫が認められたが,コントロールの生理食塩水群(n=2)とキレート剤単独投与群(n=2)では認められなかった.免疫組織染色では,Calretinin陽性かつCEA陰性で上皮型中皮腫であることが確認され,DNA酸化損傷マーカーである8-hydroxy-2-deoxyguanosineも陽性であった.発症した中皮腫5匹中3匹では,array-based CGH analysisおよび定量PCRでTBXAS1遺伝子発現量の低下が認められた.
【考察】TBXAS1遺伝子はThromboxane A2を産生するアラキドン酸カスケードの中で血小板凝集に関与している.TBXAS1の発現低下は出血性素因となり得るため,溶血により局所への鉄の過剰集積がさらに増加し中皮腫が誘発されやすい可能性が推察された.
第56回日本肺癌学会総会 2015年11月開催

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