23.左肺全摘術後の無瘻性膿胸に対して胸腔鏡下膿胸腔掻爬術・胸腔内洗浄が有効であった1例
独立行政法人国立病院機構高知病院呼吸器外科
日野 弘之, 高嶋 美佳
同 呼吸器科
阿部 秀一, 細川 恵美子, 中野 万有里, 岡野 義夫, 町田 久典, 畠山 暢生, 岩原 義人, 篠原 勉, 大串 文隆

肺全摘術後の膿胸は難治性の重篤な合併症である.肺癌に対する左肺全摘術後の術後補助化学療法中に発症した急性無瘻性膿胸に対して,胸腔鏡下膿胸腔掻爬術およびその後の胸腔内洗浄が有効であった症例を経験したので報告する.症例は71歳,女性.2010年5月に血痰が出現し,当院紹介となる.精査にて左上葉支口を閉塞する腫瘍が認められ,非小細胞癌と診断.2010年6月下旬に左肺全摘術ND2a-2を施行.2010年9月中旬より術後補助化学療法CBDCA+PTXを2クール行った.2010年12月初旬に左無瘻性膿胸を発症.胸腔ドレナージ・胸腔内洗浄を行うも軽快せず,2010年12月下旬に胸腔鏡下膿胸腔掻爬術を施行した.術後9日間,生食で持続または間欠的に胸腔内洗浄を行った.膿性胸水は消失し,術後10日目に胸腔ドレーンを抜去.術後30日目に退院となった.現在,外来で経過観察中である.肺全摘術後の急性無瘻性膿胸に対する胸腔鏡下膿胸腔掻爬術と術後の胸腔内洗浄は,確実に感染を伴ったフィブリン塊を除去でき,有効な治療手段と考えられた.

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