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肺癌に対する治療薬 AZD9291の早期承認の要望

【投稿日時: 2015-07-03】

日本肺癌学会会員各位

2015年7月3日に、厚生労働大臣宛に下記要望書を提出致しましたことを、ここにご報告いたします。
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                                            平成2773

厚生労働大臣
塩崎 恭久 殿

       特定非営利活動法人日本肺癌学会
理事長 光冨徹哉
同保険委員会委員長 高橋和久

肺がん患者の会ワンステップ
代表 長谷川一男

 
肺癌に対する治療薬、AZD9291の早期承認の要望

平素は一方ならぬご指導を賜り心より感謝申し上げます。以下を要望申し上げたくお願い申し上げます。 

日本人の肺癌患者の約1/3は上皮成長因子受容体(epidermal growth factor receptor; EGFR)に遺伝子変異を有することが知られています。この変異を有する者のうち、手術不能又は術後再発患者に対する薬物療法としては、EGFRに対する阻害薬(EGFR TKI)が国内外及び主要な海外のガイドラインにおいて第一選択薬として推奨されています1-3)。しかし、いったんはEGFR-TKIが奏効しても、ほとんどの症例においては1年程度で耐性化し病状が進行します4)
EGFR-TKI耐性には様々な分子機序が存在することが報告されていますが、もっとも頻度が高いのはエクソン20の2次変異(T790M変異)によるもので、耐性化した症例の過半数でこの変異を認めると報告されています5,6)。 しかしながら、現時点でT790M変異陽性肺癌に対する治療薬は市場に存在しません。現状では、EGFR TKI耐性となった患者に対しては殺細胞性抗がん薬が投与されますが、その効果は満足できるものではなく、有効な治療の確立が急務となっています。 

AZD9291は活性化変異及びT790M変異を有するEGFRに対して、不可逆的なEGFRチロシンキナーゼ阻害作用を示し、かつ野生型EGFRの阻害作用が弱い新規薬剤で、EGFR-TKI治療中に耐性が発現したT790M変異陽性肺癌患者に対する有効性が期待されています。最新の国際共同臨床試験(AURA試験)の結果によると、既存のEGFR-TKI治療中に耐性化し病勢が進行したT790M変異を有する肺癌患者に、80mg/日のAZD9291を投与した群での奏効率は54%、奏効持続期間中央値は12.4ヵ月、無増悪生存期間中央値は13.5ヵ月と、非常に良好な成績が報告されました7)。 これは、現状において実施される実地医療(殺細胞性抗がん薬)の治療成績を大幅に上回るものです8-10)。すなわち、AZD9291は、満足な治療選択肢がないT790M変異を有する患者に対する薬物療法として有用な選択肢であると考えられます。 

AZD9291では、野生型EGFRへの阻害作用が弱いという特性から、イレッサで問題となった致死的な間質性肺炎はおこらないことも期待されましたが、残念ながらこれまでの臨床試験において報告されています(2.7%7)
投与症例は少ないですが日本人に高頻度な傾向が認められています。従いまして、本剤承認の後も引き続き間質性肺炎の危険性の高い集団の同定につとめるなど、関係各所の密接な協力のもと適正使用の推進を心がけることが重要であることは言うまでもありません。 

わが国の肺癌患者の多くがEGFR遺伝子異常を有しかつそのほとんどで耐性が発現する現状、および過半数のEGFR TKI耐性肺癌患者でT790M変異が見られる現状、本耐性に対する有効性が期待される薬剤が市場に存在しない現状があることより、学術的見地ならびに人道的見地よりAZD9291の早期承認を要望いたします。なお、AZD929120144月にFDAから Breakthrough therapyに指定され、現在EUでも優先審査の指定を受けていることを申し添えます。
 

関連文献

1)   肺癌診療ガイドライン2014年版

2)   NCCN Guideline (Non-Small Cell Lung Cancer) 2015 (http://www.nccn.org/)

3)   Azzoli CG et al. ASCO Guideline 2014 J. Clin. Oncol. 27:6251-6266, 2009

4)   Mitsudomi T et al., Cancer Sci. 98:1817-1824, 2007

5)   Yu HA et al. Clin. Cancer Res. 19:2240-2247, 2013

6)   Kosaka T et al.  Clin. Cancer Res. 12:5764-5769, 2006

7)   Jänne PA. et al. Presented at the European Lung Cancer Conference (ELCC) Annual Meeting,
15-18 April 2015.

8)   Maemondo M et al. N. Engl. J. Med. 362; 2380-2388, 2010

9)   Wu JY et al. Int. J. Cancer 126:247-255, 2010

10) Masuda T et al. Clin. Transl. Oncol. May 20, 2015 [Epub ahead of print]

 

 

 


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