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お知らせ

日本肺癌学会と日本病理学会合同ALK-IHC精度管理ワーキンググループで、日常臨床に役立つ知識や最新の情報などを盛り込み、病理医が適正な遺伝子診断を行うなど日々の診療に役立てていただける為にプラクティカルガイドを作成しました。

肺癌におけるALK免疫染色プラクティカルガイド PDF.gif

2017年1月





第1回日本肺癌学会・日本病理学会合同PD-1/PD-L1 コンパニオン診断 関係者会議を開催いたしましたので、ご報告させていただきます。


要 約  PDF.gif

期日:     2015年10月31日(土) 18:00-21:00
会場:      コングレスクエア日本橋 (東京都中央区日本橋1-3-13 東京建物日本橋ビル2階)

目的、ゴール:
日本肺癌学会では、これまでの分子標的薬において、薬剤が市場に出回る前にガイダンスを発表し、その使用や遺伝子診断にあたっての混乱を避けてきた経緯があるが、免疫チェックポイント薬は新しい作用機序の治療薬でもあり、これまでとは異なる展開が予想される。特に、それぞれの薬剤に対して異なるコンパニオン診断薬の開発が進んでいる上、異なる診断基準が示されている。このような現状において、市販後の混乱を避ける意味からも近い将来までの現状を共有するとともに、今後これらの有望な薬剤をどのように使用していくかについて関係者が一同に会し、忌憚のない意見交換を行うことで、建設的な提言を行っていきたい。最も進んでいる肺癌領域でのその帰結は、他の癌腫においても有用な道標になるとの意味合いも持っている。

参加者(敬称略):
キーノートスピーカー    珠玖 洋 (三重大学)
アカデミア
  日本肺癌学会:   秋田弘俊(北海道大学、日本肺癌学会バイオマーカー委員会)
    光冨徹哉(近畿大学、日本肺癌学会理事長)
    大江裕一郎(国立がん研究センター中央病院)(当日欠席)
  日本病理学会:   森井英一(大阪大学、日本病理学会医療業務委員会)
    松野吉宏(北海道大学)
    谷田部恭(愛知県がんセンター)
PMDA関係
  永井純正 (東京大学医科学研究所 先端医療研究センター)
製薬会社
  ブリストル・マイヤーズ、小野薬品、MSD、中外製薬、アストラゼネカ、メルクセローノ、ノバルティス、
  ファイザー
体外診断薬会社
  アジレント・テクノロジー/ダコ・ジャパン、ロッシュ・ダイアグノスティックス

プログラム(敬称略):
開会の挨拶   秋田弘俊
キーノート講演「腫瘍における免疫チェックポイント治療の展望」(20分)       珠玖 洋
米国での認可および現状について - PDL1 IHCの位置づけ、施行状況
1.    ブリストル・マイヤーズ・スクイブ社より (15分)
2.    MSD社 より(15分)
日本において想定される問題点
1.    臨床医から見たPDL1発現診断の問題点 (15分)   秋田弘俊
2.    病理診断におけるPDL1発現診断の問題点 (15分)   谷田部恭
総合討論 (60分):  司会  秋田弘俊、森井英一
開会の挨拶     森井英一

主な講演内容および意見交換内容:
キーノート講演(珠玖 洋)

・    免疫チェックポイント阻害薬, CAR-T細胞による新しい免疫療法は大きな成功をあげつつある。
・    Nivolumabでは奏効率は〜20%であるが長期に治療効果が続く症例がある(durability)。
・    効く症例と効かない症例があり、これを明らかにすることが重要である。
   ▷    腫瘍局所のリンパ球集積—T inflamed tumorに効果が高そうである。
   ▷    PD-L1発現—IHC抗体の種類により染色性が異なることもある。
   ▷    Mutational burden-mutationの総数と抗腫瘍効果が平行するが、mutaitoがあるタンパクの〜1%程
                度がT細胞を動員するのにすぎない。
                Mismatch repai deficient腫瘍での高い抗腫瘍効果が示されている。
・    他のチェックポイント分子やImmuno-potentiator、ワクチン、Treg制御等も併用した複合的癌免疫療法が期待されている。がんのコントロールから治癒をめざすことも20年後には夢ではない。
米国での認可および現状について - PDL1 IHCの位置づけ、施行状況 – (1)
ブリストル・マイヤーズ・スクイブ社より

・    2015年10月にFDAにより、非扁平上皮非小細胞肺癌へのNivolumab承認と同時に、PD-L1 IHC 28-8 pharmDx (DAKO)がComplementary diagnosticsとして承認された。
・    米国で新規に議論されている概念であるComplementary diagnosticsについての解説。
   ▷    Companion Dx …could be essential for the safe and effective use of a corresponding
               therapeutic product
               (医薬品の安全性と有効性を担保するために、医薬品の投与に必須の診断薬)。
   ▷    Complementary Dx …not typically linked to a specific drug but rather to a class of drugs, in
               order to improve development in the field of personalized medicine とある
               (医薬品の投与の際に参考となる情報を提供するが、必須の診断薬ではない)。
・    米国におけるPD-L1 IHC検査の臨床導入状況:臨床的にvalidateされたガイダンスに沿ってIHC検査が施行されている。Interpretation manual, Test reportが整備されている。

参加者よりコメント: 現状では、企業側がPD-L1 IHC 28-8 pharmDx がComplementary diagnosticsとして承認された旨をプレスリリースしているだけであり、FDAは公式にComplementary diagnosticsについてガイダンスを発出しているわけではない。FDAが学会等の場で、Complementary diagnostics について定義は未定であるとしながら、特定の品目に言及することなく、概念をプレゼンテーションしているのみである。しかし、今回のPD-L1 IHC 28-8 pharmDxとnivolumabの関係は、現状で学会等の場でFDAが提示しているComplementary diagnosticsの概念にあてはまるものと考えられる。

米国での認可および現状について - PDL1 IHCの位置づけ、施行状況 – (2)
MSD社より

・    Pembrolizumab臨床開発では、抗PD-L1抗体22C3によるIHCが用いられている。未染薄切病理標本については薄切後6か月間、PD-L1 IHC抗原性は保持されている。
・    PD-L1発現陽性・陰性のカットオフ値として50%が妥当という研究結果に基づいて、カットオフ値50%としている。
・    PD-L1発現を化学療法後の予後因子と結論付けられるだけのデータはない。
・    米国では、PembrolizumabはFDA承認検査PD-L1 IHC 22C3 pharmDx キットを用いて PD-L1発現を認める非小細胞肺癌症例を対象に2次治療として承認されている。Pembrolizumab添付文書には、陽性・陰性のカットオフ%値の記載はない。PD-L1 IHC 22C3 pharmDx承認文書に50%以上を陽性とすること、指定の染色キット・自動染色機を用いることが記載されている。
・    米国におけるPD-L1 IHC検査体制としては、自動染色装置を持たない施設の検体は全米にある検査センターで指定の染色キット・自動染色機を用いて検査が行われている。

日本において想定される問題点(1)
臨床医から見たPD-L1発現診断の問題点(秋田弘俊)

・    抗PD-1/PD-L1抗体薬のうち、1剤が承認された場合、2剤が承認された場合、多数の薬剤が承認された場合に分けて、それぞれの状況を想定して、問題の可能性が指摘された。
PD-L1 IHC用生検検体がすでにない場合(すでに他目的に使い尽くしている場合に再生検が必要か、再生検しても組織採取が出来ない可能性もある)、ひとつのIHC(抗体クローン)ですべて代用可能か、CoDxなのでそれぞれのIHC(抗体クローン)でその都度それぞれの薬剤を使用する直前に検査するべきか、すべてのCoDx IHCをまとめて一度に施行すべきか、検査は検査会社・自病院病理部のいずれに依頼するべきか、どのキット(抗体クローン)を用いて検査するべきか、臨床経過でPD-L1発現が変化する可能性があるので直近の組織検体を採取して再IHCするべきか、等。
・    抗PD-1抗体薬と抗PD-L1抗体薬は異なる細胞に発現する異なる分子を標的としており、異なる効果を示す可能性もある(今後の研究対象)。

日本において想定される問題点(2)
病理診断におけるPD-L1発現診断の問題点(谷田部恭)

・    異なる抗体薬で、異なるCoDx、異なる評価基準。
・    同一腫瘍内でPD-L1発現に不均一性あり(同一腫瘍組織の評価する部分によって、陽性・陰性の評価結果が異なる)。
・    PD-L1 IHC(抗体SP142)とPD-L1 IHC(抗体E1L3N)では、25%を超える臨床検体で発現陽性・陰性の評価に不一致があった (SP142 +/E1L3N + 25.8%, -/- 47.6%, +/- 8.6%, -/+ 18.0%であり、大きな不一致がある) (ASCO2015)。
・    PD-L1 IHC 28-8 pharmDx FDA添付文書:PD-L1 expression as detected by PD-L1 IHC 28-8 pharmdx in non-squamous NSCLC may be associated with enhanced survival from Opdivo (Nivolumab).
・    以下、抗PD-1/PD-L1抗体薬のうち、1剤が承認された場合、2剤が承認された場合、多数の薬剤が承認された場合に分けて、それぞれの状況を想定して、問題の可能性が指摘された。
PD-L1 IHC用生検検体がなくなってしまう場合を想定すると、Front lineでPD-L1の免疫染色を施行しておくほうが安心だが、保険点数がとれない。
検査は検査会社・自病院病理部のいずれで行うべきか、どのキット(抗体クローン)を用いて検査するべきか。
CoDxだから治療薬毎にそれぞれのキットを用いたIHC検査を行うか? すべて一度に行うか?
→ すべてのキットを各病院が揃えることはほぼ困難。検査会社を使うことになるか?
→ 異なる診断基準で似通った染色の評価をすることに戸惑いが…。
それぞれの治療薬を使う前にそれぞれのキットを用いたIHC検査を行うか?
→ 繰り返し生検組織検体(FFPE)を薄切してIHC検査を施行することは微小な生検組織検体を浪費することになる!

総合討論
1)PD-L1 IHCの問題点、課題として、下記の項目が挙げられる。
・    PD-L1 IHCは、抗PD-1/PD-L1抗体薬の効果を規定する要素のひとつではあるが、他の要素(腫瘍浸潤リンパ球、Mutational burden)も効果に関与する。PD-L1 IHCはソフトな効果予測因子であって、EGFR阻害薬におけるEGFR遺伝子変異やALK阻害薬におけるALK融合遺伝子のようなハードな効果予測因子とは異なる。
・    異なる抗体を用いた各IHCの異なるカットオフ値は単に感度の違いによるものとすれば、各IHC間の換算表のようなものができるはずだが、事はそう簡単ではないかもしれない。米国におけるBlueprint project (異なった抗体で同じ検体を染色し比較検討)の結果は注目に値する 換算表でOKかどうかについては知見が得られる。
・    PD-L1 IHCを臨床検査として安定的に定着させるための対応が必要。染色手順のみの標準作業手順書(SOP)が整備されても再現性は高くならないであろう。Preanalytic phase, Postanalytic phaseの各段階の関与も大きい。臨床検査センターや病理医等への技術移管、検査体制の整備、染色評価判定方法トレーニングが必要。
・    診断薬メーカーごとに自動染色機が指定されており、これを複数所持することは一般病院に負担である。
・    PMDA companion Dx working groupでは、
   ▷    特定の品目の審査や相談にかかわらない範囲であれば、アカデミアとの意見交換会を実施することも
     可能であるため、事務局に問い合わせて頂きたい。
   ▷    後発のCoDx開発における既承認のCoDxとの同等性評価に係る考え方は、現状ではガイダンス等で明
     示されていない。本件については、現在AMED研究事業と連携して検討を行っており、今後、同等性
     評価における留意点をまとめ、行政文書として発出することを計画している。
2)混乱なく、抗PD-1/PD-L1抗体薬治療のためのPD-L1 IHCを定着させるためには、学会(肺癌学会、病理学会)、企業(製薬会社、体外診断薬会社)、PMDA、厚労省等の連携が必要であり、本関係者会議において今後さらに意見交換していく。
3)学会(肺癌学会、病理学会)とPMDAの間で意見交換会を開催する。
4)検討事項:学会(肺癌学会、病理学会)が主導して、症例登録のもと各PD-L1 IHCを行い、同等性評価、精度管理、アカデミアからの提言等を行うことが可能かどうか。







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