第2章 肺がんの診断に必要な検査
Q12
ゲノム医療,プレシジョンメディシン,がん遺伝子パネルという言葉をニュースなどで見かけるのですが,私にも関係あるでしょうか

 ゲノムとは,遺伝子をはじめとした遺伝情報全体を意味し,からだを作る設計図にあたります。

 ゲノム医療もしくはプレシジョンメディシンとは,ある特定の遺伝子異常・ゲノム異常(EGFRイージーエフアール遺伝子変異やALKアルク遺伝子転座など)により分類された「がん」にそれぞれに適切な薬剤投与を行う医療を意味します。非小細胞肺がんの治療方針はゲノム医療,プレシジョンメディシンの考え方を用いて判断され,その際に使用される薬剤は,がん細胞のタンパク質や遺伝子を標的として攻撃する分子標的治療薬(Q42参照)が中心となります。そして,その標的を見つける検査として「がん遺伝子パネル検査」があります。がん遺伝子パネル検査はがん細胞の特徴をゲノム解析によって幅広く調べ,がんと関連する多数の遺伝子の状態を確認する検査で,肺がんの診断時に行うものと,標準治療が終了,あるいは終了見込みになった際に行うものがあります。診断時の検査は承認された薬剤の選択のために行われ,後に行われる検査は承認された薬剤のみでなく,確認された遺伝子異常をもとに参加できる可能性のある臨床試験・治験の有無を調べる目的で行われます。しかしながら,遺伝子異常が見つからない,もしくは承認された薬剤が存在しないなどの理由で,後者のがん遺伝子パネル検査を行った方のうち,実際にがん治療に役立つ患者さんは多くありません。小細胞肺がん,胸腺がんなどでもマイクロサテライト不安定性(マイクロサテライトという遺伝子の特定の領域の異常)を調べ,その結果に基づいてペムブロリズマブの治療を行うか検討する目的や,その他の治療の適応を検討するためにがん遺伝子パネル検査を行うこともあります。

 後者のがん遺伝子パネル検査は2019 年に保険承認されましたが,がん遺伝子パネル検査を行うべきか否か,またがん遺伝子パネル検査を行うタイミングなどについては,担当医とよく相談してください。最近は血液でも検査できるようになりました。

 以上より,ゲノム医療,プレシジョンメディシン,がん遺伝子パネル検査は,あなたにも関係のある事項です。

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