第3章 肺がんと診断されたら,まず知って欲しいこと
Q20
治療を受けながら現在の仕事を続けたり,別の職場に就職することはできるでしょうか

 がん治療を経験された方が,診断直後の気持ちを「診断直後は,自分が何に悩んでいるのか,何がわからないのかもわからない状態です。たくさんの“どうすればいいの?”が,実際の優先順位に関係なく走馬灯のように頭の中を流れてしまって,なかなか考えがまとまりませんでした」と振り返ることがあります。今まさに,あなた自身も「仕事はもう続けられないだろう」「お金はどうしよう」とさまざまな心配ごとが頭の中を駆けめぐっている状況かもしれません。

 まず,お伝えしたいのは「がんと診断されても,すぐに仕事を辞めないで」ということです。がんの治療は,がんの部位によって方法も期間も,副作用も異なります。治療を受けることで,どのように生活や仕事に変化が生じるのかについて正しい情報を得てください。そのうえで,休職・復職にあたり必要な手続きを知りたい場合などは,遠慮せず,担当医や看護師,がん相談支援センターをご活用ください。今は,「仕事のことも病院に相談できる」時代です。病院で活動するサポーターも上手に活用しながら仕事と治療の両立を実現してください。

1.診断書が必要になったら

 担当医に診断書の作成を依頼する際には,診断書提出の目的に沿った記載をお願いしましょう。診断書作成を病院事務経由で主治医に依頼する場合は,診断書作成の依頼書などに下記()の要点を添付しておくとよいでしょう。

 また,会社に所定の書式がない場合は,厚生労働省が作成した様式を活用するのもひとつの方法です。

 なお,2018年より,ご本人と事業主・主治医が診断書等を用いて情報共有を行いながら仕事と治療の両立について計画を立てることについて公的医療保険が適用されました。公的医療保険の適用となるのは,事業所に産業医もしくは総括安全衛生管理者,衛生管理者,安全衛生推進者,保健師が所属しており,主治医と連携した場合に限られます。詳細は,がん相談支援センターにお尋ねください。

2.復職に必要な手続きを確認しておきましょう

 復職に必要な手続きは職場ごとに異なります。職場によっては,診断書の提出後に産業医などの産業保健スタッフや上司との面談を設ける場合もありますし,面談を実施しない職場もあるようです。

 まずは,早めに,病気療養中の職員が復職する際の一般的な流れと,提出に必要な書類を確認しておきましょう。とくに診断書の作成は,医療機関により2週間程度の時間を要する場合があります。作成を依頼する際には,担当医(あるいは書類担当の事務)に,いつまでに診断書が必要か期日を伝えることも大切です。

3.働き方の変更を検討している方は

 現在,一部のがん診療連携拠点病院において「長期にわたる治療等が必要な疾病をもつ求職者に対する就職支援事業」が実施されています。具体的には,ハローワークの就職支援ナビゲーターが,がん診療連携拠点病院に定期的(例:2週間に1回)に出張し,就職支援ナビゲーターとがん専門相談員が協働して,患者さんの治療状況をお伺いしつつ,その体調や通院状況に配慮した求人情報の提供や調整を行っています。あわせて,就職活動応募書類の作成や面接の受け方のアドバイスはもちろん,以前とは異なった業種で働くことを希望している方には,その仕事の採用状況(景気動向)や職業訓練の情報をお伝えするなど,就職準備の支援も実施しています。

 なお,この事業は2022 年4 月時点で47都道府県の252 病院等(一部,診療所・サロン)に配置されています。すべての医療機関に配置はされていませんが,設置医療機関においては,その医療機関に通院していない患者さんからの相談にも対応していることが多いようです。上手に活用してください。

  • 参考情報
  • タイトルをクリックするとWEBページへうつります。

厚生労働省ウェブサイト 治療と仕事の両立支援ナビ

職場と担当医との情報共有に用いる診断書の様式など

厚生労働省ウェブサイト 長期にわたる治療等が必要な疾病をもつ求職者に対する就職支援事業

事業実施安定所および連携先拠点病院一覧

国立がん研究センター東病院ウェブサイト 働く世代のあなたに 仕事とがん治療の両立お役立ちノート

がん治療を受けながら治療を受ける際に役立つ情報を掲載

(平成29年度厚生労働科学研究費補助金「働くがん患者の就労継続および職場復帰に資する研究」班作成)

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