第4章 治療の概要 4-2 放射線治療
Q37
放射線療法の方法や選び方について教えてください
1.肺がん治療における一般的な放射線療法

 放射線療法では直線加速器ちょくせんかそくき(リニアック)電子を高速に加速して高エネルギーX線あるいは電子線を照射する,放射線療法のための装置です。から発生する高エネルギーX線が一般的に用いられています。

 Q36で述べたように,治療に先だって行う三次元治療計画では,あらかじめ撮影したCT画像をもとに,放射線治療計画装置で体内の線量分布を計算し,病変や正常組職にあたる線量を確認します。

 また,肺は呼吸とともに大きく動く臓器です。呼吸に伴い腫瘍も大きく移動する場合があります。肺がんの放射線療法では,このような腫瘍の動きにも対応が必要となることがしばしばあります。最近では,治療計画用のCTを撮影する際に腫瘍の移動範囲を観察し,治療計画に反映したり,腫瘍の動きに合わせて狙い撃ちしたりすることも可能となってきました。

 さらに,放射線療法の治療効果を高める方法として,①がん病変に高線量を集中させる(定位放射線治療),②照射期間の短縮により照射中の腫瘍の増殖を抑える(加速過分割照射),③放射線の効果を化学療法などで増強させる(化学放射線療法),などの治療法があり,がん細胞の種類や病変のひろがりによって使い分けています。

2.放射線療法の種類と特徴

 がん病変に高線量を集中させる方法は,コンピュータの性能向上とともに著しく進歩しました。早期の肺がんに対して,原発巣だけを多方向から狙い撃ちする「定位ていい放射ほうしゃせん治療ちりょう(ピンポイント照射)」では,安全に高線量照射を行うことができ,従来の放射線療法に比べて良好な治療成績が得られています。

 なお,定位放射線治療は,通常,高精度直線加速器(リニアック)から出る高エネルギーX線で治療しますが,最近では陽子線や炭素イオン線など良好な線量分布や高い生物学的効果をもつ「粒子線治療」も行われ,早期の肺がんに対して良好な治療成績が報告されています。

 もう少し病状が進んだ非小細胞肺がんでは,リンパ節などへの照射も必要となり照射範囲が広くなることから,定位放射線治療は困難です。このような局所進行肺がんに対しては,病変の形や位置に合わせた「三次元原体照射」が行われています。また,最近では「強度きょうど変調へんちょう放射ほうしゃせん治療ちりょう(IMRT)」も用いられるようになってきました。IMRTでは,照射したい部分の形状に合わせて,より複雑な形の線量分布を作ることができますので,病変の部位やひろがりによっては有用なことがあります。

 近年,特定の照射方法に特化した装置など,さまざまな照射装置が使われるようになってきました。しかし,重要なのは照射装置の選択ではなく,照射方法を選択することです()。

 どのような照射方法が適しているかは,病変の部位やひろがりの程度,患者さんの状態によっても異なりますので,まずは放射線腫瘍医に相談してください。

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