第5章 症状がある場合,転移がある場合の治療
Q52
気分が落ち込んで憂うつになったり,不安で眠れなかったりイライラしたりします。どうすればよいですか

 がん患者さんはさまざまなストレスを感じ,気分が落ち込んで憂うつになったり,不安で眠れなかったりイライラしたりすることがあります。これらは,こころの自然な反応で,あなただけではありませんし,あなたのこころが弱いからでも,恥ずかしいことでもありません。

 からだがつらいとこころがつらくなりますし,こころがつらいとがん治療をがんばろうとするからだにも大きな負担になってしまいます。

1.気持ちが落ち込んでしまったら…

 ひとりで悩んでいないで,家族・友人やスタッフに,ありのままを話してみましょう。聞いてもらうだけで少し楽になったり,話すことでこころの整理がついたりするかもしれません。

 “悪い知らせ”を聞いた後の気持ちの落ち込みは,多くの場合,時間が経つにつれて少しずつ変化し,「つらいけれど,なんとかこれからのことを考えていこう」と,現実の生活に対応できるようになるといわれています。

2.こころの変調が続き,生活に支障が出てしまうようなら…

 こころの変調が続き,食事・睡眠・仕事など日常生活に支障が続くような場合は,専門的なこころのケアが必要になります。

①気分の落ち込み(適応障害・うつ病)

 「適応障害」とは,つらい現実にうまく適応できず,精神的苦痛が強く,日常生活に支障をきたしている状態です。

 「うつ病」とは,適応障害よりもさらに精神的苦痛がひどく,何も手につかないような落ち込みが2週間以上続き,日常生活をおくるのが難しい状態をいいます。脳の中で感情をつかさどる機能が過熱,摩耗まもうし,過労を引き起こしている状態です。「生きている意味がない」などと否定的な感情をもってしまう方もいます。専門家の治療が必要な段階です。

②不眠(睡眠障害)

 「睡眠障害」には,眠りにつけない・眠りが浅い・早く眼が覚めてしまう・眠れた気がせず疲れが回復しないなどの種類があります。快適と感じる睡眠時間やパターンは人それぞれですが,まずは十分な休養をとることがとても大切です。

③そのほかのこころの変調(不安・緊張・イライラ)

 こころの変調はつながりあい影響しあいます。不安で眠れないと,よけいに不安が高まり緊張が増してイライラし,悪循環となります。

3.こころのつらさの治療とケア

 こころのつらさの治療やケアは,精神科医・心療内科医,心理士,専門の看護師などが担当します。「精神科に相談するほどではない」「今は大丈夫」などと無理にがんばりすぎず,専門家に相談してみましょう。

①薬物療法

 睡眠導入薬(よい眠りを助ける),抗不安薬(不安や緊張をほぐす),抗うつ薬(気分の落ち込み・意欲の低下・緊張や焦燥感などのバランスを整える)などの薬剤を調整します。

②非薬物療法

 カウンセリング,リラクセーション(呼吸法・筋弛緩法きんしかんほう)などがあります。

4.生活の工夫

 ストレッチや散歩など軽くからだを動かすこと,深呼吸,ぬるめのお風呂や足浴,好きな音楽や軽い読書,好きな香り(アロマセラピー),温かい飲み物など,自分にあったリラックス法を工夫してみましょう。

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