はじめに
はじめに

 日本肺癌学会では2019年より,肺がんに関する患者さんとご家族向けの「肺がんガイドブック」を2年ごとに出版しておりますが、この度、急速な肺がん治療の進歩にあわせてインターネットで閲覧できる「肺がんガイドブック」の2度目の改訂を行いました。日本肺癌学会は「肺がんおよびこれに関する領域の研究の進歩ならびに知識の普及をはかり,もって患者さんをはじめ広く人類の健康と福祉の増進に寄与することを目的」として活動しています。この活動のひとつとして医師向けの「肺癌診療ガイドライン」を定期的に改訂,発行してきました。一方,患者さん,市民向けの情報は限られており,日本肺癌学会は,認定NPO 法人西日本がん研究機構(WJOG)が平成19年から出版してきた患者さん向けガイドブック「よくわかる肺がんQ&A」を公認するかたちでこれを推奨してまいりました。このガイドブックは平成26年までの7年間に医学の進歩に合わせた改訂が3回重ねてられてきました。それから5年が経過し,この間の肺がんの診断法,治療法の進歩は著しく,これに追いつくためには新たな内容への改訂が求められていました。そこで2019年,日本肺癌学会では患者さんに最適な肺がん医療を受けていただくために,医師向けの「肺癌診療ガイドライン」に準じた患者さん,家族向けのガイドブックを作成しました。患者さん向けのガイドブックは,読んでいただく患者さんの疑問や不安にこたえるものでなければなりません。そこで,WJOGがこの20年弱の間に開催した,市民公開講座と、日本肺癌学会が毎年全国各地で開催している市民公開講座で寄せられた患者さんからの質問を集約し,専門家集団「日本肺癌学会」の学術的見解をもとに解説したものが望ましいと考え,WJOG版「よくわかる肺がんQ&A」に,日本肺癌学会が新しい時代の変化に伴う改良・改善を加えて本書を作成しました。しかし、肺がんの治療は近年の医学の進歩に伴い急速に発展しており、最新の情報を皆さまにお届けするために、2年ごとの書籍版に加え、インターネットで閲覧できるWEB版を作成し、毎年最新の肺がん情報をお届けするようにしました。

 今回の改訂にあたっては,以下の点に配慮しました。

  • ①新たに標準治療となった免疫チェックポイント阻害薬と抗がん薬の併用療法を追加
  • ②ゲノム医療の進歩によって,他のがんに先駆け肺がんで開発が進んでいるがん分子マーカーと新規に使えるようになった分子標的治療薬について追加
  • ③肺がんの治療にとどまらず,肺がんの治療を受けながら仕事や生活を安心して続けられる生活・就労支援、コロナ禍での対応、家族の役割の情報を追加
  • ④企画段階から編集・発行まで,肺がん患者さんにも参加していただくこと
  • ⑤肺がんの解説に加え,日本肺癌学会がかかわる悪性胸膜中皮腫,胸腺腫・胸腺がんの解説を追加・更新

 2021改訂の書籍版は,どなたでも手軽に入手できるよう,医学書専門店のほか,全国の書店店頭での注文購入,インターネットでの購入が可能です。また,この2022年WEB版は日本肺癌学会のホームページから無料で閲覧できるように配慮しました。

 日本肺癌学会は,研究のみならず社会への啓発活動として市民公開講座,肺がん患者会との協力,メディア・社会に対してがん医療の最新情報提供を行ってきました。玉石混交の医療情報があふれ,情報の選択が大切になるなか,本書をご利用いただき適切な肺がん医療情報を参考にしていただけましたら幸甚です。

令和4年12 月

特定非営利活動法人日本肺癌学会

理事長 弦間 昭彦

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