第6章 非小細胞肺がんの治療 6-1.外科治療(手術)が中心となる治療
Q57
手術のみの場合の治療について教えてください

 外科治療(手術)前の評価〔臨床病期りんしょうびょうき(ステージ)〕で,Ⅰ期から一部のⅢ期までの患者さんは手術が中心となります。ただし術前の画像診断には限界がありますので,手術の前にⅠA期といわれた患者さんでも手術をしてみたら,リンパ節転移(2 cm以下のがんでも5人に1人程度には認められます),肺内への転移,胸膜きょうまくへの播種はしゅ胸腔内きょうくうないにがんがひろがった状態)などが発見される場合があります。

 切除した肺やリンパ節などは,すべて顕微鏡けんびきょうで詳細に観察され,がんのひろがりを確認して術後の病期(病理病期びょうりびょうき)が最終確定されます。手術後の治療の必要性は,その病理病期に基づいて検討されます。

 わが国では,がんの大きさが2 cmより大きい病理病期ⅠA3,ⅠB,ⅡA期の肺腺はいせんがんにユーエフティを手術後2年間内服することによって,手術単独治療に比べて5年生存率が約5%改善することが報告されています。一方,がんの大きさが2 cm未満,すなわち病理病期ⅠA(ⅠA1,ⅠA2)期の患者さんだけが手術単独治療でよいことになります。この病期の患者さんにとっては,抗がん剤(細胞障害性抗がん薬)による術後の再発を抑える効果よりも,むしろ薬剤の副作用による害が前面に出ると考えられます。扁平上皮へんぺいじょうひがんの場合は,術後のユーエフティの効果は腺がんより弱く,したがって勧められる程度も弱いため,同じ病期でも手術単独治療が行われることが多くなります。

 ただし,病理病期がⅠA期の患者さんでも,5年後までには15%前後の方が亡くなられます。その中には,肺がんの再発による方が含まれます。再発を早期に発見しそれに対して治療することも大切ですから,手術後には定期検査が必要です。担当医の指示にしたがって受診しましょう。

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