第6章 非小細胞肺がんの治療 6-2.放射線療法が中心となる治療
Q63
放射線療法と薬物療法の併用を勧められました。具体的なやり方を教えてください

 手術が適応とならない臨床病期(ステージ)Ⅲ期の非小細胞肺がんの患者さんに対しては,化学放射線療法かがくほうしゃせんりょうほうが選択されます。放射線療法で局所(原発巣げんぱつそうと転移した周囲のリンパ節)をしっかりと攻撃し,かつ血管やリンパ管の中に浮遊するがん細胞やきわめて小さくて画像上見えない転移病変を抗がん剤(細胞障害性抗がん薬)で攻撃することで,遠隔転移を防ぐことを目指します。

 放射線療法と併用する化学療法として,シスプラチン+ビノレルビン療法,シスプラチン+S-1エスワン療法,シスプラチン+ドセタキセル療法,カルボプラチン+パクリタキセル療法などが行われます。シスプラチンとそのほかの抗がん剤を組み合わせる化学療法は4週ごとに2サイクル行われます。カルボプラチン+パクリタキセル療法は週に1回,全部で6回行われます。抗がん剤の副作用で好中球こうちゅうきゅう血小板けっしょうばんの数がある一定以上低下している場合は,化学療法を延期したり休むことがあります。

 放射線療法は化学療法と同時に開始し,通常1日に1回,全部で30回(6週間)行います。放射線をあてる皮膚に炎症が起こった場合は軟膏なんこうを塗って対処します。放射線療法により食道の粘膜に炎症が起こり,食べ物や飲み物を飲み込んだときの痛みなどが起こり始めたら,粘膜保護剤ねんまくほございや痛み止めを内服して症状をやわらげます。放射線療法期間中に感染による発熱や食事がとれないほどの食道炎(放射線食道炎ほうしゃせんしょくどうえん)が起こった場合は,放射線療法を休みます。

 放射線を広い範囲にあてすぎると,重い肺炎(放射線肺臓炎ほうしゃせんはいぞうえん)を起こす可能性が高く,安全にあてられる範囲には限度があります。リンパ節転移が広い範囲にひろがって,安全に放射線療法を行える限度を超えている場合は,化学療法を先に行い,がんが縮小してから放射線療法を追加する場合もあります。放射線療法の追加が困難であれば,Ⅳ期の患者さんと同様の薬物療法(抗がん剤,免疫チェックポイント阻害薬,分子標的治療薬による治療)が行われます。

 Ⅲ期の非小細胞肺がんの患者さんに対する化学放射線療法後に,免疫チェックポイント阻害薬のひとつであるデュルバルマブを追加すると,生存期間が延長することが臨床試験で示され,2018年にデュルバルマブが承認されました。化学放射線療法終了後,CT検査で治療効果を確認します。がんの進行がなく,放射線をあてた範囲を越えるような肺炎(放射線肺臓炎)が起こっていなければ,化学放射線療法終了後6週以内を目安にデュルバルマブによる治療(地固じがた療法りょうほう)を開始し,2週間ごと,1年間行うことが勧められています(参照)。

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