第10章 生活上のアドバイス
Q87
統合医療,補完代替療法について教えてください(サプリメント,アロマテラピー,漢方など)

 通常のがん診療で行われる医療に加えて,患者さんのこころとからだ,精神(たましい)を総合的に考えて補完代替療法ほかんだいたいりょうほうや伝統医学などを組み合わせて行う医療のことを「統合医療とうごういりょう」といいます。進行がんや進行非小細胞肺がんの患者さんを対象に行われた,通常治療単独と通常治療に緩和ケアを併用した医療の効果の違いを比べた結果,緩和ケアを併用したほうがQOL(生活の質)が改善し,生存期間が延長しました。緩和ケアを併用した医療では,患者さんひとりひとりの痛みやそのほかの症状,病気の理解度を確認したうえでの症状緩和や病状の説明,意思決定の支援が行われており,これらが良い効果をもたらしたと考えられます。

 統合医療,補完代替療法といわれるものとしては,ハーブ,ビタミン,ミネラル,プロバイオティックス(発酵食品など),漢方などの天然産物,瞑想めいそう,ヨガ,気功,太極拳,鍼灸しんきゅう,マッサージ,運動療法などさまざまなものが行われています。このうち漢方は抗がん剤(細胞障害性抗がん薬)の副作用対策として有効なものがあり,わが国では保険診療の範囲内で併用することが可能です。そのほか,ヨガにより身体機能が改善したり,アロマオイルによって不安や吐き気が改善したなどと報告されています。

 統合医療や補完代替療法についての情報はインターネットでも入手することができます。信頼できる情報をもとに興味をもった療法について,どのような目的でどのような効果を期待して使うのかなど,冷静によく考えてみる必要があります。

 とくに注意すべきことは,保険診療外で行われるものは,詐欺的なものがあることです。内容をよく確認して,まずは疑ってかかるようにしましょう。通常診療外の方法で「腫瘍が消えた」などとうたっていたり,高額なものには特に注意しましょう。

 担当医とよく相談することも大切です。なかには,がん治療の効果を弱めてしまうものや副作用を強くしてしまうのもがあります。興味や関心があるとき,わからないときは,必ず担当医に相談しましょう。

 補完代替療法には,治療の効果としてがんの進行を遅らせたり,生存期間を延長したり,治療として確立しているものはありません。統合医療や補完代替療法について担当医や看護師に相談しましょう。そのうえで,費用やこころとからだへの負担を含めて,継続するか検討するようにしましょう。

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