一般演題(ポスター)6
細胞診・胸腔洗浄細胞診
座長:佐藤 雅美(鹿児島大学大学院医歯学総合研究科 呼吸器外科学分野)
P-36.肺癌診断における10%高張性食塩水15分間吸入誘発喀痰法の意義
西垣  豊1・藤田 結花1・藤内  智1・山本 泰司1・武田 昭範1・山崎 泰宏1・藤兼 俊明1・萩原 弘一2
国立病院機構道北病院 呼吸器科1;埼玉医科大学 呼吸器内科2

【背景】喀痰細胞診は,唯一の非侵襲的な検査であり,患者の負担も軽微である.しかし,日常臨床では進行癌であっても喀痰が認められない患者は少なくない.近年,気管支喘息患者において,10%高張食塩水を吸入することにより喀痰の誘発率が高くなり,末梢気道炎症の評価に有用であると報告されている.【目的】肺癌患者における10%高張食塩水吸入誘発喀痰法の有用性の前向き評価.【対象】胸部異常陰影を指摘されて当院を受診した,肺癌疑いの患者.【方法】各被験者は登録後3日間通常の喀痰細胞診を行い,その後,3日間10%高張食塩水の吸入を行い,喀痰を採取した.細胞診が陽性であった場合,EGFR遺伝子変異検査を施行した.検査終了後,誘発法に対するアンケートを行った.【結果】2009年4月から12月の間に77例の肺癌疑い患者に前向き試験を施行した.平均年齢69歳,男性50例,女性27例であった.最終的に肺癌と診断されたのは70例,その他,転移性肺腫瘍が1例,良性疾患が6例であった.肺癌患者では,70例中,通常痰は38例に,誘発痰は66例に認められた.採取喀痰数は通常痰90個,一人当たり1.18個,誘発痰161個,一人当たり2.27個で,誘発によって得られた喀痰は通常痰に比較して有意に多かった(p<0.0001).検体あたりの肺癌細胞のクラスターの数は,通常痰では40.8個,誘発痰では60.2個であった.通常痰22例(31.4%),誘発痰39例(55.7%)で細胞診が陽性であった(p=0.0524).通常痰が認められなかった32例のうち,23例が誘発喀痰により肺癌と診断された.【結論】10%高張食塩水吸入誘発喀痰法は肺癌の診断において有用かつ効果的な方法である.
第51回日本肺癌学会総会 2010年11月開催

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