一般演題(口演)29
転移性肺腫瘍2
座長:川村 雅文(帝京大学 外科)
O-140.頭皮血管肉腫肺転移に伴う難治性気胸,血胸の経験
新井川弘道1・鎌田 悟史2・野田 雅史1・佐藤 伸之2・遠藤 千顕1・岡田 克典1・近藤  丘1
東北大学加齢医学研究所 呼吸器外科学分野1;青森県立中央病院 呼吸器科2

 頭皮血管肉腫は稀な疾患であるが高率に肺転移を生じ,血胸や難治性気胸を引き起こすことが知られている.今回,同疾患に伴う血胸,気胸の加療に難渋した症例を経験したので検討を加えた.(症例1)78歳女性.2004年10月左側頭部の血管肉腫に対して化学療法を施行するも効果無く,腫瘍切除術を施行.その後IL-2療法を継続したが2005年8月より左肺上葉に転移を疑う結節陰影が出現.11月になり呼吸苦が増悪し,左大量血胸の診断にて緊急開胸術を施行した.左上葉の結節が責任病変と判断し,左肺部分切除術及び血腫除去術を施行.組織診は血管肉腫肺転移であった.胸膜癒着術を施行しドレーンを抜去したが胆癌状態が悪化し,術後40日目に死亡された.(症例2)87歳女性.2009年頭皮血管肉腫に対し切除術,IL-2療法を施行するも局所再発を来たし追加切除,電子線照射を施行した.2011年2月右気胸を発症し,胸腔ドレナージ後に胸膜癒着療法を施行するも再発.5月17日胸腔鏡下手術を施行した.責任病変と考えられるブラを切除したが,病理組織診は血管肉腫肺転移の診断であった.第2病日ドレーンを抜去のうえ自宅退院とするも,経過観察中に右大量胸水が出現し再ドレナージを開始.難治性気胸も再発し,ドレーン抜去できぬまま全身が著しく衰弱し,術後約2ヶ月で死亡された.(考察)血管肉腫に伴う気胸,血胸は難治性であり,治療として手術や胸膜癒着術の報告があるものの良好な結果は得られていない.理由として肺転移巣の進行の早さがあげられるが,本症例の如く胸腔内イベント出現時すでに胆癌状態であり,比較的早期に再発を来す可能性が高い事を念頭に,手術適応はより慎重にすべきと考える.
第53回日本肺癌学会総会 2012年11月開催

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