一般演題(ポスター)65
化学療法3
座長:大泉 聡史(北海道大学病院 内科I)
P-383.pemetrexed+CDDP療法を実施したDubin-Johnson症候群合併悪性胸膜中皮腫の1例(PEMの薬物動態の解析)
加藤 達雄1・中島  誠2・浅野 幸市1・大西 涼子1・小林 瑞穂1・鱸  稔隆1・安田 成雄1・佐野 公泰1
国立病院機構長良医療センター 呼吸器内科1;鹿児島市医師会病院 薬剤部2

【背景】Dubin-Johnson症候群(DJS)は,薬物トランスポーターであるATP-binding cassette-C2(ABCC2)遺伝子の変異による体質性黄疸である.DJSにおける薬物動態に関しては,methotrexateの胆汁への薬物排泄遅延が報告されているが,pemetrexed(PEM)の薬物動態の報告はない.【症例】70歳代男性,20歳代にDJSと診断されており,ABCC2遺伝子解析(九州大学検査部)にてエクソン18ではミスセンス変異(2441 C>T,Arg 768 Trp),エクソン27ではナンセンス変異(3925-3926 ins A,STOP1546>1270)が判明した.左側胸膜肥厚と左胸壁浸潤を認め,局所麻酔下胸壁腫瘤生検の施行により,T4N2M0,StageIVの上皮型悪性胸膜中皮腫と診断された.本人に説明同意の上,化学療法としてPEM+CDDP療法を選択した.1コース目はPEM単剤を標準量の1/3,2コース目は2/3量,3コース目は標準量で投与した.4コース目はPEM標準量にCDDPを標準量の1/2で併用し,5,6コース目はCDDPを標準量に増量した.Grade2の悪心,食欲不振を認めたものの骨髄抑制は軽度であった.治療効果は部分奏功であった.化学療法実施時にPEMの血中濃度測定を行った.PEM 500mg/m2投与時の半減期は1.18hr,AUCは114.8μg/mL・hrであり,PEMの明らかな排泄遅延は認められなかった.【結語】DJSにおいてPEMの明らかな排泄遅延は認められず,PEMの尿中への排泄にABCC2は必須ではないことが示唆された.DJSに合併した悪性腫瘍に対してPEM+CDDP療法は実施可能なレジメであると思われる.今後,各種ABCトランスポーターの遺伝子変異・多型と薬物動態の関係について知見の集積が必要と思われる.
第54回日本肺癌学会総会 2013年11月開催

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