一般演題(ポスター)87
画像診断5
座長:芦澤 和人(長崎大学大学院医歯薬学総合研究科 臨床腫瘍学)
P-517.嗄声を主訴としFDG-PET/CTで悪性腫瘍が疑われた線維性縦隔炎の1例
門磨 聖子1・尾関 雄一1・川端俊太郎1・小森 和幸1・橋本 博史1・前原 正明1・緒方  衝2・河合 俊明2
防衛医大 呼吸器外科1;臨床検査医学2

 嗄声を契機に発見され,PET/CTで悪性リンパ腫等の悪性疾患が疑われ,胸腔鏡下縦隔生検で線維性縦隔炎と診断された症例を経験したので報告する.症例は60歳の男性.2013年1月に嗄声が出現したため近医耳鼻科を受診,左反回神経麻痺の診断で当院を紹介された.胸部CTで大動脈弓部周囲に腫瘤性病変を認めたためFDG-PET/CTを施行.同部位と腹部大動脈周囲,右肋骨(2カ所)に集積を認め,悪性リンパ腫の疑いと診断された.腫瘍マーカーはCEA,SLX,CA19-9,CYFRA,NSE,proGRPは陰性であり,IL2Rも432U/mlと正常範囲内であった.確定診断目的で胸腔鏡下に縦隔生検を施行し,リンパ球,形質細胞浸潤を伴う線維化病変を認め,IgG4陽性細胞が認められたため,IgG4関連疾患が強く疑われた.血清IgG4は正常範囲内であった.診断後はPSL 30mg/dayによる治療を施行中であるが自覚症状は改善傾向にある.IgG4関連疾患は自己免疫性膵炎患者で血清IgG4が高値を示し,病変部へのIgG4陽性形質細胞浸潤を認めたという報告を端緒として本邦で提唱された新しい疾患概念である.最近ではミクリッツ病,下垂体炎,間質性腎炎,後腹膜線維症,肺炎症性偽腫瘍などでもIgG4陽性形質細胞が証明されており,IgG4関連疾患は全身性慢性炎症性疾患の一つとして認識されつつある.線維性縦隔炎は縦隔線維症や硬化性縦隔炎と同義と考えられ,近年では本疾患においてもIgG4の関連示す報告が散見されている.本症例では血清IgG4は正常範囲であったため診断基準は満たさないものの,IgG4関連線維性縦隔炎が強く疑われる症例であると考えられた.縦隔に非特異的な腫瘤性病変を認めた場合には本疾患も念頭に置いて診療に当たるべきであると考えられた.
第54回日本肺癌学会総会 2013年11月開催

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