Poster74
気管支鏡インターベンション
座長:()
P-441.上大静脈症候群に対し血管内ステント留置が有効だった小細胞肺癌の一例
矢島 剛洋1・神宮 大輔1・生方  智1・渡辺  洋1・佐澤 由郎2
坂総合病院呼吸器内科1;同呼吸器外科2

 症例は66歳男性.右上葉限局型小細胞肺癌(cT1aN2M0 cStageIIIA)にて,2011年9月より同時化学放射線療法(シスプラチン,エトポシド,胸部放射線照射45Gy)が行われ,その後の評価はgood PRで経過していた.2012年9月より胸部CTで縦隔リンパ節が再増大し,4次治療まで施行したが2013年12月に更なる抗癌剤治療は希望しないことを確認した.2014年1月から顔面浮腫や失神,両視力低下が出現し,右上葉の原発巣や縦隔リンパ節の再増大と上大静脈の圧排,狭小化を認め,上大静脈症候群と診断した.眼科医の診察で視力低下の原因は不明であり,CTで脳転移や頸静脈血栓症などは認められなかった.胸部放射線治療後で再照射はできず,すでに奏効を期待できる抗癌剤はないため,保険外診療であることを説明した上で同年2月に血管内ステントを留置した.その後は速やかに症状が軽快し,視力も回復した.ステント留置2か月後の現時点で症状の再燃は見られていない.上大静脈症候群は顔面や上肢の浮腫,咳嗽,呼吸困難などの症状を呈し,患者のQOLを低下させる可能性が高い.上大静脈症候群の治療は原疾患の治療と国内では放射線治療が第一選択であるが,本症例のように放射線治療や化学療法が困難な症例や,遠隔転移を有する症例では治療選択に難渋することが少なくない.そのような症例に対して血管内ステント留置を行うことで早期に症状を改善することが可能であり,Performance Statusの回復により再治療を検討することができたという報告も存在する.しかし,上大静脈症候群に対する血管内ステント留置術は保険適応が認められておらず,あまり行われていないのが現状である.今後,上大静脈症候群に対する血管内治療の保険適応拡大が期待される.
第55回日本肺癌学会総会 2014年11月開催

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