シンポジウム7
合併症を有する肺癌に対する外科的治療戦略
座長:池田 徳彦1, 吉野 一郎2(東京医科大学呼吸器・甲状腺外科学分野1, 千葉大学大学院医学研究院呼吸器病態外科学2
S7-3.特発性肺線維症合併肺癌に対する周術期ピルフェニドン療法
岩田 剛和・吉田 成利・大島 拓美・海寳 大輔・畑   敦・稲毛 輝長・山本 高義・尹  貴正・田中 教久・森本 淳一・藤原 大樹・長門  芳・中島 崇裕・鈴木 秀海・吉野 一郎
千葉大学大学院医学研究院呼吸器病態外科学

[背景]日本呼吸器外科学会の調査結果では特発性肺線維症(IPF)合併肺癌に対する手術後30日以内の急性増悪(AE)発生率は10.3%で,リスク因子7項目による増悪予測スコアも提唱された.一方,術後AE抑制効果が証明された薬剤はない.昨年本学会で発表した周術期pirfenidone療法(PPT)についての第II相試験(WJOG6711L)の結果では,プロトコル治療完遂例の30日以内AE発生率が2.8%で効果が期待されるが,対照群のない単腕試験であり,スコアによる背景因子評価も行われていない.[目的]単施設での治療経験から,PPTの術後AE発生率への影響について検討した.[方法]IPF合併肺癌に対するPPT施行31症例(P群)とhistorical control 19症例(C群)を,増悪予測スコアを含め後方視的に比較した.[結果]ステロイド使用例はなかった.P群対C群では,年齢(68±2 vs. 69±2才),男/女比(28/3 vs. 18/1),%FVC(95±3 vs. 103±4%),KL-6(900±136 vs. 676±184U/ml),術式(区域切除以上/部分切除 23/8 vs. 18/1)などの背景に有意差がなく,増悪予測スコアも10.5±0.4 vs. 11.2±0.5点で有意差はなかった.術後30/90日以内のAE発生率はP群0/3.2%,C群10.5/21.0%であった(p=0.07/0.04).全症例でAE発生有無との関連性についてロジスティック回帰を行うと,単変量解析でPPT(30/90日以内ともp<0.05)と予測スコア(90日以内のみp<0.05)は関連を示し,90日以内増悪についての多変量解析で両者は独立のリスク因子であった.[考察]C群の30日以内増悪率はスコア11点の予測増悪率(10.7%)と一致したが,同等のリスク背景であるP群では0%であった.90日までを含めた両群比較およびロジスティック回帰の結果からもPPTはAEリスクを軽減すると考えられた.
第56回日本肺癌学会総会 2015年11月開催

特定非営利活動法人日本肺癌学会 The Japan Lung Cancer Society
© 日本肺癌学会 All rights reserved.