一般演題(ビデオ)7
サルベージ手術・反復手術
座長:遠藤 俊輔(自治医科大学呼吸器外科)
V7-5.前方アプローチにて切除した第1肋骨腫瘍
泉  信博・水口真二郎・月岡 卓馬・岡田 諭志・山本 寛子・戸田 道仁・原 幹太朗・伊藤 龍一・西山 典利
大阪市立大学呼吸器外科

【はじめに】第1肋骨腫瘍の切除のアプローチはsuperior sulcus tumorの場合と同一の原則で選択されるものと思われる.今回鎖骨下動静脈に接する第1肋骨腫瘍に対して前方アプローチにて切除した症例を経験したので報告する.【症例】52歳,女性.気管支炎の際にX-pで発見.CT画像にて径8cm大の腫瘍が右第1肋骨と連続し,また腫瘍周囲に骨皮質の菲薄化を認めたため第1肋骨原発腫瘍と診断した.腫瘍は右胸腔へ突出し鎖骨下動静脈と接していたが,浸潤はないと考えた.軟骨肉腫の疑いにて切除の方針となった.【手術】甲状腺位,分離肺換気下に右頚部襟状切開および前胸部逆L字切開を置いた.腫瘍は第2肋骨と強固に固着していたため,第2肋間のTrap-door開胸を施行した.胸腔内は全面癒着であった.腫瘍は右肺上葉へ浸潤していた.腫瘍は胸膜頂部で可動性に乏しかったため鎖骨下動静脈の剥離に困難を極め,鎖骨下静脈の剥離時に出血した.後方アプローチへ変更を考慮するも,十分な視野展開が困難であると考えた.このため腫瘍の一部を胸壁側へ残存する様に腫瘍を離断した.また浸潤部肺を合併切除し,腫瘍の大部分を摘出した.これらの操作で鎖骨下動脈から腫瘍へ直接流入する栄養血管と鎖骨下静脈へ流入する複数の環流静脈を確認できた.損傷した血管はこの環流静脈であった.鎖骨下動静脈を温存しつつ,前斜角筋・後斜角筋を切離し,右第1,2肋骨を切除した.手術時間:8時間52分,出血量1420ml.【結語】右第1肋骨腫瘍を前方アプローチにて切除した.腫瘍の可動性が乏しかったため腫瘍を離断せざるをえなかったが,これにより鎖骨下動静脈の処理が可能となった.
第57回日本肺癌学会学術集会 2016年12月開催

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