一般演題(ポスター)6
希少症例2
座長:竹之山光広(国立病院機構九州がんセンター呼吸器腫瘍科)
P6-7.横隔膜に発生した筋肉内血管腫の1手術例
*山本 恭通・星野 大葵・小阪 信二
島根県立中央病院

 症例は66歳女性.148cm,49Kg.喫煙歴30本×45年.飲酒歴焼酎1合毎日×25年.幼少期両眼球破裂で全盲.高血圧治療中.急な心窩部痛で救命救急外来受診し膵炎と診断され内科的治療を開始した.腹部CT上,心嚢と肝表面に接するが浸潤のない筋肉と同程度の濃度で不均一に造影される35×31×20mmの結節を前縦隔に認めた.MRIでCT撮影時に比し扁平に変形し極めて柔らかな60×28×13mmの境界明瞭で脂肪を含む腫瘤を認めた.FDG-PETで腫瘤にSUV2.0の集積を認め高分化脂肪肉腫,骨髄脂肪腫,血管筋脂肪腫などが疑われた.sIL-2R抗体が554 U/mlとわずか高値を示す以外腫瘍マーカーやAchR抗体値に異常なかった.腫瘤と切除断端の距離が十分取れるように左季肋部肋骨弓尾側で肋骨弓と並行に10cm皮膚切開し腹直筋,横隔膜脚肋骨付着部を切断し胸腔内より左横隔膜を観察すると5×5×2cm大の扁平で光沢のある黄色結節を認めた.腫瘤皮膜と横隔膜筋束の鈍的剥離は容易で細い索状の構造を含め筋束とは自然に剥がれ一塊で摘出できた.病理診断は骨格筋内に細動静脈を伴い脂肪組織を豊富に含む筋肉内血管腫で細胞異型や核分裂像は認めず悪性所見は見られなかった.HMB45染色陰性で血管筋脂肪腫は否定的であった.術後3年4ヶ月現在再発なく生存中である.1996年の血管奇形国際会議ISSVA分類によると血管腫は血管奇形と異なり内皮細胞の急速な増殖期の後緩徐に退縮し線維脂肪化し瘢痕として残存するとされ本例に豊富な脂肪組織を認めた理由と考えられた.文献検索した限り横隔膜に発症した筋肉内血管腫の報告はなく極めて希な症例を経験したので報告する.
第58回日本肺癌学会学術集会 2017年10月開催

特定非営利活動法人日本肺癌学会 The Japan Lung Cancer Society
© 日本肺癌学会 All rights reserved.