一般演題(ポスター)38
症例報告(多形癌)1
座長:高橋  豊(神戸市立医療センター中央市民病院呼吸器外科)
P38-2.副腎転移のある肺多形癌の症例に対して外科的切除を行うことで長期生存を得た一例
*調枝 治樹・松原  慧・渡邉 元嗣・片岡 和彦
岩国医療センター胸部外科

【背景】肺多形癌は肺悪性腫瘍の中でも稀な組織型と考えられており,その希少さと治療抵抗性から確立された治療法がなく,予後不良な疾患と考えられている.今回,われわれは副腎出血を契機に発見された肺多形癌および副腎転移に対して外科的切除を行うことで長期生存を得ることに成功した症例を経験した.【症例】66歳,男性.主訴:右季肋部痛.現病歴:2012年9月に約2週間続く右季肋部痛の突然の増悪のため近医受診.CTにて左肺上葉腫瘤と右副腎腫瘤内出血を指摘され当院紹介となった.肺病変はCTガイド下生検で肺多形癌と診断された.副腎病変はMIBGシンチ,血液・尿検査で非機能性であり,PETでFDGの高集積を認めたため,肺多形癌の転移が疑われた.本症例はStageIVの肺癌(c-T2aN0M1b)であったが,有効な化学療法が確立されていない多形癌であり,右副腎以外に遠隔転移を認めなかったため,両病変ともに外科的切除を行う方針となった.右副腎摘出術と左肺上葉+S6区域切除を行う予定であったが,右副腎摘出術を行うのに難渋したため,初回は右副腎摘出術のみで終了した.摘出標本からは組織診断で肺多形癌の副腎転移と診断された.二期的に左肺上葉+S6区域切除術を施行し,最終的な病理診断はp-T2bN0M1b StageIVであった.術後に補助化学療法としてシスプラチン+TS1を行ったが本人希望で2クールで中止し,以後UFTを2年内服した.現在まで明かな再発病変を認めることなく経過し,5年の生存を得た.生命予後が乏しいStagIVの肺多形癌の症例に対して外科的切除によって長期生存を得られた症例を経験したため若干の文献的考察を加えて報告する.
第59回日本肺癌学会学術集会 2018年11月開催

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