ワークショップ11
悪性胸膜中皮腫:臨床と研究の現状・将来
座長:長谷川誠紀1, 青江 啓介2(兵庫医科大学呼吸器外科1, 山口宇部医療センター腫瘍内科2
WS11-1.悪性胸膜中皮腫における循環腫瘍細胞:新規CTCチップの開発と臨床応用
*米田 和恵1・桑田 泰治1・近石 泰弘1・森  將鷹1・金山 雅俊1・平良 彰浩1・名部 裕介1・篠原 伸二1・竹中  賢1・岡  壮一1・平井 文子1・田嶋 裕子1・今西 直子1・黒田 耕志1・市来 嘉伸1・大永  崇2・田中 文啓1
産業医科大学医学部第2外科学1;富山県工業技術センター中央研究所2

【背景】CellSearchは唯一臨床的に使用される循環腫瘍細胞(CTC)検出装置であるが,血液からのCTC分離は細胞表面抗原EpCAM(上皮細胞接着因子)に依存するため,特に中皮腫のような非上皮性腫瘍では十分な検出感度が得られなかった(Yoneda K. Ann Surg Oncol 2014).そのため,任意の抗体を自由に結合できる新しいマイクロ流体装置(CTC-chip)を用いた基礎検討を進め,抗Podoplanin抗体により血液中の中皮腫細胞株を高感度に捕捉検出できる系を構築した(Chikaishi Y. Oncol Rep 2017).【方法】中皮腫患者末梢血中のCTC数をCTC-chipとCellSearchの2種類の方法で定量し比較した.CTC-chipで検出されたCTC数と臨床背景との関連を検討した.【結果】CTC-chipはCellSearchと比較して圧倒的にCTCの検出数が多かった(p<0.001).CTC-chipでは,25例の中皮腫患者のうち16例(64%)で血液1mL中に1個以上のCTCが検出された.ROC曲線解析によりCTC-chipはIIIB~IV期の進行(あるいは切除不能)例を予測するのに有用であった(AUC-ROC 0.851,P=0.003).感度,特異度はカットオフ値1(/mL)の場合,それぞれ92.9%,72.7%で,カットオフ値2(/mL)の場合それぞれ61.3%,90.0%であった.全生存はCTC数が多い群(≧2/mL)で,少ない群(0-1/mL)より有意に予後不良であった.【結論】新規CTC-chipは悪性胸膜中皮腫におけるCTCの検出に優れ,腫瘍の進行や予後予測への有用性が期待される.
第59回日本肺癌学会学術集会 2018年11月開催

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