ポスター掲示11
ロボット支援下手術
P11-05.ロボット支援下に摘出したシェーグレン症候群合併胸腺MALTリンパ腫の1例
*山口 大輝・渡部 晶之・猪俣  頌・峯  勇人・尾崎 有紀・武藤 哲史・岡部 直行・松村 勇輝・鈴木 弘行
福島県立医科大学呼吸器外科学講座

 症例は71歳の女性.40歳時にシェーグレン症候群と診断され,セビメリン塩酸塩水和物を内服中.検診で胸部異常陰影を指摘され,精査加療目的に当科へ紹介となった.造影CTで前縦隔に8cm大の一部造影効果を伴う多房性充実性腫瘍を認めた.抗アセチルコリンレセプター抗体および抗MuSK抗体の上昇は認めず,可溶性インターロイキン2受容体の上昇も認めなかった.胸腺腫を疑い手術の方針とした.剣状突起下アプローチによるロボット支援下胸腺胸腺腫摘出術を行った.手術時間は3時間36分,コンソール時間は2時間16分,出血量は5mlであった.病理所見では,小型で単球様B細胞の増殖を示し,Lymphoepithelial lesionを認めた.免疫染色では,CD20およびCD79aが陽性で,CD10およびbcl6が陰性であり胸腺MALT型リンパ腫の診断であった.術後に軽度の炎症所見と胸水を認めたが経過は良好であり,術後2日目に胸腔ドレーンを抜去し,術後12日目に退院となった.術後にMALTリンパ腫に対する追加治療は行っておらず,術後4か月無再発経過中である.Mucosa Associated Lymphoid Tissue(MALT)リンパ腫はリンパ節外に発生する低悪性度Bリンパ腫である.発生臓器は胃,肺,甲状腺,唾液腺などに多く,胸腺に発生することは稀である.胸腺MALTリンパ腫は,中年のアジア人女性に多く,自己免疫性疾患,特にシェーグレン症候群に合併することが報告されている.MALTリンパ腫は手術切除によってコントロールされ予後良好とされているが,再発例の報告もあり慎重な経過観察が必要となる.シェーグレン症候群を合併した胸腺MALTリンパ腫の1例を経験したので,若干の文献的考察を加え報告する.
第63回日本肺癌学会学術集会 2022年12月開催

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