シンポジウム14
免疫チェックポイント阻害剤治療のバイオマーカー
座長:冨樫 庸介1, 各務  博2(岡山大学学術研究院医歯薬学域腫瘍微小環境学分野1, 埼玉医科大学国際医療センター呼吸器内科2
SY14-4.腫瘍の微小環境に着目したバイオマーカー研究
*鈴木 弘行・猪俣  頌・山口  光・峯  勇人・高木 玄教・尾崎 有紀・渡部 晶之・井上 卓哉・福原 光朗・塩   豊・山浦  匠・武藤 哲史・岡部 直行・松村 勇輝・長谷川剛生・大杉  純・星野 実加・樋口 光徳
福島県立医科大学呼吸器外科

 免疫チェックポイント阻害薬(ICI)の適応が拡大し,特に周術期療法への応用が進められている現状では,これまで以上に効果予測バイオマーカー研究の重要性が増している.バイオマーカーを明らかにすることは,腫瘍免疫のメカニズムを明らかにすることでもあり,新たな治療法にも繋がるものである.バイオマーカーとして末梢血中の種々の因子を抽出することは簡便かつ臨床的に有用と考えられるが,ICIの効果を決定する要因を明らかにするためには抗腫瘍免疫応答が繰り広げられる腫瘍局所の状況を理解することは避けて通れないと考えている.これらの視点から我々は外科切除検体を用いて,以下の検討を行ってきた.
1.腫瘍内或いは近傍に存在するリンパ球の多寡およびリンパ球の集族像であるTertiary Lymphoid Structure(TLS)の解析とその臨床的意義およびICIの効果との関連
2.TLS内の細胞サブセットの解析
3.腫瘍の微小環境と全身の免疫状態との関連
4.腫瘍内および末梢血中のT細胞レセプターのレパトア解析
5.ICIの耐性メカニズムの検討
 我々の検討では,腫瘍内の免疫環境は全身の免疫状態にある程度反映されていると考えているが,T細胞のレパトア解析結果からは腫瘍特異的リンパ球が腫瘍内と末梢血中の双方で確認できる症例は限られており,周術期療法を行ううえで注意が必要である.いずれにせよ周術期のICIの使用においては,切除検体における免疫学的微小環境の理解は重要であり,末梢血のT細胞のキャラクターの解析を併用することで,より強力なバイオマーカーの開発に繋がるものと期待している.
 本報告では,これまで我々が行ってきた上記の腫瘍局所に着目したバイオマーカー研究を紹介するとともに,腫瘍局所の解析から得られたデータを踏まえた今後の展開について議論したいと考えている.
第63回日本肺癌学会学術集会 2022年12月開催

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