一般演題(口演)28
トランスレーショナル研究・バイオマーカー 1
座長:栗林 康造1, 黄  政龍2(兵庫医科大学呼吸器・血液内科学1, 医学研究所北野病院呼吸器外科2
O28-4.ALK陽性肺癌細胞株を用いたdrug-tolerant persisterの同定とFGFR阻害剤との併用による耐性克服
*古垣  耕1・吉本 拓矢2・浅川  誉2
中外製薬(株)プロダクトリサーチ部1;中外製薬(株)バイオメトリクス部2

 ALK融合遺伝子陽性非小細胞肺癌(ALK肺癌)に対して,ALKチロシンキナーゼ阻害薬のアレクチニブは1次治療薬として承認されているが,アレクチニブに対する耐性がん細胞の出現により腫瘍が再増悪することも明らかとなっている.本研究ではALK肺癌細胞株を用いてアレクチニブ耐性を引き起こさない新規併用療法の探索を行った.まず,ALK肺癌細胞株NCI-H2228細胞を用いてアレクチニブ曝露13日後に drug-tolerant persister(DTP)細胞を作製した.DTP細胞は,一過的にアレクチニブに耐性化している細胞である.そこで,DTP細胞を用いた化合物スクリーニングからFibroblast growth factor receptor(FGFR)阻害剤がDTP細胞特異的に細胞増殖を抑制することを見出した.さらに,DTP細胞はアレクチニブ曝露によりFGF2を介したFGFR1シグナルの活性化が認められるとともに,FGF2遺伝子またはFGFR1遺伝子をノックアウトした細胞では,親株に比べてアレクチニブによる細胞増殖抑制効果が増強された.臨床試験のレトロスペクティブな解析において,FGF2とFGFR1のmRNA発現が高いALK肺癌患者では,ALKチロシンキナーゼ阻害薬のlogハザード比が増加する傾向が認められた.また,FGF2とFGFR1発現陽性のALK肺癌細胞株では,アレクチニブとFGFR1阻害剤との併用効果がin vitroおよびin vivoで観察された.従って,FGF2およびFGFR1発現陽性のALK肺癌細胞は,FGF2を介してFGFR1バイパスシグナルを活性化して耐性化が誘導されることが示唆され,FGF2およびFGFR1発現陽性のALK肺癌に対して,アレクチニブとFGFR阻害剤の併用療法は耐性を引き起こさない有用な治療法となる可能性が示された.
第64回日本肺癌学会学術集会 2023年11月開催

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