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COVID-19パンデミックにおける肺癌診療:Expert opinion

国内の新型コロナウイルス感染症をめぐる状況は、刻々と変化しております。肺癌診療に関わる皆さまも大変な日々を送られていると思います。

この度、下記、COVID-19パンデミックにおける肺癌診療:Expert opinionをup dateいたしましたので、ご参照ください。

COVID-19パンデミックにおける肺癌診療:Expert opinion

 

肺癌学会COVID-19対策ステートメント作成ワーキンググループ(敬称略・順不同)

 

日本肺癌学会理事長 弦間昭彦(日本医科大学 学長)

委員長 滝口裕一(千葉大学医学部附属病院 腫瘍内科)

委員 光冨徹哉(近畿大学病院 呼吸器外科)

委員 池田徳彦(東京医科大学病院 呼吸器甲状腺外科)

委員 唐澤克之(がん・感染症センター東京都立駒込病院 放射線診療科)

委員 清家正博(日本医科大学付属病院 呼吸器内科)

委員 堀田勝幸(岡山大学病院 新医療研究開発センター臨床研究部)

委員 堀之内秀仁(国立がん研究センター中央病院 呼吸器内科)

委員 先山奈緒美(国立がん研究センター中央病院 薬剤部)

委員 上月稔幸(国立病院機構 四国がんセンター 臨床研究センター)

     委員 三浦 理(新潟県立がんセンター新潟病院 内科)

           委員 古屋直樹(聖マリアンナ医科大学 呼吸器内科)

 

更新履歴

2021年2月14日 第2.0版

2020年7月29日 第1.3版

2020年7月23日 第1.2版

2020年7月11日 第1.1版

2020年7月4日 第1.0版

 

PDF版

目次

1 本ステートメントの背景と目的(滝口裕一).. 4

2 . 総論(清家正博).. 6

2-1 COVID-19の疫学... 6

2-2 肺癌とCOVID-19. 6

2-3 肺癌患者の抱えるリスク... 7

2-4 医療体制のCOVID-19シフトによる癌治療への影響... 7

2-5 癌治療モダリティが有するCOVID-19に関連するリスクについて... 8

3 . 本ステートメントで用いる指標・評価について.. 9

3-1 感染拡大状況に応じた対策強度... 9

3-2 肺癌治療の優先度... 9

3-3 患者の安全確保または感染蔓延予防のための措置について... 10

4 肺癌の診断.. 11

4-1 検診... 11

4-2 気管支鏡検査(池田徳彦)... 11

5 非小細胞肺癌の治療.. 13

5-1 外科治療(光冨徹哉)... 13

5-2 周術期治療(術前術後化学療法・放射線治療)(光冨徹哉)... 14

5-3 I-II期非小細胞肺癌の放射線療法(唐澤克之)... 16

5-4 III期非小細胞肺癌・肺尖部胸壁浸潤癌(堀之内秀仁)... 17

5-5 IV期非小細胞肺癌、ドライバー遺伝子変異/転座陽性(三浦理)... 18

5-6 IV期非小細胞肺癌、ドライバー遺伝子変異/転座陰性、PD-L1陽性細胞50%以上(三浦理) 19

5-7 IV期非小細胞肺癌、ドライバー遺伝子変異/転座陰性、PD-L1陽性細胞50%未満(三浦理) 21

5-8 IV期非小細胞肺癌、ドライバー遺伝子変異/転座陰性の二次治療以降(三浦理)... 22

6 小細胞肺癌の治療(堀之内秀仁).. 24

6-1 限局型小細胞肺癌(LD-SCLC)... 24

6-2 進展型小細胞肺癌(ED-SCLC)... 25

6-3 予防的全脳照射(PCI)... 26

6-4 再発小細胞肺癌... 27

7 転移など各病態に対する治療(上月稔幸、堀田勝幸).. 29

7-1 骨転移、脳転移、胸部病変に対する緩和的放射線治療... 29

7-2 癌性胸膜炎、癌性心膜炎の治療... 30

8 緩和ケア(上月稔幸、堀田勝幸).. 31

9 悪性胸膜中皮腫(堀之内秀仁).. 32

10 胸腺上皮性腫瘍(堀之内秀仁).. 33

11 COVID-19感染患者に対する肺癌治療の考え方について(上月稔幸、堀田勝幸).. 34

11-1 基本的な考え方... 34

11-2 手術療法... 35

11-3 放射線療法... 35

11-4 細胞傷害性抗癌薬治療... 36

11-5 分子標的治療薬... 37

11-6 免疫チェックポイント阻害薬... 37

11-7 緩和療法... 38

11-8 COVID-19治療薬で起こりうる薬剤相互作用について(先山奈緒美)... 38

12 肺癌患者におけるCOVID-19ワクチン接種について(古屋直樹).. 41

12-1 基本的な考え方... 41

12-2 免疫チェックポイント阻害薬投与中におけるワクチン接種... 42

12-3 細胞傷害性抗癌剤投与中におけるワクチン接種... 42

12-4 分子標的薬投与中におけるワクチン接種... 42

13 文献一覧.. 44

14 作成者の利益相反.. 49

 

 本ステートメントの背景と目的(滝口裕一

 

人類が新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に遭遇して以来、その感染拡大の勢いは衰える気配すら感じることはできず1年以上にわたって全世界における公衆衛生上の最大の問題であり続け、全人類の日常活動を大きく損ねている。諸外国に比べて当初発生数が少なかった日本においても2021年2月初旬の時点において全国での急速な感染拡大が懸念されている状況である。その結果、日本の医療のあり方を大きく変貌させ、COVID-19以外の日常診療をも大きく損ないかねない状況にある。

COVID-19による癌医療への影響は、免疫抑制的な状況にある癌患者の易感染性、および感染拡大による医療圧迫による癌診療制限の2つが重要である。前者について、特に肺癌患者では喫煙歴、病気や治療による免疫系の修飾、低肺機能などを感染および重症化の危険因子として考慮する必要がある。

一方後者の医療圧迫による癌治療制限の可能性は、地域・施設の状況により大きく異なるとはいえ、第3波といわれる感染急拡大を迎えている現在、若干の程度の差こそあれほぼ全国共通の重大な懸念事項となっている。これまでCOVID-19診療に重点的なシフトをした医療施設においても癌医療は優先的に扱われてきたため、癌医療への影響は限定的であった。しかし、これら施設ではさらなるCOVID-19専用の一般病床、ICU病床を確保することが求められ、一般診療への影響はまさに現実のものとなっており癌治療もその例外ではない。

日本肺癌学会では、現在では第1波と呼ばれる混乱期を過ぎつつも新たな感染拡大(第2波)の兆しが見えた2020年7月に、この第2波を迎え撃つための肺癌診療指針を示すことの重要性に鑑み、肺癌医療を担う医療従事者および病院管理者を利用者として想定し本ステートメントを作成した。COVID-19感染サーベイランス結果とその地域における施設の役割に応じて施設毎にCOVID-19診療シフトを計画し、同時に癌医療への影響分を計画することが求められる時期に、その一参考資料となることを目的として公表された。作成にあたっては日本肺癌学会の関連委員会メンバーが、肺癌、胸膜中皮腫、胸腺腫瘍の診断、手術、放射線、薬物療法などについて、診療ガイドラインのエビデンスを背景にCOVID-19と癌診療に関する内外の文献を参照しつつ作成し、COVID-19による特殊な診療態勢に応用ができることを意図したものであった。幸い多くのセミナーや講演会でも紹介され、メディアからの取材を受けるなど、大いに関心をもって迎えられた。一方、COVID-19についての現在の知識、エビデンスは不十分であり、リアルタイムの情報刷新が重要なことは論を待たない。さらに肺癌診療ガイドラインの改訂版(2020年版)が2020年11月にWEB公表され2021年1月に書籍としても刊行されるに至った。また、COVID-19のワクチンは日本でもまもなく接種が開始される。

このような現状に対応し本ステートメントの改訂版を公表する次第である。肺癌診療ガイドラインの改訂版(2020年版)における変更点を反映した他、ワクチンについての記述を新たに設けた。初版同様、エビデンスの確かでないことについても踏み込んだ提案をしている。本ステートメントの妥当性については是非とも皆様のご批判を仰ぎたい。忌憚のないご意見、ご批判を事務局までお寄せいただければ幸いである。より良い指針へと充実させ、肺癌患者・家族、そしてそのケアを担う方々の幸福に貢献したいと願うものである。

 

. 総論(清家正博

2-1 COVID-19の疫学

COVID-19罹患患者に占める癌患者の割合は、中国からの報告では1%(18/1590例, 中国一般人口比0.29%)、Desaiらによる欧米のデータを含めたメタアナリシスにおいては、2-3%と報告されている1,2

WHO-中国合同ミッション報告書(55924例)によると、癌患者のCOVID-19による死亡率は7.6%であり、心血管疾患(13.2%)や慢性呼吸器疾患(8.0%)などとともに、全体致死率(3.8%)および併存疾患なし(1.4%)に比べて高いことが報告されている3。米国/カナダ/スペインの125施設からの癌患者 928例の研究では、COVID-19診断後30日以内の死亡率は13%で、癌の進行に比例して死亡率が上昇すると報告されている4。ニューヨークからの報告では、癌患者のCOVID-19による死亡率は、11%(37/334例)、28%(61/218例)、12%(51/423例)と報告されている5-7。これらのことからCOVID-19に罹患した癌患者は重症化および死亡リスクが高い傾向があると考えられる。

 

2-2 肺癌とCOVID-19

高齢者や喫煙者が多く治療歴を有する肺癌患者は、COVID-19の感染リスクが危惧されているが、肺癌患者の罹患率の高さを示す明確なデータは存在しない。英国の前向き観察研究において、2020年のCOVID-19陽性癌患者(1,044例)と2017年の癌登録患者(282,878例)との比較研究がなされている。COVID-19流行時においては血液腫瘍 (悪性リンパ腫、白血病など) の割合が増加した一方、肺癌患者の割合は2017年13.7%に比べて、2020年10.6%と有意に低いことが報告されている(p=0.0033)8

肺癌患者における重症化/死亡リスクに関しては、武漢のCOVID-19陽性癌患者(105例)の報告では、肺癌は血液腫瘍に次いで重症化リスクが高い癌種であることが報告されている(重篤化率50%、死亡率18%)9。肺癌を対象とした観察研究においては、世界21カ国からのCOVID-19罹患胸部腫瘍患者(400例)のレジストリ研究TERAVOLT(Thoracic cancERs international coVid 19 cOLlaboraTion)での死亡率は35.5%であり、COVID-19関連死亡が多数(79.4%)であったと報告されている10,11。一方で米国のCOVID-19陽性肺癌患者(102例)においては死亡率25%であったが、パンデミック時の死亡率は少なかった(11%)と報告されている12。これらの研究を含むメタアナリシス(3,019例)においては、COVID-19合併肺癌患者(378例)の死亡率は32.9%であり、肺癌以外の固形癌患者(1,124例)の17.2%に比べて高いことが認められている13。本邦においても、日本呼吸器学会のCOVID-19診療実態(1,460例)において、全体死亡率5.6% (82/1460例)に比べ、肺癌患者の死亡率は38.5% (5/13例)と間質性肺炎 31.8% (7/22例)とともに高いことが示されている14。これらの研究の多くは海外における後方視観察研究やサブグループ解析であり、日本でのデータも十分でないが、肺癌は、重症化リスクが高い癌種の1つであると考えられ、COVID-19 に対する感染予防の徹底が非常に重要である。患者にはCOVID-19に関する正しい情報を周知させ、手指衛生の徹底とマスク装着、人との接触の制限とともに、必要に応じて病院受診機会の見直しなどの最大限の感染リスク低減策が求められる。

 

2-3 肺癌患者の抱えるリスク

COVID-19に罹患した癌患者における重症化/死亡リスク因子に関する報告では、喫煙は30日以内の死亡リスク因子と報告されている4。米国のCOVID-19陽性肺癌患者(102例)と陰性肺癌患者(5,166例)との比較検討においても、喫煙および慢性閉塞性肺疾患 (COPD) が肺癌患者の重症リスク因子であることが示されている12。喫煙は重症化に関わる慢性閉塞性肺疾患(COPD)発生の一因であるとともに、SARS-CoV-2受容体であるACE2遺伝子発現を上昇させ、重症化をもたらすことがその機序として推察されている15

肺癌を中心とする胸部腫瘍を対象としたTERAVOLT研究においては、高齢、PS不良、ステロイド治療に加え、3か月前の化学療法施行歴が高い死亡リスクと関連していたが、分子標的治療薬や免疫チェックポイント阻害薬治療は死亡リスクを高めなかったことが報告されている10。全癌腫対象のメタアナリシス(3,019例)においては、手術、放射線治療、化学療法、分子標的治療薬や免疫チェックポイント阻害薬治療によるCOVID-19の死亡リスク上昇は認められなかったが7,9,13、重症化リスクが高い癌種であると考えられる肺癌患者においては、治療必要性/優先度と地域、施設による独自の環境を鑑みた綿密な治療計画の策定が求められる。

 

2-4 医療体制のCOVID-19シフトによる癌治療への影響

COVID-19蔓延期・医療逼迫期においては、肺癌患者の通院や治療によるリスクおよびCOVID-19診療シフトによる医療体制の制限などから、気管支鏡検査、手術、放射線、薬物療法の実施抑制に加え、優先度や緊急性の高くない検診、口腔ケア、リハビリなどは延期または縮小せざるを得ない状況に陥ることになる。海外からは2020年春のCOVID-19パンデミック時の癌診療への影響に関する調査結果が複数報告されている。英国においては、ピーク時の2020年4月には32%の新規抗癌薬治療開始患者の減少(1,417例/月)が認められたと報告されている16。カナダでは、肺癌患者(275例)の57%が肺癌治療計画の変更を行い、免疫チェックポイント阻害薬投与間隔延長などの薬物療法の用量や日程変更などの対応を取っていた17。日本においては、COVID-19蔓延期に肺癌治療の多くは制限されることはなかったようであるが、肺癌検診においては中止の対応が一定期間なされた。このような肺癌診療の制限に関する長期的な予後への影響については継続的な評価が必要であるが、英国でのロックダウンによる肺癌の診断遅延による5年後の肺癌死者は4.5-5.3%増加するという試算結果が得られている18。今後も少なからずCOVID-19の肺癌治療への影響は避けられないが、蔓延期・医療逼迫期においても病状悪化が懸念される症例においての最低限の肺癌診療は確実に守る必要があり、状況を鑑みて最大限に診療を広げる努力も必要である。治療の優先度、地域の感染状況や当該病院の実情を鑑みた手術・放射線・薬物療法・緩和ケアの治療計画に加えて、十分な感染対策を講じた上での検診、口腔ケアやリハビリの実施、術前胸部CT、PCR検査の実施に加え、咽頭麻酔の工夫や十分なPPE(Personal Protective Equipment)下での気管支鏡検査、病床数減少時の医療連携による癌治療の継続などができる医療体制を整備していく必要がある。

 

2-5 癌治療モダリティが有するCOVID-19に関連するリスクについて

肺癌患者は、高齢、喫煙、複数の併存疾患、既存肺疾患(COPD、間質性肺炎など)など多くのリスク因子を有する。手術、放射線療法、薬物療法(殺細胞性抗癌薬、分子標的薬、免疫チェックポイント阻害薬)の治療モダリティによるCOVID-19への影響に関する確実なエビデンスは存在しないが、複数のリスク因子を有する患者のリスクは特に高いことを考慮すべきである。治療の必要性/優先度と感染の蔓延状況/当該病院の実情などのバランスで考えることが必要と考えられ、本ステートメントでは「3. 本ステートメントで用いる指標・評価について」で述べる指標により、「4. 各論」において、それぞれの肺癌治療モダリティの適応についてのエキスパートオピニオンをまとめた。

 

. 本ステートメントで用いる指標・評価について

3-1 感染拡大状況に応じた対策強度

 

・COVID-19の流行状態は地域で発生する患者数のみならず、その地域の医療リソース、当該病院の人的要員・医療機材の確保状況などにも依存するため、明確な線引きは困難である。

 

・本ステートメントでは、感染拡大状況と当該施設の状況をもとに以下の3つの段階(感染散発期/感染蔓延期/医療逼迫期)に大別し、それぞれの段階において優先されるべき治療や対応を示すこととした。
・この対策強度に関する判断は学会によりなされるものではなく、当該病院がその周囲の状況を鑑みて判断されるものである。

 

第一段階

感染散発期

  • 市中ではCOVID-19患者の散発的な発生が認められ、当該病院には確診例または疑似症例が断続的、または少数入院している。
  • 病院としてCOVID-19専用の病棟を確保する必要がないと判断される。または予防的に確保がされている状況。
  • 緊急事態宣言が発令されていない地域

第二段階

感染蔓延期

  • 市中ではCOVID-19患者の発生が継続的に認められ、当該病院としても確診例または疑似症例が継続的に入院している状態。
  • COVID-19患者の対応のため当該病院において専用の病棟の確保が必要な状態と判断される。
  • 緊急事態宣言が発令されている地域、またはそれに準ずると判断される地域

第三段階

医療逼迫期

  • 市中ではCOVID-19患者の発生が継続的に認められ、当該病院としても確診例または疑似症例の受け入れが必須の状態。
  • COVID-19患者の対応のための専用の病棟での対応では不十分となり、通常の癌診療を制限せざるを得ないと判断される状態。
  • 緊急事態宣言、かつ特定警戒地域の指定を受けた地域、またはそれに準ずると判断される地域。

3-2 肺癌治療の優先度

 

・本ステートメントでは、肺癌診療ガイドラインで示されている肺癌治療について、ガイドラインにおける推奨と別に、治療の優先度をHigh/Medium/Lowに分類した。

・この優先度は上に示す感染拡大状況の段階によって変化すると考えられ、通常時で優先度がHighの治療であっても感染拡大の第三段階ではMediumまたはLowになり得る。
各論においてはそれぞれの優先度と感染拡大状況の段階に応じてそれぞれの治療の優先度をHigh/Medium/Lowを分類することとした。

優先度

肺癌に対し通常時における一般的な治療優先度

High

多くの症例において推奨される治療

・臨床的に不安定で、治療介入がない場合に重篤な状態に陥る可能性がある患者への治療介入

・根治率の向上、全生存期間の延長、およびQOLの改善に寄与する可能性が高い治療介入

Medium

担当医が適切と思われる場合に提案される治療

・患者の状態は比較的安定しているが、6週間以上の治療の延期が治療経過に悪影響を与える可能性がある治療介入

・全生存期間の延長効果やQOLの改善に寄与する可能性があるものの、患者の状態が悪いまたは有害事象のリスクが高いなどの理由でリスクベネフィットバランスに問題のある治療介入

Low

担当医は患者との相談の上で実施を検討しても良いが、感染拡大状況次第では実施の留保を考慮すべき治療

・患者の状態は安定しており、COVID-19の蔓延状態中は治療介入を延期しても大きな問題にならない治療介入

・全生存期間の延長効果やQOLの改善に寄与する可能性が明らかではなく、リスクベネフィットバランスが悪い治療介入

 

3-3 患者の安全確保または感染蔓延予防のための措置について

・当該地域においてCOVID-19感染者が発生している状況においては、その感染拡大状況に応じて、癌治療の安全性を高める措置を検討し、感染蔓延予防のため病院受診機会を減らす工夫が検討されるべきである。また、本来なされるべき標準治療から多少の逸脱があっても、安全性を考慮した治療に変更するなどの対応も必要となる。

・本ステートメントでは感染拡大状況に応じ積極的な支持療法の介入や治療の留保について、提案、検討、推奨しない、の三段階で記載した。
・これら積極的な支持療法の介入や治療の留保に関してのエビデンスはほとんどなく、経験則とエキスパートオピニオンに基づくものであるため、あくまで個々の症例、地域の感染状況や当該病院を取り巻く環境を加味し、患者と相談の上で実施されるべきである。

 

 肺癌の診断

4-1 検診

本項については肺癌学会「肺がん検診委員会ステートメント」参照

 

 

4-2 気管支鏡検査(池田徳彦

基本的な考え方

気管支鏡検査はエアロゾルを発生させる医療行為であり飛沫感染のリスクが他の患者、医療従事者にも及ぶことを認識する必要がある。検査に際し、感染症を念頭においた十分な問診とともに、地域の感染状況や施設の検査プロトコルに則って検査施行の可否を決定する。安全のため検査前にPCR検査を行うことが考慮されるが、施設によって実施状況は異なるものと考える。発熱などの症状がある場合は、胸部CT所見の確認と新型コロナウイルスPCRが陰性であることを確認の上、2週間程度待って、症状の改善を確認してから実施する。

咳嗽はエアロゾル感染の原因になるので咽頭麻酔は最小限にして、十分な鎮静のもとで検査を行う。ネブライザーはエアロゾル発生の原因になるので使用しない19。

症状を有する中枢気道狭窄や大量喀血など生命を脅かす可能性が高い場合は、たとえCOVID-19患者であっても緊急の検査が必要となる20。

肺癌を強く疑う肺腫瘤は気管支鏡の優先的な適応となる。特に縦隔リンパ節転移が強く疑われる場合は原発巣の確定診断とともに、病期診断を行う必要がある。なお、EBUSよりEUSの方が、エアロゾル発生のリスクが低いと考えられるため、リンパ節に対する穿刺方法は検討の余地がある19。

臨床病期IV期が疑われる場合は、組織型、ゲノム解析、PD-L1陽性率を診断するため気管支鏡検査は必須となる21。しかし感染のために医療が逼迫している状況では通常の癌診療が行うことが困難なため、医療供給体制を加味した総合的な判断が必要となる。

肺末梢の結節に対しては経皮的針生検の方が気管支鏡よりも感染の可能性が少ないため考慮に値する。感染が拡大している状況下、肺癌が強く疑われる肺結節に対し、手術を先行し術中組織診断を行うことも現実的な方法のひとつである。

COVID-19感染者もしくは感染が疑われる患者に対して検査を行う場合は、N95マスクおよび高度なPPE(プラスチックガウン、手術用滅菌ガウン、シューズカバー、フェイスシールド、アイシールド)を使用する。無症候性の病原体保有者でも感染を起こすため、症状が無い患者に対する検査も完全な装備あるいは院内プロトコールに準じた感染予防を行う22。

 

 

感染拡大状況

主たる対象と気管支鏡検査の優先度

 

GL2020

推奨

第一段階

第二段階

第三段階

症状を有する中枢気道狭窄

大量の喀血

NA

High

High

High

悪性を疑う肺腫瘤

NA

High

Medium

Low

悪性疾患の転移を疑う肺門または縦隔リンパ節腫大

NA

High

High

Medium

Ⅳ期肺癌疑い

NA

High

High

High

早期・高分化腺癌を疑う肺結節

NA

Medium

Low

Low

 

患者の安全確保または感染蔓延予防のための措置

個人防護具の着用

NA

提案

提案

提案

N95マスクの着用

NA

検討

提案

提案

 非小細胞肺癌の治療

5-1 外科治療(光冨徹哉

基本的な考え方

一般に肺癌患者には喫煙者が多く、また間質性肺炎や肺気腫を併存している患者が多いため、他の癌の手術に比べてリスクは高いと考えられている。

また、COVID-19潜伏期にある症例に対する手術を行うことを未然に回避するため、COVID-19の蔓延度と手術の必要性のバランスを考慮し、手術適応を検討することが重要である。

感染蔓延状況に応じて、手術適応は変化しうる。「外科的処置によってのみ救命可能である患者」は、第三段階においても手術の可能性を検討すべきであり、逆に「悪性度の低い癌」、「代替治療(例えば定位放射線治療)が存在し、手術と比較してその治癒への期待度がおおきく変わりないと思われる場合」、「N2以上のリンパ節転移を伴っており手術を行っても治癒への期待度が高くない場合」、などの症例では、延期や他の治療モダリティへの変更を考慮する。

以下に各ガイドラインを参考に感染拡大状況に応じて手術適応を検討するための具体例について記載した。

第三段階であっても手術を検討すべき症例

  • 気道が脅かされ窒息リスクがある
  • 腫瘍に伴う敗血症
  • 致死的になり得る外科手術の合併症(出血、気道の縫合不全など)

第二段階であっても手術を検討すべき症例

  • 腫瘍関連の感染症
  • 血胸、膿胸、感染したメッシュなど

第一段階において優先度の高い症例

  • 充実主体(>50%の腫瘍、>2cm腫瘍であるがリンパ節転移陰性。腫瘍倍加時間 <400
  • リンパ節転移陽性(切除可能なN1/N2で治療前または導入治療終了後)
  • 治療方針決定のためのステージングのための小手術(縦隔鏡、胸膜播種診断のための胸腔鏡)
  • 臨床試験に組み入れられた患者のプロトコル治療としての手術
  • 肺癌関連の膿瘍、膿胸、心タンポナーデに対する手術

第一段階において優先度が中程度の症例

  • T1N0あるいは2cm以下の腫瘍
  • 腫瘍の体積(part-solidの充実部)> 500 mm3
  • 腫瘍倍加時間 <400
  • 新たにsolid成分が出現した腫瘍

第一段階において優先度の低い症例

  • GGA主体の結節
  • 緩慢な組織型(カルチノイドなど)
  • 増大が緩慢な腫瘍(倍加時間>600日)
  • ネオアジュバント治療によって手術の延期が可能な場合(4-4-2参照)
  • 定位放射線治療が治療選択肢として十分成り立つ場合
  • 非侵襲的方法でも代替可能な場合のステージング目的の小手術

参照:American College of Surgeons(ACS)23, Thoracic Surgery Outcomes Research Network24, European Society of Medical Oncology(ESMO)25American Society for Clinical Oncology(ASCO)26, International Association for Study of Lung Cancer(IASLC) 27, UpToDate28

 

 

 

感染拡大状況

主たる対象と治療の優先度

 

GL2020

推奨

第一段階

第二段階

第三段階

第三段階であっても手術を検討すべき症例

NA

High

High

High

第二段階であっても手術を検討すべき症例

NA

High

High

Low

第一段階において優先度の高い症例

NA

High

Medium

Low

第一段階において優先度が中程度の症例

NA

Medium

Low

Low

第一段階において優先度の低い症例

NA

Low

Low

Low

 

患者の安全確保または感染蔓延予防のための措置

術前のPCR検査などのCOVID-19スクリーニング

NA

検討

提案

提案

 

5-2 周術期治療(術前術後化学療法・放射線治療)(光冨徹哉

基本的な考え方

術後病期IA3-IB期に対するUFT内服治療は腺癌においては5年生存割合において6%の改善(82%→88%, HR 0.62)が見込めるため肺癌診療ガイドライン2019年版では1Aで推奨されている29。非腺癌サブグループでは対象症例が少ないこともありHR 0.93とそのbenefitは少なく、推奨も2Cに留まっている。いずれの治療も有害事象リスクは少ないが、生存期間への上乗せ効果も限定的であり、感染蔓延・医療逼迫状態においての治療開始は慎重に検討すべきである。

プラチナベースの術後補助化学療法(シスプラチン+ビノレルビンなど)はII期、III期の術後予後の改善に寄与することが示されており、肺癌診療ガイドライン2019年版においてもGrade 1Aで推奨されている。一般にII期よりもIII期においてその寄与の度合いは大きい。

通常、術後6-12週後に術後補助化学療法を開始することが勧められているが、後方視的検討において、術後補助化学療法を8週以内に開始することと、8-18週後に開始することでの死亡率に違いを認めなかったとの報告もあることから、COVID-19蔓延状況を考慮して、開始を延期することを検討しても良い30。

75才の患者(術後化学療法の臨床試験には75才以上の患者は含まれていないことが多く、シスプラチンベースの治療の安全性は確立していない)や、リンパ節転移のない症例、合併症を有する患者などでは術後化学療法を回避することも検討する。

I-III期非小細胞肺癌症例に対する術前化学療法は、外科治療単独と比較して全生存期間を延長する事がメタアナリシスで示されており31、そのベネフィットは標準治療である術後補助化学療法と同等と考えられる。感染蔓延・医療逼迫状態における外科治療を回避するため、手術の延期の手段としての術前化学療法を検討してもよい。

肺葉切除可能臨床病期IIIA(N2)に対しては、術前化学放射線療法後の手術が肺癌診療ガイドライン2019年版ではGrade 2Cで提案されている。感染蔓延・医療逼迫状態における外科治療を避けるため、術前化学放射線療法を実施して外科手術時期を遅らせることを検討してもよい。

術後の経過観察においては、切除した時の肺癌の進行度、自覚症状の有無、術後の経過年数などに基づく再発リスクを勘案して、患者と相談の上でCOVID-19蔓延状況を考慮したうえで、受診間隔を延長することも考慮する。

 

 

 

感染拡大状況

主たる対象と治療の優先度

 

GL2020

推奨

第一段階

第二段階

第三段階

IA3-IB期に対する術後UFT

1A(腺癌)

2C(非腺癌)

Medium

Low

Low

病理病期II-III期に対するプラチナベースの術後補助化学療法

1A

Medium

Low

Low

手術の延期の手段としての術前化学療法

2C

Medium

High

High

手術の延期の手段としての術前化学放射線療法

2C(IIIA/N2)

Medium

High

High

 

患者の安全確保または感染蔓延予防のための措置

肺癌術後の定期経過観察の間隔延長

NA

検討

提案

提案

 

5-3 I-II期非小細胞肺癌の放射線療法(唐澤克之)

基本的な考え方32,33

I-II期の非小細胞肺癌の放射線療法は根治を目指す治療であり、その優先度は高い。第二段階であっても治癒を目指す治療のintensityを減らすことは推奨されない。しかし、第三段階においては医療資源の確保という観点からやむなく分割回数を減らす寡分割照射法を患者と検討することは選択肢となり得る。

I期非小細胞肺癌に対する定位放射線治療(SBRT)は、比較的低侵襲性で治療期間も短いことから優先度は高い。腫瘍の増大速度や腫瘍の所見(腫瘍サイズ、すりガラス濃度)などを勘案して、延期が可能である場合は治療の延期を検討してもよい。また手術可能例、縮小手術可能例に対するSBRTについても患者を含めた専門家集団の中での検討対象になる。

II期非小細胞肺癌においては放射線単独療法と比較して化学療法を追加した化学放射線療法の有意な生存期間延長が報告されているが、化学療法の併用については、次項(4-2-4 III期非小細胞肺癌・肺尖部胸壁浸潤癌)の取り扱いに準じる。

発熱や呼吸器症状を伴う肺癌患者においては、COVID-19陽性の可能性も考慮し、適切な感染防御策を講じる必要がある。放射線単独療法においても、発熱、咳嗽、呼吸困難などの放射線肺臓炎の症状を来すことがある。胸部への放射線治療がCOVID-19肺炎の増悪因子になり得るかどうかは明らかではないが、少なくとも放射線肺臓炎とCOVID-19肺炎が並存すると症状悪化の可能性があり、放射線治療中および放射線治療後の肺癌患者に対する感染対策と放射線肺臓炎発症時の対処は十分に行うべきである。

 

 

 

感染拡大状況

主たる対象と治療の優先度

 

GL2020

推奨

第一段階

第二段階

第三段階

手術不能のI-II期非小細胞肺癌に対する根治的放射線療法

1C

High

High

Medium

切除可能のI-II期非小細胞肺癌に対する根治的放射線療法(手術拒否)

1C

High

High

Medium

切除可能のI-II期非小細胞肺癌に対する根治的放射線療法(肺葉以上切除不能)

2C

Medium

Medium

Low

I期非小細胞肺癌における根治的放射線療法(高精度放射線治療)

1B

High

High

Medium

 

患者の安全確保または感染蔓延予防のための措置

I-II期非小細胞肺癌に対する根治的放射線療法における寡分割照射法

NA

推奨しない

推奨しない

検討

手術可能I期非小細胞肺癌に対する定位放射線治療

NA

検討

検討

提案

緩徐進行性I期非小細胞肺癌に対する定位放射線治療の延期

NA

検討

検討

提案

 

5-4 III期非小細胞肺癌・肺尖部胸壁浸潤癌(堀之内秀仁)

基本的な考え方

・切除不能局所進行非小細胞肺癌に対する化学放射線療法とその後の免疫チェックポイント阻害薬による地固め療法は、根治を目指すことができる治療であり、その優先度は高い。

・第二段階であっても治癒を目指す治療のintensityを減らすことは推奨されない。しかし、第三段階においてはやむなく化学放射線療法を放射線単独療法にすることを患者と検討することは選択肢となり得る。

・化学放射線療法後の地固め療法としての免疫チェックポイント阻害薬を開始して6ヶ月以上奏効が得られている患者など、安定している患者では、第一段階から通常よりも投与間隔を延長し(例えば2週毎→4週毎)、受診機会を減らす工夫をすることは妥当である。第二、第三段階においては、投与間隔の延長(例えば2週毎→4週毎)について患者と積極的に話し合い、受診頻度を減らす努力をすべきである。

・肺尖部胸壁浸潤癌に対する化学放射線治療後の手術療法は侵襲度も高く、感染拡大期では手術に伴う医療スタッフの感染リスクも看過できないことから、照射線量を根治線量としたうえで化学放射線療法を完遂し、経過観察することも選択肢になりうる。

・一方、化学放射線療法による放射線肺臓炎、免疫チェックポイント阻害薬による薬剤性肺障害が起こりうる。CT画像のみでCOVID-19肺炎とこれらの肺障害の鑑別は困難であり、肺炎発症時には治療関連、感染症の疾患を念頭に置き、PCR検査などによる除外診断を積極的に行う必要がある。

 

 

感染拡大状況

主たる対象と治療の優先度

 

GL2020

推奨

第一段階

第二段階

第三段階

PS 0-1患者に対する化学放射線療法

1A

High

High

High

化学放射線療法後の免疫チェックポイント阻害薬による地固め療法

1B

High

High

High

化学療法併用不能な患者、もしくは状況における放射線単独療法

1C

High

High

High

シスプラチン一括投与が不適な高齢者に対する連日カルボプラチン投与による化学放射線療法

2B

Medium

Medium

Medium

切除可能な肺尖部胸壁浸潤癌(臨床病期T3-4N0-1)に対する、術前化学放射線療法後の外科切除

1C

High

High

High

 

 

 

 

 

患者の安全確保または感染蔓延予防のための措置

化学放射線療法後の免疫チェックポイント阻害薬投与間隔の延長

NA

推奨しない

検討

検討

PS0-1の患者に対する化学放射線治療から放射線治療単独治療への変更

NA

推奨しない

推奨しない

推奨しない

シスプラチン一括投与が不適な高齢者に対するカルボプラチン併用化学放射線治療から放射線治療単独治療への変更

NA

推奨しない

推奨しない

検討

 

5-5 IV期非小細胞肺癌、ドライバー遺伝子変異/転座陽性(三浦理)

基本的な考え方

・ドライバー遺伝子変異/転座陽性肺癌に対するキナーゼ阻害薬治療はいずれも奏効割合が高く、全生存期間の延長とQOLの改善にも寄与すると考えられ、治療の優先度は高い。リスクベネフィットバランスが良く、外来で実施できるため通常時と同様の治療適応で介入を行うべきである。

・長期間奏効が得られている患者においては、通常よりも診察間隔を延長し、受診機会を減らす工夫をすることは感染拡大状況に応じて検討すべきである。

・キナーゼ阻害剤治療中の患者で画像上病勢悪化を認めたものの、臨床症状がなく、criticalな病変(例えば脳転移など)に明らかな悪化がない場合には、治療変更せず、現在のキナーゼ阻害剤を継続すること(Beyond PD)は検討の余地がある。EGFR-TKIのBeyond PDに関する前向き臨床研究では症状が出るなどの臨床的PDになるまでに中央値で約3ヶ月と報告されており、感染拡大状況が落ち着いた状況で再生検や治療の切り替えなどを検討することができる34。

・一方、キナーゼ阻害薬による重篤な有害事象として薬剤性肺炎が知られている。CT画像のみでCOVID-19肺炎との鑑別は困難であり、キナーゼ阻害薬投与例において肺炎発症時には両方の疾患を念頭に置き、PCR検査などによる除外診断を積極的に行う必要がある。

 

 

 

感染拡大状況

主たる対象と治療の優先度

 

GL2020

推奨

第一段階

第二段階

第三段階

PS 0-1患者に対するキナーゼ阻害薬治療

1A

High

High

High

PS2患者に対するキナーゼ阻害薬治療

1C

High

High

High

75歳以上の患者に対するキナーゼ阻害薬治療

1C

High

High

High

一次EGFR-TKI終了後T790M陽性例に対するオシメルチニブ治療

1B

High

High

High

 

 

 

 

 

患者の安全確保または感染蔓延予防のための措置

長期間奏効が維持できており、診察時点で重大な病勢悪化が懸念される病変がない症例に対する受診間隔の延長

NA

検討

 

提案

提案

Beyond PDによるEGFR-TKI継続

NA

検討

提案

提案

 

5-6 IV期非小細胞肺癌、ドライバー遺伝子変異/転座陰性、PD-L1陽性細胞50%以上(三浦理)

基本的な考え方

・PS良好のPD-L1高発現症例におけるⅣ期非小細胞肺癌に対してのKey Drugは免疫チェックポイント阻害薬と細胞傷害性抗癌薬治療であり、治療選択肢はペムブロリズマブ単剤療法、ニボルマブ+イピリムマブ併用療法、プラチナ製剤併用PD-1/PD-L1阻害薬治療が挙げられる。

・免疫チェックポイント阻害薬の高い効果が期待できる患者群であり、感染拡大状況を鑑みて、併用療法よりも有害事象の少ない免疫チェックポイント阻害薬単剤療法を考慮することは妥当な選択と考えられる。

・ニボルマブ+イピリムマブ併用療法は、肺癌診療ガイドラインに基づき提案されうる治療であるが、頻度は低いものの肝障害、大腸炎など重篤な免疫関連有害事象に注意が必要であり、その使用は慎重に検討する。

・PS 2の症例においては細胞傷害性抗癌薬が治療選択肢のメインであり、感染蔓延・医療逼迫状態においてはより安全性の高い非プラチナ単剤治療が提案される。

・免疫チェックポイント阻害薬により奏効が得られており、病状が安定している患者では、投与間隔を延長し、受診機会を減らす工夫をすることは妥当である。ペムブロリズマブ、ニボルマブにおいてはそれぞれ2倍量に増量したうえで6週毎、4週毎の投与法が承認されており、状況に応じて投与間隔の延長をすることが検討される。

・細胞傷害性抗癌薬治療の実施にあたっては、受診期間の減少、感染リスクの軽減などを期待して、G-CSFの積極的使用を検討してもよい(例:ESMOガイドラインではFNリスク10%以上で予防投与を考慮)25。

 

 

感染拡大状況

主たる対象と治療の優先度

 

GL2020

推奨

第一段階

第二段階

第三段階

PS 0-1患者に対するペムブロリズマブ単剤療法

1A

High

High

High

PS 0-1患者に対するプラチナ製剤併用PD-1/PD-L1阻害薬治療

1B

High

Medium

Medium

PS 0-1患者に対するニボルマブ+イピリムマブ併用療法

2C

Medium

Medium

Medium

PS 2患者に対する細胞傷害性抗癌薬治療(非プラチナ単剤)

1A

High

High

High

PS 2患者に対する細胞傷害性抗癌薬治療(カルボプラチン併用療法)

2B

Medium

Low

Low

PS 2患者に対するペムブロリズマブ単剤療法

2D

Medium

Low

Low

 

患者の安全確保または感染蔓延予防のための措置

免疫チェックポイント阻害薬治療における投与間隔の延長

(ペムブロリズマブ、ニボルマブ)

NA

検討

 

検討

検討

2年以上免疫チェックポイント阻害薬維持療法が実施されている症例における休薬

NA

検討

提案

提案

細胞傷害性抗癌薬使用時のG-CSFの積極的使用

NA

検討

提案

提案

 

5-7 IV期非小細胞肺癌、ドライバー遺伝子変異/転座陰性、PD-L1陽性細胞50%未満(三浦理)

基本的な考え方

・PD-L1発現50%未満症例におけるⅣ期非小細胞肺癌に対して治療選択肢はペムブロリズマブ単剤療法(PD-L1:1〜49%)、プラチナ製剤併用PD-1/PD-L1阻害薬治療、ニボルマブ+イピリムマブ併用療法、細胞傷害性抗癌薬(併用・単剤療法)が治療選択肢として挙げられる。

・PS良好のPD-L1発現50%未満症例におけるⅣ期非小細胞肺癌に対してのKey Drugは免疫チェックポイント阻害薬と細胞傷害性抗癌薬治療であり、治療選択肢はペムブロリズマブ単剤療法、ニボルマブ+イピリムマブ併用療法、プラチナ製剤併用PD-1/PD-L1阻害薬治療が挙げられる。

・免疫チェックポイント阻害薬単剤療法の効果は限定的であるが、感染拡大状況を鑑みて、有害事象の少ない免疫チェックポイント阻害薬単剤療法、またはニボルマブ+イピリムマブ併用療法を投与することは選択肢である。

・PS 2の症例においては細胞傷害性抗癌薬が治療選択肢のメインであり、感染蔓延・医療逼迫状態においてはより安全性の高い非プラチナ単剤治療が提案されうる。

・ベバシズマブ、ネシツムマブの上乗せに関してはGrade3以上の有害事象が増加することが危惧されるため、感染蔓延・医療逼迫状態においてはその使用を留保することを検討する。また、それぞれの維持療法に関しての継続の意義については肺癌領域では明らかにされておらず、感染拡大状況に応じて投与期間の延長、休止を検討することも考慮する。

・免疫チェックポイント阻害薬により奏効が得られており、病状が安定している患者では、投与間隔を延長し、受診機会を減らす工夫をすることは妥当である。ペムブロリズマブ、ニボルマブにおいてはそれぞれ2倍量に増量したうえで6週毎、4週毎の投与法が承認されており、状況に応じて投与間隔の延長をすることが検討される。

・細胞傷害性抗癌薬治療の実施にあたっては、受診期間の減少、感染リスクの軽減などを期待して、G-CSFの積極的使用を考慮する(例:ESMOガイドラインではFNリスク10%以上で予防投与を考慮)25。

 

 

 

感染拡大状況

主たる対象と治療の優先度

 

GL2020

推奨

第一段階

第二段階

第三段階

PS 0-1患者に対するプラチナ併用療法

1A

High

High

High

PS 0-1患者に対するプラチナ製剤併用PD-1/PD-L1阻害薬治療

1B

High

High

Medium

PS 0-1患者に対するペムブロリズマブ単剤療法

2C

Medium

Medium

Medium

PS 0-1患者に対するニボルマブ+イピリムマブ併用療法

2C

Medium

Medium

Medium

PS 2患者に対する細胞傷害性抗癌薬治療(非プラチナ単剤)

1A

High

Medium

Medium

PS 2患者に対するプラチナ併用療法

2B

Medium

Medium

Low

プラチナ併用療法を行う際のベバシズマブの上乗せ

2A

Medium

Medium

Low

プラチナ併用療法を行う際のネシツムマブの上乗せ

2B

Medium

Medium

Low

 

患者の安全確保または感染蔓延予防のための措置

免疫チェックポイント阻害薬治療における投与間隔の延長

(ペムブロリズマブ、ニボルマブ)

NA

検討

 

検討

 

検討

 

免疫チェックポイント阻害薬維持療法における投与間隔の延長

NA

検討

 

提案

提案

2年以上免疫チェックポイント阻害薬維持療法が実施されている症例における休薬

NA

検討

提案

提案

細胞傷害性抗癌薬使用時のG-CSFの積極的使用

NA

検討

提案

提案

ベバシズマブ、ネシツムマブの維持療法の投与期間の延長または休止

NA

検討

提案

提案

 

5-8 IV期非小細胞肺癌、ドライバー遺伝子変異/転座陰性の二次治療以降(三浦理)

基本的な考え方

・一次治療において免疫チェックポイント阻害薬未治療例は通常通りPD-1/PD-L1阻害薬単剤治療が勧められる。

・免疫チェックポイント阻害薬既治療例では細胞傷害性抗癌薬による治療が選択肢となるが、一次治療で使用するよりもその効果は限定的であるため感染蔓延・医療逼迫状態においての治療適応検討は特に慎重に行う必要がある。

・PS 2の症例に対する免疫チェックポイント阻害薬治療は有効性のデータが限定的であり、細胞傷害性抗癌薬による治療も同様にデータが乏しいため、その使用については慎重な検討が必要である。状況によってはPS 3〜4の症例と同様、治療開始の延期、BSCも含めた検討も考慮する必要がある。

・ドセタキセルに対するラムシルマブの上乗せは、ORR、PFS、OSのいずれにも寄与する事が示されているが、Grade3以上の有害事象、特に好中球減少、FNの発症リスクが増加することが危惧されるため、医療逼迫状態においてはその使用を留保することを検討する。特に高齢者、PS2の症例においては安全性、有効性のデータは乏しいため、使用については特に慎重に検討が必要である。

・蔓延期における細胞傷害性抗癌薬治療の選択肢では、受診回数を減らす可能性のあるS-1単剤療法を選択することも考慮する。

・細胞傷害性抗癌薬治療の実施にあたっては、受診期間の減少、感染リスクの軽減などを期待して、G-CSFの積極的使用を考慮する(例:ESMOガイドラインではFNリスク10%以上で予防投与を考慮)25。

 

 

 

感染拡大状況

主たる対象と治療の優先度

 

GL2020

推奨

第一段階

第二段階

第三段階

PS 0-1患者に対する免疫チェックポイント阻害薬未使用症例に対するPD-1/PD-L1阻害薬単剤治療

1A

High

High

High

PS 0-1患者に対する免疫チェックポイント阻害薬未使用症例に対するドセタキセル±ラムシルマブ、ペメトレキセド単剤、S-1単剤

1A

High

High

Medium

ドセタキセルに対するラムシルマブの上乗せ

2B

Medium

Medium

Low

             

 

患者の安全確保または感染蔓延予防のための措置

免疫チェックポイント阻害薬治療における投与間隔の延長

(ペムブロリズマブ、ニボルマブ)

NA

検討

 

検討

 

検討

 

免疫チェックポイント阻害薬維持療法における投与間隔の延長

NA

検討

 

提案

提案

2年以上免疫チェックポイント阻害薬維持療法が実施されている症例における休薬

NA

検討

提案

提案

細胞傷害性抗癌薬使用時のG-CSFの積極的使用

NA

検討

提案

提案

PS2患者における二次治療開始の延期

NA

推奨しない

検討

検討

 小細胞肺癌の治療(堀之内秀仁)

 

6-1 限局型小細胞肺癌(LD-SCLC)

基本的な考え方

・限局型小細胞肺癌に対する化学放射線療法は、根治を目指す治療であり、その優先度は高い。

・第二段階、第三段階であっても治癒を目指す治療のintensityを減らすことは推奨されない。小細胞肺癌においては放射線療法単独による治療の意義は明確ではないことから、化学療法と放射線療法を同時併用、または逐次併用など状況に応じて適切な方法で併用することが推奨される。

・放射線療法の実施方法、併用のタイミングについては、加速過分割照射、早期同時併用が推奨されている。第二段階、第三段階においては、放射線療法の分割方法を1日1回に変更する、早期同時併用を後期同時併用や逐次放射線療法に変更するなど対応は考慮されうる。

・化学放射線療法による放射線肺臓炎が起こりうる。CT画像のみでCOVID-19肺炎とこれらの肺障害の鑑別は困難であり、肺炎発症時には治療関連、感染症の疾患を念頭に置き、PCR検査などによる除外診断を積極的に行う必要がある。

 

 

 

感染拡大状況

主たる対象と治療の優先度

 

GL2020

推奨

第一段階

第二段階

第三段階

限局型小細胞肺癌(PS 0-2)に対する,化学放射線療法

1A

High

High

High

限局型小細胞肺癌(PS 0-2)の化学放射線療法における放射線療法の早期同時併用

1B

High

High

High

限局型小細胞肺癌(PS 0-2)での加速過分割照射法

1B

High

High

High

限局型小細胞肺癌(PS 0-2)において放射線療法と併用するシスプラチン+エトポシド療法の実施

1C

High

High

High

限局型小細胞肺癌(PS0-2)において、シスプラチン+エトポシド療法の投与が困難な場合のカルボプラチン+エトポシド療法の実施

2D

High

High

High

 

患者の安全確保または感染蔓延予防のための措置

限局型小細胞肺癌(PS0-2)における後期同時併用療法への変更

NA

推奨しない

推奨しない

検討

限局型小細胞肺癌(PS0-2)における逐次併用療法への変更

NA

推奨しない

推奨しない

検討

限局型小細胞肺癌(PS0-2)における化学放射線治療から放射線治療単独治療への変更

NA

推奨しない

推奨しない

推奨しない

 

6-2 進展型小細胞肺癌(ED-SCLC)

 

  • 基本的な考え方

    ・進展型小細胞肺癌は、進行が早く早期に重篤な状態になりうる病態であるが、初回薬物療法の奏効割合は高く、化学療法実施の必要性が高い。

    ・進展型小細胞肺癌の初回治療においては、シスプラチン+イリノテカン療法、シスプラチン+エトポシド療法、カルボプラチン+エトポシド療法に加え、カルボプラチン+エトポシド+アテゾリズマブ療法とその後のアテゾリズマブによる維持療法、プラチナ製剤+エトポシド+デュルバルマブ療法とその後のデュルバルマブによる維持療法が推奨されている。

  • ・日本においては、シスプラチン+イリノテカン療法がシスプラチン+エトポシド療法よりも全生存期間を延長することが示されているが、海外で行われた複数の第III相試験では、両者に大きな違いはないことが報告されている。

  • ・カルボプラチン+エトポシド+アテゾリズマブ療法と、その後のアテゾリズマブの維持療法、プラチナ製剤+エトポシド+デュルバルマブ療法とその後のデュルバルマブによる維持療法が、プラチナ製剤+エトポシド療法よりも全生存期間を延長することが示されている。

    ・化学療法のスケジュールとしては、シスプラチン+イリノテカン療法が毎週投与であり、その他のレジメンは3日連日投与、3週毎の治療が標準的である。


  •  

 

 

感染拡大状況

主たる対象と治療の優先度

 

GL2020

推奨

第一段階

第二段階

第三段階

進展型小細胞肺癌(PS 0-2,70歳以下)におけるシスプラチン+イリノテカン療法

1A

High

High

High

進展型小細胞肺癌(PS 0-2,70歳以下)におけるシスプラチン+エトポシド療法

1A

High

High

High

進展型小細胞肺癌(PS 0-2,71歳以上)に対してシスプラチンの一括投与が可能な場合のシスプラチン+エトポシド療法

1B

High

High

High

進展型小細胞肺癌(PS 0-2,71歳以上)に対してシスプラチンの一括投与が困難な場合の、カルボプラチン+エトポシド療法あるいは少量分割シスプラチン+エトポシド療法

1C

High

High

High

進展型小細胞肺癌(PS 0-1)における,プラチナ製剤+エトポシド+PD-L1阻害薬療法

1B

High

High

High

進展型小細胞肺癌(PS 3)おける,カルボプラチン+エトポシド療法あるいは少量分割シスプラチン+エトポシド療法

2C

High

Medium

Medium

 

患者の安全確保または感染蔓延予防のための措置

プラチナ製剤+エトポシド+PD-L1阻害薬療法後のPD-L1阻害薬維持療法投与間隔の延長

NA

推奨しない

検討

検討

プラチナ製剤+エトポシド+PD-L1阻害薬療法後のPD-L1阻害薬維持療法の省略

NA

推奨しない

推奨しない

推奨しない

シスプラチン+イリノテカン療法実施可能な状況での、3週毎投与レジメンへの変更

NA

検討

提案

提案

細胞傷害性抗癌薬使用時のG-CSFの積極的使用

NA

提案

提案

提案

進展型小細胞肺癌(PS 3)における積極的抗癌薬治療から緩和ケア中心へのシフト

NA

推奨しない

推奨しない

推奨しない

 

6-3 予防的全脳照射(PCI)

基本的な考え方

  • 限局型小細胞肺癌に対する化学放射線療法後に、完全寛解が得られた患者に対する予防的全脳照射(PCI)により長期生存が改善することが示されており、その優先度は高い。また、全脳照射は感染症のリスクにはなりにくいと考えられ、感染症の段階に関わらず推奨される。

  • 進展型小細胞肺癌の初回治療後に奏効が得られた患者において、予防的全脳照射を行う群と、定期的な脳転移検索を行う群を比較した第III相試験の結果、全生存期間の延長は得られず、予防的全脳照射を行った群の生存期間がより短い結果であった。

  • 予防的全脳照射の線量としては、25Gy/10回相当が推奨されており、感染症状況下でも同様に推奨される。

  • 予防的全脳照射の実施時期についての明確な推奨はないものの、日本で行われた進展型小細胞肺癌における第III相試験においては、化学療法最終コース開始日から3-8週以内に予防的全脳照射を開始することが規定されており、実施の際には状況に応じて、8週までの延期も許容されうる。

     

 

 

感染拡大状況

主たる対象と治療の優先度

 

GL2019

推奨

第一段階

第二段階

第三段階

限局型小細胞肺癌初回治療で完全寛解が得られた症例に対する予防的全脳照射

1B

High

High

Medium

 

患者の安全確保または感染蔓延予防のための措置

限局型小細胞肺癌初回治療後で完全寛解が得られた症例に対する、治療終了後8週程度までの、予防的全脳照射の実施時期の延期

NA

推奨しない

検討

検討

 

6-4再発小細胞肺癌

基本的な考え方

  • 再発小細胞肺癌に対する治療方法、効果は限定的であり、無増悪生存期間、全生存期間ともに薬物療法による大きな改善は得られていない。

  • Sensitive relapse(初回治療終了後から60-90日以上)とrefractory relapse(sensitive relapseよりも短い期間で再発)により治療の選択肢が大別される。

  • Sensitive relapseにおいては、ノギテカン療法、シスプラチン+エトポシド+イリノテカン療法、アムルビシン療法が推奨されている。

  • Refractory relapseにおいては、アムルビシン療法が推奨されている。

  • これらの薬剤の他に、イリノテカン療法、プラチナ併用療法の再投与等が実地診療では幅広く行われている。

 

 

感染拡大状況

主たる対象と治療の優先度

 

GL2020

推奨

第一段階

第二段階

第三段階

再発小細胞肺癌(sensitive relapse)に対するノギテカン療法,シスプラチン+エトポシド+イリノテカン(PEI)療法,アムルビシン療法

1A

High

High

Medium

再発小細胞肺癌(refractory relapse)に対するアムルビシン療法

1C

High

High

Medium

 

患者の安全確保または感染蔓延予防のための措置

細胞傷害性抗癌薬使用時のG-CSFの積極的使用

NA

提案

提案

提案

PS 2以上の患者における積極的抗癌薬治療から緩和ケア中心へのシフト

NA

検討

検討

検討

肺癌診療ガイドラインで推奨されていない薬物療法実施を手控える

NA

検討

検討

検討

 転移など各病態に対する治療(上月稔幸、堀田勝幸)

7-1 骨転移、脳転移、胸部病変に対する緩和的放射線治療

基本的な考え方

  • 有症候性の放射線治療については、QOLの改善につながると考えられ、いかなる感染拡大状況においても、治療の優先度は高く、通常時と同様の治療適応で介入を行うべきである。

  • 手術に関しては、QOLの改善にはつながるものの、侵襲が少なくなく、感染が拡大し、医療が逼迫している状況においては、薬物療法、放射線治療を優先することが望ましい。

  • 放射線治療においても、感染が拡大している状況においては、1回照射線量を増加させ、総照射回数を減らすことについて検討する。

  • 5-10個の多発脳転移については、感染が拡大している状況においては、照射回数が少ない定位手術的照射も検討する。

  • 乳癌を対象とした研究でのメタ解析では、4週毎の骨修飾薬の投与と12週毎の投与では骨関連事象の発生に差を認めなかった(RR 1.05 (95%CI 0.88-1.25)。肺癌に対しての詳細は不明であるが、薬物療法により病状が安定している場合には、骨修飾薬の投与間隔を延ばすことや投与を中止することを検討する。

 

 

感染拡大状況

主たる対象と治療の優先度

 

GL2020

推奨

第一段階

第二段階

第三段階

症状を有する骨転移に対する放射線治療

1A

High

High

High

病的骨折の危険性が高い骨転移、または脊椎転移が脊髄圧迫を生じている骨転移に対する外科治療

2C

Medium

Medium

Low

病的骨折の危険性が高い骨転移、または脊椎転移が脊髄圧迫を生じている骨転移に対する放射線治療

1C

High

High

High

骨転移に対する骨修飾薬

1B

High

Medium

Low

単発の脳転移に対する定位手術的照射

1C

High

High

Medium

単発の脳転移に対する外科治療

1C

Medium

Medium

Low

症状を有する単発性脳転移に対して,腫瘍摘出術

2C

Medium

Medium

Low

症状を有する脳転移に対する放射線治療

1C

High

High

High

多発脳転移に対する全脳照射

1C

High

Medium

Low

4個以下で腫瘍径3cmまでの脳転移に対する定位手術的照射

1C

High

High

High

5~10個の脳転移に対する,定位手術的照射

2C

Medium

Medium

Medium

縦隔・肺門病変による気道狭窄,上大静脈狭窄など胸郭内の腫瘍増大に伴う症状の緩和を目的とした胸部放射線治療

1A

High

High

High

 

患者の安全確保または感染蔓延予防のための措置

1回照射線量増加、照射回数の減少

NA

推奨しない

検討

提案

骨修飾薬の投与間隔の延期

NA

推奨しない

検討

提案

無症候性多発(5-10個)脳転移に対する全脳照射から、定位手術的照射への変更

NA

検討

提案

提案

 

7-2 癌性胸膜炎、癌性心膜炎の治療

基本的な考え方

  • 胸腔穿刺、心嚢穿刺またはドレナージは緊急を要する病態であり、医療逼迫が起こっている状況においても実施が推奨される。

  • 胸膜癒着術後、呼吸状態が悪化したり、肺炎像を認めたりした場合には、COVID-19肺炎との鑑別が難しく、PCR検査等を積極的に行い鑑別に役立てる。

     

 

 

感染拡大状況

主たる対象と治療の優先度

 

GL2020

推奨

第一段階

第二段階

第三段階

胸腔穿刺・ドレナージを行った癌性胸膜炎に対する胸膜癒着術

1A

High

High

High

心嚢穿刺・ドレナージを要する癌性心膜炎に対する心膜癒着術

2C

Medium

Medium

Medium

 

患者の安全確保または感染蔓延予防のための措置

なし

 

 

 

 

 

 緩和ケア(上月稔幸、堀田勝幸)

 

基本的な考え方

・緩和ケアは癌治療の根幹をなすものである。そのため、癌治療においては最も優先度が高い治療となる。

・緩和治療ではアセトアミノフェンやNSAID、副腎皮質ステロイドホルモン等の薬剤を用いることが多く、発熱、倦怠感等のCOVID-19感染初期症状が現れにくい可能性がある。その後感染が急速に広がり状態が急変する可能性があるため、緩和ケアを受ける患者においては、常にCOVID-19感染を念頭におきながら診療を行っていく必要がある。

・感染が拡大している状況において、可能な限り人との接触を避け、外出を控えることが望ましい。そのため、病状が安定している場合には、訪問診療や電話再診やオンライン診療を積極的に用いることが望ましい。

・がんの進行だけではなく、COVID-19に感染し急激な病状の変化により意思決定ができなくなった時に備えて、今後の治療や療養について患者・家族と医療従事者があらかじめ話合っておくことが望ましい。

 

 

 

感染拡大状況

主たる対象と治療の優先度

 

GL2020

推奨

第一段階

第二段階

第三段階

進行・再発肺癌患者に対して,診断早期からの専門的な緩和ケアの提供

1B

High

High

High

 

患者の安全確保または感染蔓延予防のための措置

訪問診療やオンライン診療、電話再診の利用

NA

検討

提案

推奨

 

 悪性胸膜中皮腫(堀之内秀仁)

 

 

・進行期悪性胸膜中皮腫に対する初回治療では、シスプラチン+ペメトレキセドを4-6コース実施することが推奨されている。

・初回治療後に増悪を認めた患者に対して二次治療としてニボルマブの有効性が示され、標準治療となっている。

 

 

 

感染拡大状況

主たる対象と治療の優先度

 

GL2020

推奨

第一段階

第二段階

第三段階

進行期悪性胸膜中皮腫(PS0-2)に対するシスプラチン+ペメトレキセド療法

1B

High

High

High

進行期悪性胸膜中皮腫(PS0-2、75歳以上)における初回化学療法

2D

High

High

High

進行期悪性胸膜中皮腫(PS0-1、臓器機能が保たれている)における、二次治療としてのニボルマブ療法

2C

High

High

High

 

患者の安全確保または感染蔓延予防のための措置

2年以上免疫チェックポイント阻害薬維持療法が実施されている症例における休薬

NA

検討

検討

検討

免疫チェックポイント阻害薬治療における投与間隔の延長

NA

検討

 

検討

 

検討

 

 

 胸腺上皮性腫瘍(堀之内秀仁)

 

基本的な考え方

  • 胸腺上皮腫瘍は、胸腺腫と胸腺癌に大別され、生物学的な特性の違いから標準治療も異なっている。

  • 臨床病期IV期、再発胸腺腫に対しては、初回治療としてシスプラチンおよびアンスラサイクリン系抗腫瘍薬を含む併用化学療法を実施することが推奨されている。

  • 臨床病期IV期、再発胸腺癌に対しては、初回治療としてカルボプラチンとパクリタキセル、または、アムルビシンの併用療法が推奨されている。

  • 胸腺腫、胸腺癌ともに、一次治療に不応となった場合、二次治療以降の化学療法は推奨されていない。

 

 

感染拡大状況

主たる対象と治療の優先度

 

GL2020

推奨

第一段階

第二段階

第三段階

臨床病期IV期、再発胸腺腫に対する、初回治療としてのシスプラチンおよびアンスラサイクリン系抗腫瘍薬を含む併用化学療法

1D

High

High

High

臨床病期IV期または再発胸腺癌に対する、初回治療としてのカルボプラチンとパクリタキセル、または、アムルビシンの併用療法

2D

High

High

High

 

患者の安全確保または感染蔓延予防のための措置

細胞傷害性抗癌薬使用時のG-CSFの積極的使用

NA

提案

提案

提案

PS 2以上の患者における薬物療法から緩和ケア中心へのシフト

NA

検討

検討

検討

 COVID-19感染患者に対する肺癌治療の考え方について       (上月稔幸、堀田勝幸)

11-1 基本的な考え方

 担癌患者は、COVID-19の死亡リスクは健常人と比べ、2.34-2.45倍高いと報告されている6,9。さらに肺癌患者は、高齢、喫煙歴、心疾患などのCOVID-19に伴う死亡リスク因子を有していたり、COPD、間質性肺炎の合併により呼吸予備能が低下したりしている場合が多く、重症化のリスクが高いことが報告され、Memorial Sloan Ketteringからの報告によると、COVID-19に感染した肺癌患者では、25%の患者で当初から挿管を要し、25%の患者が死亡したと報告されている9,12

そのため、COVID-19に対する有効な治療法が確立していない状況においては、症状を有するCOVID-19感染者では、COVID-19の治療を優先し、肺癌に対しては緩和治療、経過観察を行うことを原則とする。

担癌患者では血栓塞栓のリスクが上昇していることが報告されているが、COVID-19感染時にも血栓形成や凝固異常を認め、肺塞栓、脳梗塞、微小血管塞栓症などを併発したとの報告がある35-37。そのためCOVID-19感染者の経過観察を行うにあたっては、呼吸状態だけでなく、血栓塞栓イベントの発生の有無に注意を払うとともに、血小板数、プロトロンビン(PT)時間、フィブリノーゲンやD-ダイマーの測定を行うなどして注意を払うと共に、必要に応じ予防的抗凝固療法を検討する。

無症候性のCOVID-19感染患者において、チロシンキナーゼ阻害薬治療や根治目的での放射線治療については一律に中止する必要はないが、周術期治療、緩和目的での放射線治療、細胞傷害性抗癌薬治療や免疫チェックポイント阻害薬治療については、症状を有するCOVIID-19感染者と同様に延期・休止を行う。

 濃厚接触者の場合にも、その後の経過が予測できないため、無症候性のCOVID-19感染者と同様に、チロシンキナーゼ阻害薬による治療、根治目的による放射線治療を除く上記治療は原則として延期・休止する。

COVID-19感染患者に対する、がん治療の開始・再開時期に関して明確な基準はない。

そうした中、米国疾病対策センター(CDC)では、免疫不全患者におけるCOVID-19感染患者の隔離基準に関しては、下記の様に定めている38

  1. 重篤な免疫不全状態ではないCOVID-19軽症/中等症患者

    初発症状出現から10日間経過

    解熱剤の使用なく解熱してから24時間以上経過

    症状(例、咳、呼吸困難感)の改善

  2. 重篤な免疫不全患者もしくはCOVDI-19重症患者

    初発症状出現から10-20日間経過

    解熱剤の使用なく解熱してから24時間以上経過

    症状(例、咳、呼吸困難感)の改善

    また、中国湖北省からの報告によると、COVID-19感染既往のある39例の癌患者に対し、抗がん薬治療を実施し、短期的な経過観察では一例も再活性化は無かったと報告している39

    これらの点を踏まえると、COVID-19発症後の患者において、がん治療を早期に行う必要がある場合には、本邦で定められた退院・隔離基準である、①発症日から10日間経過し、かつ、症状軽快後72時間経過、もしくは、②症状軽快後24時間経過した後、24時間以上間隔をあけ、2回のPCR検査で陰性を確認してから治療を開始することは検討しても良いと考えられる40

    ただし一般的に、PCR検査がいったん陰性になった後にも再陽性率が9.1-21.4%と報告されているため、PCR検査が陰性であったとしても過信しすぎず、治療の再開・導入の時期については、治療目的、患者の病状、PSなども踏まえ個々の症例において検討する必要がある41-43

     

11-2 手術療法

 肺切除後に発症した7名のCOVID-19の死亡率は42.8%、武漢大学では胸腔鏡下肺切除3名のうち2名が死亡したとの報告があり44,45、さらには、気管内挿管、抜管時、マスク換気時のエアロゾルが従事する医療者への曝露のリスクにもなることからCOVID-19感染が確定している患者の手術はよほどの緊急性がない限り行うべきではない。

また、COVID-19潜伏期にある症例に対する手術を行うことを未然に回避するため、COVID-19の蔓延度と手術の必要性のバランスを考慮し、手術適応を検討することが重要である。

延期した手術を再開するにあたっても、PCR検査において陰性を確認、もしくは発症日から少なくとも10日間を経過し、かつ症状軽快後72時間経過した後に検討を行う。さらには患者の状態だけではなく、医療提供体制、人工呼吸器などの医療機器の使用状況、PPEの供給状況、地域での医療資源、COVID-19の蔓延状況等も踏まえ、実施のタイミングを総合的に判断する。

 気道病変による窒息のリスク、喀血、腫瘍による敗血症、致死的になり得る手術合併症(出血、縫合不全等)等の緊急の場合においても、より侵襲性が低い代替治療での対応を十分検討した上で実施する。さらに緊急手術を実施する場合にも、感染防御策を講じた上で、術式についても侵襲が少なく、より短時間で終了する方法検討する。

 

11-3 放射線療法

非小細胞肺癌の根治治療を目的とした放射線治療において、放射線照射期間が12週を超えた場合も7-11週で終了した場合にも有効性に差を認めなかったという後ろ向き解析もあるが46、放射線治療の休止がDFSに影響する可能性も報告されており47、休止せずに実施することが一般的に推奨されている。そのため、COVID-19陽性の患者に対する放射線治療の新規導入に関しては、COVID-19の症状が軽快しPCR検査において陰性を確認した後、もしくは発症日から少なくとも10日間経過し、かつ症状軽快後72時間経過した後に再開を検討する。

 一方で、放射線治療を実施中にCOVID-19感染が判明した患者においては、Stage I-III期NSCLC、限局型SCLCといった根治目的での放射線治療の場合には、COVID-19感染症状の有無、肺癌の症状、残りの放射線治療回数等を踏まえた上で、治療継続の利益、不利益を考慮し継続の是非を検討する47。一方で術後の放射線治療、小細胞肺癌に対する予防的全脳照射、緩和的放射線治療については、COVID-19の症状が軽快し、PCR検査において陰性を確認、もしくは発症日から10日間経過し、かつ症状軽快後72時間経過した後に再開する48。放射線治療継続中の患者において無症候性COVID-19感染が判明した場合や濃厚接触者に対しては、根治目的で放射線治療を実施中の、Stage I-IIIの非小細胞肺癌、限局型小細胞肺癌に対する放射線治療、切迫麻痺等の緊急を要する緩和的照射については継続することを検討してもよい。しかし症状を有するCOVID-19に対しては放射線治療を一旦休止する。

無症候性COVID-19感染者や濃厚接触者において、放射線照射を継続する場合でも、一回線量を増加させ照射回数・照射期間を短縮することや総照射線量などについて検討することが望ましい。COVID-19感染者が放射線治療を継続する場合、十分な感染防御を行う必要があることから、各医療機関での受け入れ体制、地域の発生状況を踏まえ実施の是非について総合的に判断する必要がある。無症候性COVID-19感染者における放射線治療の再開についても、PCR検査において陰性を確認、もしくは感染確認後少なくとも10日間経過し、かつ症状軽快後72時間経過した後に再開を検討する。

 

11-4 細胞傷害性抗癌薬治療

 UK Coronavirus Cancer Monitoring Project(UKCGMP)から、800例の有症候性COVID-19陽性癌患者(肺癌以外を含む)に対する過去4週間以内の化学療法歴の有無は、COVID-19による死亡リスクを増加させない(HR 1.18:95%CI 0.81-1.72, p=0.380)と報告されている49。一方で胸部腫瘍の患者428例を解析したTERAVOLT試験においては、COVID-19感染もしくは臨床的に疑われる胸部腫瘍の患者の中で、3ヶ月以内の細胞傷害性抗癌薬投与が、COVID-19による死亡リスクを上昇させる可能性も報告されており、細胞傷害性投与の有無がCOVID-19関連死亡割合を増加させるかどうかに関しての一定の見解を認めていない10。しかし細胞傷害性抗癌薬は免疫細胞にも影響を与えることから、癌種、ステージであっても症状の有無に関わらずCOVID-19陽性患者に対する細胞傷害性抗癌薬治療に関しては新規治療の導入を延期し、実施中の抗癌薬治療についても原則として休薬することを推奨する。また、4週間以内に細胞傷害性抗癌薬を含む薬物療法を受けていた患者においては、SARS-COV2に対するIgG抗体の検出率が低い可能性が報告されていることや50、PCRが陰性後に再陽性することも報告されていることから、細胞傷害性抗癌薬の再開についてはCOVID-19感染再燃の可能性も考慮した上で、慎重に判断する必要がある。これらの点を踏まえ、Ⅳ期非小細胞肺癌、進展型小細胞肺癌の患者においては、COVID-19から回復後も、病状が安定しているようなら一旦治療を中止し、再増悪後に治療を再開することも検討する。

 局所進行非小細胞肺癌、限局型小細胞肺癌においては治癒が期待されるため、ガイドラインに則った治療を継続することが望ましい。一方で細胞傷害性抗癌薬治療はCOVID-19感染症の重症化に関連する可能性があることから、症状を有するCOVID-19感染者は細胞傷害性抗癌薬での治療は延期し、放射線治療単独で治療を行うことも検討する。局所進行非小細胞肺癌に対する化学放射線療法後の細胞傷害性抗癌薬による維持療法の意義は明確ではなく、中止を検討する。

根治手術後の術後補助療法については手術単独で治癒している可能性もあり、さらに術後補助化学療法を8週以内に開始することと、8-18週後に開始することでの死亡率に違いを認めなかったとの報告もあることから、投与の延期を検討もしくは中止を検討する30

なお、いずれの場合においても細胞傷害性抗癌薬を再開にあたっては症状が軽快しPCR検査において陰性を確認するか、発症日から少なくとも10日間経過し、かつ症状軽快後72時間経過した後に再開を検討する。濃厚接触者においても同様である。

 

11-5 分子標的治療薬

COVID-19感染症例においてキナーゼ阻害薬の継続が可能であったとする症例報告が散見されるが、出版バイアスの可能性や前向き試験での安全性の検証はないことも念頭におくべきである。ILDのリスクが高い我が国における対応は症例毎で検討されるべきである51,52。継続する場合、COVID-19肺炎とキナーゼ阻害薬治療による薬剤性肺炎の鑑別に常に留意する。癌の状態が安定していれば、短期間の休薬は治療効果への影響は小さい可能性を考慮する。ただし、EGFR-TKI治療に対する耐性化直後の休薬により急激な病勢悪化が起こる事も知られており、休薬中は慎重に病勢変化を見守る必要がある。

 

11-6 免疫チェックポイント阻害薬

TERAVOLT研究では、胸部腫瘍に対し無治療の患者と比べ、免疫チェックポイント阻害薬や分子標的治療薬はCOVID-19感染症によるリスクを高めないと報告され(HR 1.04, 95%CI 0.56-1.933)10、Luo等も、PD-1阻害薬の投与の有無はCOVID-19感染症の重症化に影響しないと報告している53。一方で、Memorial Sloan Kettering からの報告によると多変量解析の結果、免疫チェックポイント阻害薬の投与は、重症化のリスクを高める可能性(HR 2.74, 95%CI 1.37-5.46)があることや7、40日以内の免疫チェックポイント阻害薬の投与は、死亡のリスクや重症化のリスクを高めるとの報告もある9。最近公表されたこれら試験を含む統合解析の結果、免疫チェックポイント阻害薬の投与は、重症化(HR 1.60, 95%CI 0.72-3.52)や死亡(HR 1.12, 95%CI 0.60-2.08)のリスク上昇は明らかではなかった54。しかし、免疫チェックポイント阻害薬の影響に関しては一定の見解は得られていない。このような状況において、免疫チェックポイント阻害薬投与中に肺臓炎が出現した場合にCOVID-19肺炎との鑑別が困難になることや、免疫チェックポイント阻害薬単回投与時の半減期は11.7-18.4日と報告されていることから、COVID-19感染患者においては症状の有無に関わらず免疫チェックポイント阻害薬の投与を延期もしくは中止することを推奨する。濃厚接触者においてもCOVID-19感染が否定されるまでは投与を延期することが望ましい。

 免疫チェックポイント阻害薬を投与中の患者でCOVID-19感染が重症化した場合は、免疫関連有害事象の可能性やサイトカインストームの可能性も考慮し、免疫チェックポイント阻害薬の投与中止と共に、副腎皮質ステロイドホルモン等の免疫抑制薬の投与についても検討する必要がある55

 

11-7 緩和療法

 COVID-19感染患者に対してはCOVID-19感染症状の有無に関わらず、緩和治療を一切中止することなく継続して積極的に行う。ただし、低酸素状態に対するハイフロー療法や、非侵襲的陽圧換気療法などでは、エアロゾル発生により医療従事者や介護者に感染の危険性を高める可能性があるため、感染防止策を講じた上で使用する。

 症状緩和目的での放射線治療については、単回照射等照射回数を減らして実施することを検討する。放射線治療中の休止は治療効果を減弱する可能性があるため、分割照射を行うに際しては、COVID-19感染症の症状が改善し、PCR検査にて陰性を確認した後もしくは、発症日から少なくとも10日間経過し、かつ症状軽快後72時間経過した後に実施することが望ましい。

 症状緩和にあたっては、緩和ケアチーム・緩和ケア医ともよく相談しながら治療を行う。COVID-19感染に伴い、精神的苦痛が強くなっている可能性もあり、この点にも配慮して診療にあたることが大切である。人との接触を減らすため、電話再診、オンライン診療について検討を行う。緩和治療での薬物療法を行うにあたって、COVID-19治療薬との相互作用について注意を要する。

 

11-8 COVID-19治療薬で起こりうる薬剤相互作用について(先山奈緒美)

各薬剤の添付文書を基に、COVID-19治療薬との併用に注意が必要と考えられる肺癌治療薬について表に示す。

↑/↓:肺癌治療薬の作用増強/減弱

△/▽:COVID-19治療薬の作用増強/減弱

ファビピラビル(商品名:アビガン錠)

相互作用に関連する特徴

CYPで代謝されず、主にAO、一部はXOにより代謝される。またAO及びCYP2C8を阻害するが、CYPの誘導作用はない。

注意が必要と考えられる肺癌治療薬

パクリタキセル↑

CYP2C8の基質

ナブパクリタキセル↑

CYP2C8の基質

ダブラフェニブ↑

CYP2C8の基質

レムデシビル(商品名:ベクルリー点滴静注液/用)

相互作用に関連する特徴

In vitro試験でレムデシビルはCYP2C8、CYP2D6及びCYP3A4、並びにOATP1B1及びP-gpの基質であり、またCYP3A4、OATP1B1、OATP1B3、BSEP、MRP4及びNTCPの阻害薬であることが示されている。

※臨床薬物相互作用試験は実施されていない。

注意が必要と考えられる肺癌治療薬

ビノレルビン↑

CYP3A4の基質

パクリタキセル↑

CYP3A4の基質

ナブパクリタキセル↑

CYP3A4の基質

ドセタキセル↑

CYP3A4の基質

イリノテカン↑

CYP3A4の基質

ゲフィチニブ↑/△

CYP3A4の基質/ CYP2D6阻害作用

エルロチニブ↑

CYP3A4の基質

アファチニブ△

P-gpの基質

オシメルチニブ△

P-gp阻害作用

ダコミチニブ△

CYP2D6阻害作用

クリゾチニブ↑/△

CYP3A4の基質/CYP3A阻害作用

アレクチニブ↑

CYP3A4の基質

セリチニブ↑/△

CYP3Aの基質/CYP3A阻害作用

ロルラチニブ↑/▽

CYP3Aの基質/ CYP3A誘導作用

エヌトレクチニブ↑/△

CYP3A4の基質/ CYP3A阻害作用

ダブラフェニブ↑/△/▽

CYP3A4の基質/ OATP1B1阻害作用/ CYP3A4誘導作用

エベロリムス↑

CYP3A4の基質

テポチニブ△

P-gp阻害作用

ロピナビル・リトナビル(商品名:カレトラ配合錠)

相互作用に関連する特徴

CYP3Aとの親和性が強い(in vitro)。主にCYP3Aで代謝される薬剤を本剤と併用することにより、併用薬剤の代謝を競合的に阻害し、併用薬剤の血中濃度を上昇させることがある。一方でCYP3Aを誘導する薬剤を本剤と併用すると、本剤の血中濃度が低下することがある。また,CYP3Aを阻害する薬剤との併用で本剤の血中濃度が上昇することがある。

注意が必要と考えられる肺癌治療薬

ビノレルビン↑

CYP3A4の基質

パクリタキセル↑

CYP3A4の基質

ナブパクリタキセル↑

CYP3A4の基質

ドセタキセル↑

CYP3A4の基質

イリノテカン↑

CYP3A4の基質

ゲフィチニブ↑

CYP3A4の基質

エルロチニブ↑

CYP3A4の基質

クリゾチニブ↑/△

CYP3A4/5の基質、CYP3A阻害作用

アレクチニブ↑

CYP3A4の基質

セリチニブ↑/△

CYP3Aの基質/CYP3A阻害作用

ロルラチニブ↑/▽

CYP3Aの基質/ CYP3A誘導作用

エヌトレクチニブ↑/△

CYP3A4の基質/ CYP3A阻害作用

ダブラフェニブ↑/▽

CYP3A4の基質/CYP3A4誘導作用

エベロリムス↑

CYP3A4の基質

ヒドロキシクロロキン硫酸塩(商品名:プラケニル錠)

相互作用に関連する特徴

ヒドロキシクロロキンはデスエチルヒドロキシクロロキン及びデスエチルクロロキンに代謝され、さらにビスデスエチルクロロキンに代謝される。これらの代謝にはクロロキンの代謝よりCYP2C8及びCYP3A4の関与が示唆されている。

注意が必要と考えられる肺癌治療薬

該当なし

イベルメクチン(商品名:ストロメクトール錠)

相互作用に関連する特徴

ヒトにおけるイベルメクチンの代謝にはCYP3A4が関与していることが推定される。またP-gpの基質であることが報告されている。

注意が必要と考えられる肺癌治療薬

該当なし

ナファモスタットメシル酸塩(商品名:注射用フサン)

相互作用に関連する特徴

主として、血液及び肝で加水分解を受け、構成成分である6 ‒アミジノ‒ 2 ‒ナフトール及びp-グアニジノ安息香酸に分解され、更に主としてグルクロン酸抱合を受けるものと推定される。

注意が必要と考えられる肺癌治療薬

該当なし

 

<略号>

CYP:チトクロームP-450

AO:アルデヒドオキシダーゼ

XO:キサンチンオキシダーゼ

OATP:有機アニオントランスポーティングポリペプチド

P-gp:P糖タンパク

BSEP:胆汁酸塩排泄トランスポーター

MRP:多剤耐性関連タンパク質

NTCP:ナトリウムタウロコール酸共輸送体

 

 肺癌患者におけるCOVID-19ワクチン接種について(古屋直樹)

 

12-1 基本的な考え方

2021年1月31日時点で、本邦では未だCOVID-19ワクチンの接種が一般市民に対して行われていないものの、海外では2種のワクチンがプラセボ対照ランダム化試験で有効性検証が行われ、米国においては医療従事者や高齢者を中心に既にPfizer-BioNTech社とModerna社のワクチン接種が開始されている56-58。2021年2月8日時点で、日本政府が輸入の正式契約しているワクチンは下表3種のワクチンであるが、国内開発中のワクチンの最新情報は厚生労働省のホームページで確認できる59。本学会ステートメントVer2.0の発行後も急速に変化することが予測され、随時最新の情報を更新していきたい。

 

開発企業

Pfizer-BioNTech社

Moderna社

AstraZeneca社

種類

mRNAワクチン

mRNAワクチン

アデノウイルス

ベクターワクチン

投与方法

筋肉注射

筋肉注射

筋肉注射

投与回数

2回

2回

2回

投与間隔

21日

28日

28日

1回投与量

0.3ml

0.5ml

0.5ml

 

現時点で、がん患者に対するCOVID-19ワクチンの安全性や有効性の情報は不十分であるものの、ASCO60、ESMO61、AACR62などのがん関連学会がそれぞれのWebサイト上でステートメントを公表している。いずれの学会のステートメントも、がん患者におけるインフルエンザワクチンのエビデンスを外挿しながら示された見解であり、あくまで暫定的であることを各学会とも強調している。しかし、少なくとも一般市民におけるCOVID-19ワクチンの短期的な安全性は確認できており、がん患者においてもベネフィットがリスクを上回る状況と判断されている。そのため、『ワクチン成分に対するアレルギー既往などの禁忌が無い限りは、がん患者においてもワクチン接種を前向きに検討すべき』との見解は共通している。

さらにESMOのステートメント61においては、治癒切除後や根治的治療後でも5年未満の患者においては、化学療法中の進行がん患者と同様に高リスク症例(COVID-19感染した際の重症化リスク因子)として扱うよう記載されている。

本項における記載は前述のがん関連学会のステートメントを参考とし作成したものであり、肺癌患者に特化したものではなく、がん患者一般に対応するものとして理解していただきたい。

 

12-2 免疫チェックポイント阻害薬投与中におけるワクチン接種

 米国Memorial Sloan Kettering Cancer Centerは、がん患者に対するCOVID-19ワクチンの暫定的ガイドライン63や前述のESMOのステートメント61の中で、免疫チェックポイント阻害薬(ICI)投与中の肺がん患者に対するワクチンについて言及している。

・ICI治療を受けている患者は、COVID-19ワクチンを接種すべきである。

・COVID-19ワクチン接種のためにICI治療を中止すべきではない。

・ただし、COVID-19ワクチンの有害事象がワクチン接種後2~3日以内に多く発現する傾向があるため、可能であればワクチン接種とICI投与時期を調整することは考慮されても良い。

・ICI投与中のがん患者における、COVID-19のmRNAワクチンの免疫原性についての公表データはないが、インフルエンザワクチンにおいてはICI投与中においても免疫原性は確認されている64

・またインフルエンザワクチンに関しては、既に複数の研究において、ICI中のirAEリスクが増大することはないと報告されている65-67

 

12-3 細胞傷害性抗癌薬投与中におけるワクチン接種

 ESMOのステートメントでは、骨髄抑制の起こる細胞傷害性抗癌薬投与中のワクチン接種は、通常より免疫原性が落ちる可能性について言及している。ドセタキセル投与中の固形癌症例を対象にした前向き観察研究において、インフルエンザワクチンを接種したとしても各インフルエンザウイルス亜型の抗体価上昇(セロコンバージョン)が起きた症例は8~29%と一般市民の1/3程度であったと報告されている68。可能であるならば、抗体産生能を維持するために、細胞傷害性抗癌薬による骨髄抑制の時期を考慮してワクチン接種時期が検討されることが望ましい。また、いずれのワクチンも筋肉注射であり、ワクチン接種前の血小板数や凝固能には注意を払うべきである。

 

12-4 分子標的薬投与中におけるワクチン接種

 肺癌における分子標的薬は主にチロシンキナーゼ阻害薬を意味するが、チロシンキナーゼ阻害薬投与中のワクチンの免疫原性について検討した報告は、インフルエンザワクチンのエビデンスでさえ非常に少ない。血管新生阻害薬やチロシンキナーゼ阻害薬を含む治療を行う固形癌患者を対象としたインフルエンザワクチンの安全性を検討した前向き観察研究では、分子標的薬投与中でも免疫原性は保たれ、安全性も担保されていたと報告されている69。一般に骨髄抑制の頻度が少ないチロシンキナーゼ阻害薬であれば、接種時期を問わず積極的にCOVID-19ワクチン接種は考慮されるべきである。

 

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 作成者の利益相反

滝口裕一:日本ベーリンガーインゲルハイム㈱、アストラゼネカ㈱、中外製薬㈱、小野薬品工業㈱より講演料、中外製薬㈱、ブリストル・マイヤーズスクイブ㈱、MSD㈱より研究費、日本イーライリリー㈱、中外製薬㈱、小野薬品工業㈱より研究助成、光冨徹哉:日本ベーリンガーインゲルハイム㈱、日本イーライリリー㈱、MSD㈱、ファイザー㈱、中外製薬㈱、大鵬薬品工業㈱、アストラゼネカ㈱より講演料、日本ベーリンガーインゲルハイム㈱、㈱アイコン・ジャパン、apollomics,Incより研究費、中外製薬㈱、小野薬品工業㈱より研究助成、池田徳彦:中外製薬㈱、アストラゼネカ㈱より講演料、サノフィ㈱、バイエル㈱、ライフテクノロジーズジャパン㈱、Genoic Health,Inc、MSD㈱、アストラゼネカ㈱、大鵬薬品工業㈱、中外製薬㈱、ブリストル・マイヤーズスクイブ㈱、リニカル㈱、ロシュダイアグノスティック㈱より研究費、日本イーライリリー㈱、大鵬薬品工業㈱、MSD㈱、小野薬品工業㈱、中外製薬㈱より研究助成、唐澤克之:該当なし、清家正博:アストラゼネカ㈱、MSD㈱、中外製薬㈱、大鵬薬品工業㈱より講演料、大鵬薬品工業㈱、中外製薬㈱、日本イーライリリー㈱、小野薬品工業㈱、日本ベーリンガーインゲルハイム㈱より研究助成、堀田勝幸:アストラゼネカ㈱より講演料、アストラゼネカ㈱、中外製薬㈱、アステラス製薬㈱、日本イーライリリー㈱、ブリストル・マイヤーズスクイブ㈱より研究費、堀之内秀仁:アストラゼネカ㈱、日本イーライリリー㈱、協和キリン㈱より講演料、アッヴィ合同会社、エイツーヘルスケア㈱、小野薬品工業㈱、第一三共㈱、MSD㈱、ノバルティスファーマ㈱、Genoic Health,Incより研究費、先山奈緒美:該当なし、上月稔幸:アストラゼネカ㈱、中外製薬㈱、日本イーライリリー㈱より講演料、三浦 理:日本ベーリンガーインゲルハイム㈱、日本イーライリリー㈱、アストラゼネカ㈱、中外製薬㈱、MSD㈱、小野薬品工業㈱より講演料



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