肺がんの症状には,一般的な呼吸器疾患にみられる咳,痰,血痰,胸の痛み,動いたときの息苦しさ,発熱などがあります。しかしながら,肺がんができた場所や大きさによっては症状がほとんど出ないこともあり,この症状があれば肺がんに違いないというものはありません。
これとは別に,呼吸器の症状がなくても,転移による症状がきっかけで肺がんが見つかることも少なくありません。たとえば,頭痛,ふらつき,麻痺,肩や背中の痛み,声がかすれる,顔がむくむなどは,一見,肺がんとまったく関係がない症状のようですが,転移した肺がんにみられることがある症状です。
最も多い症状は,咳と痰ですが,風邪でもないのに2週間以上長引く,あるいは血痰がある場合は医療機関を受診することをお勧めします。発熱が5日以上に長引く場合も同様です。ときとして,気管支にできた肺がんが気管支をふさぐことで閉塞性肺炎を起こしていることがあります。肺炎だと思って治療していたら肺がんであったということもあるので注意が必要です。
動いたときの息苦しさや動悸は,肺がんが大きくなって肺の機能に影響を及ぼすようになっている場合で,胸に水がたまって肺が圧迫されている場合が考えられます。胸の痛みは,胸に水がたまったとき(胸水といいます)や,がんが肋骨や神経にひろがったときにみられる症状です。一方,がん以外の肺疾患,食道疾患や心臓疾患など,ほかの病気でもよくみられる症状でもあります。
頭痛,ふらつき,麻痺は,肺がんが脳に転移して,ある程度の大きさになると現れる症状ですが,脳血管障害で一般的にみられる症状でもあります。
肩や背中の痛みは,肺がんが骨に転移したり,周辺の神経にひろがったときに現れる症状です。声がかすれるのは嗄声と呼ばれ,声帯を動かす反回神経に肺がん自体が及ぶ,あるいは,リンパ節転移が神経を圧迫した場合に気づく症状ですが,声帯ポリープや喉頭がんでもみられる症状です。 繰り返しになりますが,症状のみから肺がんを診断することは不可能です。いろいろな検査を追加して肺がんを確定することになります。詳しくはQ6を参照してください。