がん治療により,口腔内(口の中)には口内炎以外にも乾燥や味覚異常が生じます。また免疫力が低下するとヘルペスウイルスやカビの一種であるカンジダによる口内炎が生じることもあります。予防と速やかな対応が重要です。
アルコールやタバコは症状を悪化させるため控えましょう。がん治療が始まったら口腔内を毎日観察し,粘膜の変化や乾燥,味覚の変化をチェックします。口腔内の保湿と清潔を保つことも大切です。うがいをこまめに行いましょう。水道水でも十分ですが,しみるときは生理食塩水(500mLの水に食塩4.5g)でのうがいがお勧めです。歯みがきはやわらかい歯ブラシで行い,歯や歯肉,舌をやさしくブラッシングしましょう。歯みがき剤は刺激の少ないものとし,歯間清掃もできるだけ行いましょう。義歯を使用している方は,しっかりとみがいてから洗浄剤も使用して清潔に保つようにしてください。痛みがつらいときには刺激物を避け,水分が多く,やわらかく,口当たりのよい食事を選びましょう。
食事が十分とれないときには,濃厚流動食などの栄養補助食品も検討します。生活の工夫だけで対応できない痛みには,痛み止めの内服や麻酔薬入りのうがい薬が処方されます。また傷ついた粘膜を保護する薬もあります。ヘルペスウイルスやカンジダが原因の口内炎では感染症に対する薬を使用します。
最近は歯科との協力体制が進んできており,がん治療の開始前から歯科を受診するようになってきています。かかりつけの歯科医院があれば,その歯科医とがん治療の担当医が連携をとることもできます。
なお,骨転移に対して使用される薬には顎骨壊死という副作用があり(Q53参照),これを避けるためには口腔内を清潔に保つことが必要です。そのためこの薬を使用する前には歯科を受診して,口腔内に問題がないか評価が行われます。