進展型小細胞肺がんでは,抗がん剤(細胞傷害性抗がん薬)による治療(化学療法)を行うことで生存期間が延長することが証明されています。さらに,1 種類のみの抗がん剤を使用するよりも,いくつかの抗がん剤を組み合わせて使用する「多剤併用化学療法」を受けたほうが,より治療効果が高いことがわかっています。
わが国において,70 歳以下でPS0-2 の患者さんを対象にシスプラチン+イリノテカン(PI)療法とシスプラチン+エトポシド(PE)療法を比較する臨床試験が行われました。PI 療法のほうが,生存期間の延長効果において優れたため,標準治療となっています。
71 歳以上,PS0-2 の患者さんにおいても,シスプラチンの投与が可能な方にはPE 療法が勧められています。シスプラチンの一括投与が難しい患者さんには,カルボプラチン+エトポシド(CE)療法またはPE 療法のシスプラチンを3 日間に分割(=Split)して投与するSPE療法が推奨されています。
2018 年に,CE 療法と免疫チェックポイント阻害薬(アテゾリズマブ)を併用して4 サイクル治療を受けた後に,アテゾリズマブによる維持療法を受ける治療法が検討され,化学療法だけの治療を受けた場合に比べて生存期間の延長が報告されたことから,標準治療のひとつになりました。また,2020 年には,別の免疫チェックポイント阻害薬(デュルバルマブ)と化学療法を併用した場合も生存期間の有意な延長を認めたことが報告されました。そこで,現在ではPS0,1 の患者さんに対して化学療法と免疫チェックポイント阻害薬を併用することが推奨されています(Q76 参照)。
全身状態が悪い患者さん(PS2,3)でも,できるだけ2 剤併用による化学療法をしたほうがよいと考えられており,そのような場合,CE 療法が多く行われています。全身状態がきわめて悪い患者さん(PS4)では,症状の緩和など,個別の治療方法が検討されます(第5章参照)。
※予防的全脳照射について
以前は,限局型小細胞肺がんで強く勧められる「予防的全脳照射」について,進展型小細胞肺がんでも試みられることがありました。しかし,わが国における臨床試験の結果から期待される効果が証明されなかったため,現在は勧められていません。