3つの方法を紹介します。
①情報を十分得て,自分で決める
②医療者や家族と十分相談しながら決める
③医療者や家族など信頼できる人に決めてもらう
治療を誰がどのように決めていくのか? いきなり問われても,どうすればいいのか困った方も多いのではないでしょうか。がんにかかることは,初めての方が多いはずです。こうすればいい,という経験を持っている方は少ないでしょう。そして,がんはやはり大病。見通しも立てづらく,不安になります。途方に暮れることもあるかもしれません。しかし,これからどうやって治療を決めていくのかを考えることは,がんとどう向き合っていくのかと同じことです。3つの方法を一つずつ紹介します。ぜひ自分に合った方法を見つけてください。
患者が自分で主体的に意思決定を行います。患者は医師からだけではなく,積極的に広く情報を収集します。したがって,情報量は多くなります。
インフォームドデシジョンモデルと言われます。
医師と患者・家族が話し合い,ともに意思決定する方法。医師は意思決定に必要な情報をできる限り提供します。複数の選択肢や,それぞれの利益(ベネフィット)と不利益(リスク)が提供され,患者側が選択肢を選ぶ理由も共有されて,医療者は意思決定のパートナーとなります。
シェアードデシジョンモデルと言われます。
従来行われてきた専門家主導の父権主義的な方法。父親が子どものために良かれと思って,子どもの意向をあまり聞かずに意思決定することから来ています。医師が情報提供する量は少なくなりがちです。
パターナリズムモデルと言われます。
いかがでしょう。自分に合いそうな治療の決め方がありましたか?
基本,どれを選んでも,医師はその意思を尊重し,最善の治療を提案,一緒に進んでくれます。
どれでも好きな方法を選んでいただきたいと思います。
しかしながら,一点だけお願いしたいことがあります。
3つの方法,どれを選んだとしても,あることだけはしてほしいのです。
それは…「自分の価値観・大切にしていること」を医療者と話してほしいのです。
例えば,仕事がとても大切で,続けたい場合,そのことを伝えてください。医療者は,その仕事ができるよう,一緒に考えてくれます。料理人や,ピアノの先生が患者の場合,副作用で手先のしびれが起こりやすい薬を避けてくれます。
医療者は患者・家族の大切にしていることを奪ってしまわないか,とても恐れています。そしてそれは,患者から医療者に伝えることで避けることができます。必ず,あなたから伝えてください。話しにくければ,看護師,薬剤師,相談支援センターなどたくさんの支えてくれる人がいます。その方々に話してみてください。
あとから振り返り,治療を納得するものに変えることはできません。むしろ振り返ったとき,選んだ治療が最善だったなと思えることが重要です。話し合いをためらわないでください。話し合うことで患者はがんとの向き合い方を見つけ,医療者はあなたらしい人生を送ることを応援することができます。
参考文献:
患者中心の意思決定支援 中山和弘 岩本貴
これからのヘルスリテラシー 中山和弘
清水哲郎&臨床倫理プロジェクト 臨床倫理エッセンシャルズ 2016 年春版