第3章 肺がんと診断されたら,まず知って欲しいこと
Q26
「人生会議」をするタイミングなのでしょうか~ACP(アドバンスケアプランニング)~

 病気を患ったり年齢を重ねていくと,今までできていたことができなくなったり,日常生活で家族や他人の手助けが必要になったりする状況が起こります。さらに,自分でものごとを決めたり意思を伝えたりすることが困難になることもしばしばです。そのような「もしも」の場合に備えて,あらかじめ周囲の信頼できる人や医療者・介護者とあなたが望む医療やケアについて前もって考え,繰り返し話し合い,その結果を共有する取り組みをアドバンスケアプランニング(advance care planning:ACP)と呼びます。

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 「人生会議」とはわが国におけるACPの愛称です。人生会議の対象となるのは「もしも」のことを想定し得る方全員ということになります。進行がんを患う患者さんは元気な状態を長期にわたり維持することが難しいと判断されるためその対象となります。進行がんを対象とした人生会議の効果については,希望の場所での療養が行われる率が上昇すること,緊急入院する確率が低下することなどが報告されています。人生会議が患者さんや家族に直接的にどのような効果を与えるかについてはまだ不明な点もありますが,患者さんと医療者・介護者が,より病気が進行した場合の診療内容や生活サービスについて話し合うことは,患者さんが自分らしく生活するために役立つことは明らかです。

 人生会議は強要されるものではありません。「もしも」の話なんてまっぴらごめんだという患者さんはその自分らしさを大切にすればよいのです。人生会議を患者さんが望んだとき,最適な人生会議を医療者・介護者と進めていくには両者の間に良好な関係(信頼関係)があり,患者さん自身が「もしも」のときに自分がどうしたいか(どのような治療を受けたいか,どのような治療は受けたくないか,何を大切に生活したいか,療養の場所はどうしたいかなど)を医療者・介護者と素直に話し合えることが重要です。つまり,人生会議とは患者さん自らが主体となる全人的なケアのひとつであるといえるでしょう。そう考えると「進行がん」と告知されたとき,あるいは「完治が難しい」という説明を聞いたときが人生会議を開始するべきタイミングと考えられます。

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