胸膜中皮腫に対する治療は,①外科治療,②薬物療法,③放射線療法,④緩和ケアがあり,病気の進行度や種類,患者さんの年齢や元気さによって,単独もしくはこれらを組み合わせて(集学的治療)行われます。一般的には,切除が可能であれば手術を含む集学的治療が行われ,手術が難しい場合には薬物療法が治療の主体になります。ただし,胸膜中皮腫はまれな疾患であるため,これらの治療法の組み合わせや順序についてはいまだ確立されていません。
一般的には国際中皮腫研究会(IMIG)による病期分類Ⅰ~Ⅲ期で上皮様の場合に選択されます。術式は,胸膜のみを切除し肺は温存する「胸膜切除/肺剥皮術(P/D)」と,胸膜と肺をまとめて切除する「胸膜肺全摘術(EPP)」があります。どちらもからだへの負担が大きい手術ですので,術前の全身状態の評価に基づいて,メリットやデメリットについて外科医とよく相談してください。
外科治療や放射線療法が局所治療であるのに対して,薬物療法の特徴は全身のがん細胞に効果を発揮する全身治療であることです。手術を含む集学的治療として行われる場合はシスプラチンとペメトレキセドという2種類の抗がん剤を組み合わせる併用療法が標準治療です。手術が難しく抗がん剤(細胞傷害性抗がん薬)による治療(化学療法)単独で行われる場合の一次治療は同じくシスプラチンとペメトレキセドを組み合わせる併用療法,もしくは免疫チェックポイント阻害薬であるニボルマブとイピリムマブとの併用療法が標準治療です。二次治療以降の治療薬としてはニボルマブ単剤やペメトレキセドを含む治療が検討されます。
単独で行われることはまれで,多くは集学的治療の一環として外科治療や薬物療法と組み合わせて行われます。とくに胸膜肺全摘術後の補助療法として効果が期待されています。また,局所再発時にも痛みをやわらげる目的で行われることがあります。
病気の進み具合によらず,患者さんやその家族の身体的,精神的,社会的なつらさを軽くするのが広い意味での緩和ケアです。その中で苦痛をやわらげるための放射線療法や薬物療法が積極的に行われており,治療や日常生活が行いやすくなるよう支援しています。以前は,病状が非常に進行してから(いわゆる終末期)行われていましたが,現在では早期から緩和ケアを導入することが勧められています。