第2章 肺がんの診断に必要な検査
Q10
細胞や組織を詳しく調べることで何がわかるのでしょうか

 病気の部分(病変)から組織を一部採取する検査(生検)を行って,がん細胞が確認されると初めて「肺がんである」という診断が確定します。

 肺がんは,顕微鏡けんびきょうで見るがんの顔つき(病理組織学的な特徴)によって,大きく4つのタイプに分けられます。小細胞しょうさいぼうがん,せんがん,扁平上皮へんぺいじょうひがん,大細胞だいさいぼうがんです。小細胞がんは,転移しやすく,進行が速い代わりに,抗がん剤(細胞障害性抗がん薬)による治療(化学療法)や放射線療法の効果が得られやすいので,以前からほかの3つの型とは治療方針が分けられています。そのほかの3つの組織型は,通常,非小細胞ひしょうさいぼうがんと呼ばれます(Q2参照)。

 肺がんと診断がつくと,それぞれの組織型によって勧められる治療方針が異なるため,とくに小細胞がんなのか非小細胞がんなのかの区別は重要です。また,近年は治療薬を選択する際に,がん細胞の遺伝子を調べることがあります。これは,がん細胞がどんどん分裂し,がん組織が大きくなっていく原因となる遺伝子の異常があると,それを抑える薬剤の使用が可能となったためです。肺がんで最も多く見つかる遺伝子の異常はEGFRイージーエフアール遺伝子変異です。ほかにALKアルク融合遺伝子,ROSロス1ワン融合遺伝子,BRAFビーラフ遺伝子変異などがすでにわが国で薬剤の使用が可能となっている遺伝子の異常です。そのほかにも遺伝子の変異はいくつも知られていますが,薬剤の開発が途中のものもあり,そうした薬剤の治験(開発中の薬剤を企業が臨床試験というかたちで有効性と安全性を評価するもの)が行われているものもあります。これらの遺伝子変異があるかどうかを検査するためには,特殊な遺伝子検査が必要になることがあります。

 また,免疫チェックポイント阻害薬の効果を予測するために,がん組織のPDピーディーL1エルワンタンパクの検査を行うことがあります(Q44参照)。このように,治療方針の決定のためにがん細胞や組織を詳しく調べるのです。

このページの先頭へ