第3章 肺がんと診断されたらまず知って欲しいこと
Q24
子どもが欲しいのですが,がんになっても可能でしょうか

 がん治療は生殖機能に影響を少なからず与え,生まれてくる子どもの先天的な異常の原因になることも報告されています。がん治療の中でも薬物療法は自然妊娠が難しくなることがあり,将来子どもをもちたいと願う世代の患者さんには,治療を始める前に,妊娠する能力あるいはその機能(妊孕性にんようせい)を温存するための医療を受けることをお勧めします(生殖医療は自費診療となります。自治体によっては補助制度を設けています)。

 年齢が若い肺がん患者さんにとって妊孕性の温存は重要な問題です。この数年の間にがん治療を担当する医療者側にも「患者さんのがんおよび全身状態とがん治療が生殖細胞および妊孕性に及ぼす影響を考慮し,妊孕性温存を検討する」ことが勧められるようになりました。

 肺がん薬物療法では使用される薬剤によっては生殖機能が低下し,子どもができにくくなることがあります。例えば「シスプラチン」は卵巣や精巣の機能に影響を及ぼすことが指摘されています。肺がんの進行しだいで行われる脳や骨盤への放射線照射も生殖機能への影響が懸念されます。

 まずは,がんと診断されてから治療に入るまでの期間,子どもをもつことについて担当医に相談しておくことが重要です。具体的にはパートナーがいる場合,治療の前に精子と卵子を取り出して人工受精させたはいを凍結保存しておくことが可能です。将来的に子どもをもちたいという女性は卵子の保存,男性は精子の保存が可能です。この際,肺がんの臨床病期(ステージ)や治療方針も重要な情報となりますので,まずは担当医と相談してください。

 現在,肺がん薬物療法で使用される薬剤のほとんどが生殖機能に及ぼすデータがなく,また胎児への影響は明らかになっていません。薬物療法を行っている方は必ず避妊をしてください。がん治療後に妊娠を希望される方は担当医と必ず相談しましょう。

 もしも,妊娠中に肺がんと診断された場合は,妊娠の週数や,肺がんの組織型,臨床病期による治療方針をもとに担当医や産婦人科医との相談が必要になります。

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妊よう性(国立がん研究センターがん情報サービス)など
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