第4章 治療の概要 4-2.放射線治療
Q36
放射線療法の実際,治療の流れについて教えてください

 最初に放射線療法専門の放射線腫瘍医ほうしゃせんしゅよういが患者さんを診察し,各種の画像検査,血液検査などの情報をもとに患者さんの体力や病気の進み具合に合わせて最も良い治療方法を決めます。放射線療法と外科治療(手術)を併用する場合,抗がん剤(細胞障害性抗がん薬)による治療と併用する場合,放射線療法だけの場合などがあります。

 放射線療法開始の方針となったら,治療計画用のCTを撮影します。治療計画放射線腫瘍医が診察や画像検査の結果をもとに照射の部位と方向,線量などを決定します。最近では治療体位で撮影したCT画像をもとに治療計画(CTシミュレーション)を行います。とは,放射線療法を始める前に最適な照射範囲や方向を決めることです。かつてはX線シミュレータによる二次元治療計画が行われていましたが,最近ではCTシミュレータによる三次元治療計画が一般的です。三次元治療計画では,治療を行うときと同じ姿勢でCTを撮影することで,実際の治療時における腫瘍と正常組織との位置関係を三次元的に把握し,精密な計画を立てることができます。また,完成した治療計画どおりに毎回正確に照射できるように,CT撮影時には患者さんの皮膚に消えにくいインクで印をつけます。このインクはお風呂に入ったくらいでは消えませんが,大切な印ですので石けんなどでこすって消さないようにしてください。CT撮影,治療計画から精度チェック(計画どおりの線量が照射されることを事前に測定し検証すること)まで,治療の準備には数日を要する場合があります。

 治療計画が完了したら,実際の照射は,直線加速器〔リニアック(Q37参照)〕が設置されている放射線治療室で診療放射線技師しんりょうほうしゃせんぎしが行います。患者さんに治療計画のときと同じ姿勢で治療台に横になっていただき,治療計画でつけた皮膚の印に合わせて照射します。1回目の治療では,照射を始める前に皮膚の印に合わせた照しょう射しゃ野やと治療計画の照射野が一致しているかを確認するためのX線撮影を行います。治療期間中も何度か撮影し確認することがあります。

 がん細胞は照射期間中も増殖していますので,放射線療法を途中で休み,照射期間が延長すると治療の効果が弱まります。したがって,いったん開始した放射線療法はできるかぎり休止することなく予定の日数で終了させることが大切です。

 照射期間中,放射線腫瘍医は定期的に患者さんを診察し,治療効果の判定や放射線療法に伴う合併症が出ていないかチェックします。また,放射線治療科(放射線腫瘍科)の看護師が放射線療法中の患者さんの看護を担当します。担当医に聞きにくいことなど何でも相談してください。

 放射線の効果は治療期間中に現れることもありますが,終わってしばらくしてから現れることもあります。合併症も,治療が終わってから数力月あるいは数年経って現れることがあるため,放射線療法が終わった後も,放射線腫瘍医による定期的な診察が必要です。

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