第4章 治療の概要 4-2.放射線治療
Q38
放射線療法に伴う合併症について教えてください

 胸部への放射線療法中にみられる合併症には,白血球減少,貧血,食事のときにしみたり痛んだりする放射線食道炎などがあります。放射線療法の合併症は照射した部位にしか現れないので,胸部に照射しても髪の毛が抜けることはありません。化学放射線療法(薬物療法+放射線療法)では,抗がん剤(細胞障害性抗がん薬)特有のむかつきや食欲不振,手足のしびれなどの合併症が加わり,また放射線療法による合併症も強く出ます。ただし,通常,このように照射期間中に現れる合併症は,治療終了後,時間とともに改善します。

 肺は放射線の影響を受けやすく,とくに40Gyグレイ以上照射された場所は高い頻度で照射終了直後〜数力月後に「放射線肺臓炎」を起こします。放射線肺臓炎は通常,照射野に一致してみられ,症状のないこともしばしばです。多くは少しせきが出る程度で知らないうちに治まってしまいますが,ときに発熱,息苦しさなどの症状で重症化することがあります(2〜8%程度)。残念ながら,まれに放射線肺臓炎が原因で亡くなる患者さんもいます(1〜3%程度)。高齢の方,慢性肺疾患などの肺合併症を有する方,喫煙歴がある方などは放射線肺臓炎の危険性が高くなることが知られています。

 放射線療法後,何年も経ってから起こる合併症(晩期合併症ばんきがっぺいしょう)のひとつに,下半身の麻痺まひを生じるような放射線脊髄症ほうしゃせんせきずいしょうがありますが,現在では,治療計画に基づいて,脊髄への合計線量を影響の受けにくい安全な範囲に設定していますので,その心配はほとんどありません。

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