第4章 治療の概要 4-4.緩和ケア
Q46
緩和ケアとはどういうものですか。どうすれば受けられるのでしょうか

 緩和ケアとは,重い病を抱える患者さんやその家族ひとりひとりの,からだやこころなどのさまざまなつらさをやわらげ,より豊かな人生をおくることができるように支えていく医療やケアのことです。

 がんとつき合っていく中で,痛みや息苦しさなどの「身体的苦痛」,不安や気分の落ち込みなどの「精神的苦痛」,仕事や経済的な問題などの「社会的苦痛」,人生の意味への問いや価値観・死生観の変化などの「スピリチュアルな苦痛」のような,さまざまな苦痛(全人的苦痛)を経験されるかもしれません()。

 がんと診断を受けたときから,これらのさまざまな苦痛をやわらげる緩和ケアを,がん治療と並行して受けることで「QOL(生活の質)」が良くなることが期待されます。担当医・看護師・薬剤師はもちろん,「身体的苦痛」には緩和ケア医・麻酔科医・放射線治療医・理学療法士・歯科医・歯科衛生士・栄養士など,「精神的苦痛」「スピリチュアルな苦痛」には精神科医・臨床心理士など,「社会的苦痛」には医療ソーシャルワーカーなどのさまざまな職種の専門家が,これらの苦痛をやわらげ,上手にがんと付き合っていけるようサポートします。

 緩和ケアは,いつでも,どこでも,誰でも受けられるよう体制作りが進んでいます。けっして終末期のみに行われるものではありません。がん治療医も緩和ケアの研修を受けており,患者さんにがん治療と同時に緩和ケアを提供したり,緩和ケアの専門家への橋渡しを行うことができます。実際に,早い段階からがん治療と並行して緩和ケアを受けた肺がん患者さんではQOLが良くなり,抑うつが改善し,さらに生存期間が延長する可能性も示唆されたという報告があり,早期から緩和ケアを受けることが重要であると考えられています。

 緩和ケアの相談には,外来通院中は「がん相談支援センター」や「緩和ケア外来」,入院中は「緩和ケアチーム」,在宅療養中は「在宅医・訪問看護師・ケアマネジャー」が主に対応します。緩和ケアの窓口がわからない場合には,身近な担当医や看護師に遠慮なく声をかけ相談してください。

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