第8章 悪性胸膜中皮腫
Q82
救済制度があると聞いたのですが,申請の手順などを教えてください

 悪性胸膜中皮腫を発症された方には「労働者災害補償保険制度ろうどうしゃさいがいほしょうほけんせいど(以下,労災保険制度ろうさいほけんせいど)」と「石綿健康被害救済制度せきめんけんこうひがいきゅうさいせいど(以下,石綿救済制度せきめんきゅうさいせいど)」の2つの救済制度があります。

1. 労働者災害補償保険制度

 労災保険制度とは,仕事が原因でアスベスト(石綿せきめん)に曝露ばくろされ,悪性胸膜中皮腫を発症した方が受けられる救済制度です。病気のために療養したり,休業したり,またお亡くなりになられた場合に,本人および家族が労災保険の給付を受けることができます。給付内容は療養給付,休業給付,疾病年金,障害給付,介護給付,遺族給付ならびに葬祭料と多岐にわたります。一般に,労災保険による救済を受けるためには,業務が原因で悪性胸膜中皮腫を発症したものであると労働基準監督署から認定を受ける必要がありますので,最寄りの都道府県労働局や労働基準監督署に問い合わせてください。

2. 石綿健康被害救済制度

 石綿救済制度とは,アスベストによる健康被害を受けられた方やその遺族の方のうち,労災保険制度の対象とならない方を対象とした救済制度で,医療費,療養手当,葬祭料などが給付されます。救済制度は悪性胸膜中皮腫を発症された方のうち,労災保険制度が適用とならなかった方すべてが対象です。最寄りの保健所や地方環境事務所に申請請求を行う必要があります。申請請求後,環境再生保全機構を通じて審査が行われ,認定されれば給付金を受けることができます。

 いずれの救済制度においても本人からの申請の後に,中央環境審議会によって医学的事項の確認(診断に誤りがないかを確認)が行われますので,認定されるまでは2〜3カ月程度(場合によってはそれ以上)の時間が必要です。また,これらの救済制度の認定を受ける前にお亡くなりなられた方の遺族に対しても,一定の期間内に申請することで認定を受けることが可能です。詳細は最寄りの都道府県労働局や労働基準監督署,もしくは環境再生保全機構に問い合わせてください。

 なお,救済制度の対象疾患は,アスベストを吸入することによって発生し得る指定疾病(中皮腫,肺がん,著しい呼吸機能障害を伴うアスベスト肺やびまん性胸膜肥厚)が対象となりますので,悪性胸膜中皮腫以外の指定疾病の方においても申請は可能です。

 申請について分からないことがあれば,担当医やがん相談支援センターに相談してみましょう。

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