はじめに
はじめに

 このたび,肺がんに関する患者さんとご家族向けの「肺がんガイドブック」を日本肺癌学会から出版することになりました。日本肺癌学会は肺がんおよびこれに関する領域の研究の進歩ならびに知識の普及をはかり,もって患者さんをはじめ広く人類の健康と福祉の増進に寄与することを目的として活動しています。この活動のひとつとして医師向けの「肺癌診療ガイドライン」を定期的に改訂,発行してきました。一方,患者さん,市民向けの情報は限られており,日本肺癌学会は,認定NPO 法人西日本がん研究機構( WJOG )が平成19 年から出版してきた患者さん向けガイドブック「よくわかる肺がんQ&A 」を公認するかたちでこれを推奨してまいりました。このガイドブックは平成26 年までの7 年間に医学の進歩に合わせた改訂が3 回重ねてられてきました。それから5 年が経過し,この間の肺がんの診断法,治療法の進歩は著しく,これに追いつくためには新たな内容への改訂が求められていました。今回,日本肺癌学会では患者さんに最適な肺がん医療を受けていただくために,医師向けの「肺癌診療ガイドライン」に準じた患者さん,家族向けのガイドブックを企画しました。患者さん向けのガイドブックは,読んでいただく患者さんの疑問や不安にこたえるものでなければなりません。そこで,WJOG がこの20 年弱の間に開催した,市民公開講座で寄せられた患者さんからの質問を集約し,専門家集団「日本肺癌学会」の学術的見解をもとに解説したものが望ましいと考え,WJOG 版「よくわかる肺がんQ&A 」に,日本肺癌学会が新しい時代の変化に伴う改良・改善を加えて本書を作成しました。

 今回の出版にあたっては,以下の点に配慮しました。

  • ①新たに標準治療となった免疫チェックポイント阻害薬の治療を追加
  • ②ゲノム医療の進歩によって,他のがんに先駆け肺がんで開発が進んでいるがん分子マーカーと分子標的治療薬について追加
  • ③肺がんの治療にとどまらず,肺がんの治療を受けながら仕事や生活を安心して続けられる生活・就労支援の情報を追加
  • ④企画段階から編集・発行まで,肺がん患者さんにも参加していただくこと
  • ⑤肺がんの解説に加え,日本肺癌学会がかかわる悪性胸膜中皮腫,胸腺腫・胸腺がんの解説を追加

 上記の点を認識したうえで,肺がん患者団体連絡会の代表者やさまざまな職種の編集委員が協力し,5 年間の肺がん診療の進歩をカバーする書籍となりました。

 本書は,どなたでも手軽に入手できるよう,医学書専門店のほか,全国の書店店頭での注文購入,インターネットでの購入が可能です。また,WJOG 版「よくわかる肺がんQ&A 」同様に,安価で購入することができます。本書を希望されるすべての方のお手元に届くことになれば幸いです。

 日本肺癌学会は,研究のみならず社会への啓発活動として市民公開講座,肺がん患者会との協力,メディア・社会に対してがん医療の最新情報提供を行ってきました。玉石混交の医療情報があふれ,情報の選択が大切になるなか,本書をご利用いただき適切な肺がん医療情報を参考にしていただけましたら幸甚です。

令和元年12 月

特定非営利活動法人日本肺癌学会

理事長 弦間 昭彦

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