2014年版 序

肺癌診療ガイドラインは,「厚生科学研究費21世紀型医療開拓推進研究事業EBM研究分野」の助成による「EBMの手法による肺癌の診療ガイドライン策定に関する研究」班(代表者:藤村重文)によって2001年〜2002年度に初版がまとめられ,2003年に「EBMの手法による肺癌診療ガイドライン」として出版された。翌年に著作権が研究班から日本肺癌学会に移譲され,その後の改訂は日本肺癌学会で行われることになった。

日本肺癌学会では,2003年からガイドライン検討委員会を組織し,2005年に改訂第2版を発行した。2005年版までは,診療(診断・治療法)別と組織型・病期別に分けて構成されていたのが大きな特徴であった。診療別ガイドラインは,肺癌の診断(検診を含む),化学療法,放射線治療,外科治療の4領域に,術前術後併用療法,中心型早期肺癌の診断・治療の項目を加え,計6項目(6章)から成っていた。組織型・病期別ガイドラインでは,非小細胞肺癌I期〜IV期の4項目,小細胞肺癌のI期,限局型,進展型の3項目の計7項目(7章)に分けて整理されていた。しかし,2005年版の問題点として,他の主要がん種の診療ガイドラインで整理されている診療樹形図(アルゴリズム)が整備されていないこと,診療別と組織型・病期別のガイドラインの記載の一部に整合性がとられていなかったことが挙げられた。そこで,診療別の横断的な共通項目は別にまとめ,治療方針に関るガイドラインは樹形図に基づく組織型・病期別ガイドラインに統一する方針となった。また,検診は健康人を対象としているため,検診の推奨レベルは診療の推奨レベルと基準が異なることから,2010年から「集団検診ガイドライン」は診療ガイドラインから独立して掲載されることになった。

一方,肺癌領域では毎年公表される論文数が非常に多く,刻々と公表される重要なエビデンスへの対応を迅速に行う必要が生じてきた。そこで,UICC-TNM分類の改訂(第7版,2010年)に併せて大改訂を行い,その後は毎年定期的に小改訂を行うこととし,WEB上での公開を原則としてきた。

以上のような経緯を経て,肺癌診療ガイドラインの整備が一段落したため,今回2014年版として出版することとなった。

今回のガイドラインの大きな変更点は,樹形図に基づいた編集としたこと,従来の推奨グレード「C 行うよう勧めるだけの根拠が明確でない」を「C1 科学的根拠は十分ではないが,行うことを考慮してもよい」と「C2 行うよう勧められるだけの科学的根拠が明確でない」との2つに分けたことである。さらに,推奨グレードの決定に際しては,エビデンスのみでなく実際の臨床状況に十分配慮する必要があることから,医療資源,保険制度などの適応性や有益性に関わる害やコストについても議論した。また,教科書に記載されている内容や国際的にも多くのガイドラインで推奨され,実地医療で常識的に行われているものは推奨すべきものとして記載した。また,実地医療の参考となるよう化学療法の具体的レジメンを提示することとした。

今回の改訂版には未だ検討の余地がある内容も少なからず含まれているとは思われるが,今後の改訂に向けて会員諸氏のご意見,ご評価を頂ければ幸いである。

最後に本ガイドライン作成にご尽力頂いたガイドライン検討委員会と各小委員会の多くの委員・協力者ならびにご評価いただいた多くの会員の皆様に深く感謝申し上げる。

2014年10月

  • 特定非営利活動法人日本肺癌学会
  • 理事長 中西 洋一
  • ガイドライン検討委員会
  • 委員長 早川 和重
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