2019年版 序

 肺癌診療ガイドライン2019年版—悪性胸膜中皮腫・胸膜腫瘍含む—の発刊にあたりご挨拶申し上げます。

 我が国の肺癌診療ガイドラインは,診療ガイドラインの世界標準であり,日本医療機能評価機構の医学情報サービスMinds 診療ガイドライン作成マニュアルも準拠しているGRADEシステムに対応しております。EBMに基づくことは当然でありますが,コンセンサスベースで,臨床現場の問いに答える形をとることにより,エビデンスが十分に生まれない部分にも対応する実践的ガイドラインになったと考えますが,一層,読者の皆様のお役に立つものに育てていくために広くご意見をいただければ幸いです。

 肺癌診療は,分子標的治療の進展による個別化治療の標準治療化,免疫療法の確立,遺伝子診断を中心とする分子診断,放射線照射技術の進歩,手術支援ロボットの開発など,変化の時代を迎えました。ビッグデータ利用,人工知能,仮想現実,拡張現実などの新しいテクノロジーが速度を上げ進歩しており,今後,この数年の間に,より大きく変貌しようとしています。一方で,肺癌診断早期からの緩和ケアの重要性も高まっており,2019年版では緩和ケアについての新規CQを追加しました。このような時代の診療の拠り所として,診療ガイドラインは,存在する意義が高まっていると考えます。コンセンサス形成におけるデータ利用,診療ガイドラインの客観的評価,透明性の維持など,ガイドラインに関する問題点を十分に意識しつつ,「肺癌診療ガイドライン—悪性胸膜中皮腫・胸膜腫瘍含む—」は,進化していきます。

 また,日本肺癌学会では,この肺癌診療ガイドラインに準じた患者さん向けの「患者さんのための肺がんガイドブック—悪性胸膜中皮腫・胸腺腫瘍を含む—2019年版 」を初めて出版いたしました。玉石混交の医療情報があふれるなか,患者さん及びご家族に対して適切な医療情報を提供できるものと考えています。

 最後になりますが,今回の本ガイドライン作成にご尽力いただいた各委員会,小委員会の皆様に深甚なる感謝の意を表します。

 2019年11月

特定非営利活動法人日本肺癌学会
理事長弦間 昭彦
ガイドライン検討委員会
委員長中山 優子
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