肺がん検診について

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肺がん検診委員会からのお知らせ

「肺癌診断を主とした胸部X線読影講習会」の受講証に関して(2023.9.10)

「肺癌診断を主とした胸部X線読影講習会」として認定された講習会では、受講者の「当該講習会への参加の証明」として、「受講証」を発行することとしています。その、「受講証」に記載すべき必須項目として、

1)受講者氏名、2)講習会の名称、3)実施日時、4)主催者、5)現地講習かweb参加か、の5項目が含まれている必要があります。

この度、「受講証」の雛型を準備しましたので、ご活用ください。

受講証明書

2023年9月10日
日本肺癌学会肺がん検診委員会
委員長 芦澤和人

 

肺がん検診実施における新型コロナウイルス感染症への対応について(2023.6.6)

新型コロナウイルス感染症の位置づけが令和5年5月8日をもって「5類感染症」に移行されました。それを受けて肺がん検診を実施する際の注意点についてもいくつかの見直しが行われましたので、ご参照ください。

1) 検診会場での受診環境
 検診会場では、「3密(密閉・密集・密接)」を避け、受診者・検診従事者ともマスク装着を原則とする。
 検診受付後、速やかに問診等を行い、受診者の健康状態を確認し、発熱があるなど、検診受診者として不適当と判断した場合は、受診者に説明した上で、後日体調が回復するなど安全を確認してからの受診を勧める。
 室内の換気は、1時間に2回以上定期的に窓やドアを開けるなどして十分に行う。ただし換気装置が稼働し、十分な換気量が確保されている場合は、窓やドアの開放は必須ではない。
 検診従事者は手指および手指が触れた場所の消毒を行う。
 検診従事者は発熱や体調不良等の症状を認めるときは職場に連絡し、医療機関を受診する。
 出勤後に検診従事者が体調不良や発熱を訴えた場合、当該検診従事者の勤務を直ちに停止し、速やかに医療機関受診を指示する。
 受診者が触れる箇所を、定期的にアルコール消毒液や次亜塩素酸ナトリウム消毒液により清拭する。

詳細については、『8団体合同マニュアル:健康診断実施時における新型コロナウイルス感染症対策について』等の情報を参照するのが望ましい。

2)胸部X線撮影について
 受診者が触れる箇所を、定期的にアルコール消毒液や次亜塩素酸ナトリウム消毒液により清拭する。
 新型コロナウイルス感染を疑う所見が認められた場合は、直ちに当該受診者に状況を説明し、医療機関の受診を勧奨する。

3)喀痰細胞診について
 喀痰細胞診容器を対象者に渡す際に、提出時に液漏れが起こらないように、容器の蓋を正しく閉めることを十分説明する。提出された喀痰容器を取り扱う検診従事者は、グローブとマスクを着用し、作業終了後は手指消毒を行う。

2023年6月6日

日本肺癌学会肺がん検診委員会
委員長 芦澤和人

「肺がん検診の手引き」にて「読影医の条件」に挙げられている「症例検討会・読影講習会」をどのように受講すべきか不明な先生方への御説明 (2022.4.21)

 

肺がん検診委員会では、2022年4月13日付で、「『肺がん検診のための胸部単純X線症例検討会』および『肺癌診断を主とした胸部X線読影講習会』の実施要項、および『肺癌診断を主とした胸部X線読影講習会』の申請受付の開始について」と題した通知をホームページ上にアップすると共に、日本肺癌学会会員の皆さんへ通知メールを配信しました。その後、それらの症例検討会や読影講習会をどのように受ければ良いのか、という御質問がいくつか寄せられています。そこで、それに対する回答としてこの文章をアップすることにいたしました。

まず、肺癌取扱い規約第8版(補訂版)から、「肺がん検診の手引き」の中の「読影医」の条件として「症例検討会(肺がん検診のための胸部単純X線症例検討会)・読影講習会(肺癌診断を主とした胸部X線読影講習会)へ年1回以上参加すること」が加わったことは御存じと思います。そうなった経緯については、委員会報告として、雑誌「肺癌」2020;60:929-935(「肺がん検診の手引き」2020 改訂のねらい ―特に「読影医の条件」と「症例検討会の実施」について―)に報告してありますので、御一読頂きたく存じます。今回、「申請」や「認定」の用語を使用しておりますが、「認定制度」や「認定医」とは無関係であり、あくまで「精度管理」の問題であることを御理解下さい。

いわゆる「やりっぱなし検診(読影はするが、その後の結果については関知しない。そもそも精密検査結果を調べることすらしない)」を行っている検診機関が存在していることは以前から問題であったわけですが、国内で大きく報道された「見逃し事案」などを受けて、「せめて、要精検とした受診者の精密検査結果ぐらいは、検診機関に調査してもらおう。その結果を検討する会に読影医にも参加してもらうことで、読影医の読影能力向上にもつながる」という観点から、「読影医に参加してもらう症例検討会の実施を検診機関の責務とした」のが今回の改訂です。ただし、「症例検討会をしたことが無い」という機関もあると思われ、すぐには対応できないところもあるだろうから、その場合には「読影講習会を代替として認める」としたわけです(ただし、肺癌を中心とした胸部X線の読影に関する講習会でなければ意味がありませんので、そのような条件はつけたわけです)。

したがって、既に肺がん検診の読影に従事されている先生方の地域で「現時点で参加できる症例検討会・読影講習会が無い」という場合には、まずは、先生方が読影を委託されている検診機関に対して、「『肺がん検診の手引き』では、検診機関の責任で『肺がん検診のための胸部単純X線症例検討会』を実施することが求められていますので、その方向で検討してください。当該症例検討会の開催方法のノウハウなどは肺癌学会のホームページに詳述されています」との意見を具申して頂きたいのです。特に、県や地域の肺癌診療の中心となっているような先生方におかれましては、検診機関に対する影響力がきわめて大きいと考えられますので、そのような御指導をお願いいたします。

また上記の検討会の実施がすぐには難しい場合、次善の策として「肺癌診断を主とした胸部X線読影講習会」の開催を、検診実施機関に求めていただきたく存じます。この読影講習会についても、詳しい実施要項をホームページにアップしてあります。こちらは、講師さえ見つかって費用をかければ、実施にあたり手間や作業はあまり要りませんが、委員会としては、精度管理の点から望ましいのは「読影講習会」よりも「症例検討会」だと考えており、そちらを強く推奨しています。

「読影講習会」に関しては、現実に「画像読影に関する講習会」は国内で多数行われていて、主催は学会・研究会・医師会・自治体などさまざまな状況で実施されているわけですが、それらが「胸部X線を主としたものか」「肺がん・肺腫瘤を主としたものか」は、主催者以外は良くわからないことが少なくありません。ましてや、他の地域で行われているものがそれに合致しているかどうかを事前に知ることは困難です。そのために、「この目的に合致した講習会である」ことを主催者側から申告していただき、それを公表することによって、他地域の先生方も参加することができる、という仕組みを今回構築したわけです。ただし、5月から受付開始ですので、8月以降に実施する講習会のみに適用され(7月までに実施する講習会では、主催者判断あるいは参加者判断で結構です)、また、全国に周知されるまでに時間がかかることが想定されますので、順調に動くまでには若干の期間(数か月以上)を要すると思われます。それまでの間は、準備期間と言うような位置づけとなってもやむを得ないものと判断しておりますので、ご容赦頂けますよう御願い申し上げます。(なお、5月に申請された読影講習会のうち合致していると判断されたものについては、5月末までに「肺がん検診について」のページに公表される予定です)

なお、日本肺癌学会学術集会で行われている「肺がん検診読影セミナー」は「読影講習会」の要件に合致している、と判断していますので、これに参加すれば「読影医」の要件はクリアできることになります。ただし、学術集会への参加費などがかかりますので、本委員会としては「肺がん検診読影セミナーに全員が参加すれば良い」と考えているわけではなく、各地でこの目的に合致した講習会が多数開かれること、さらには、多くの検診機関で症例検討会が行われ、当該検診機関における検診結果・精検結果などを自己評価できる体制が構築されることを、より期待しています。

以上のような経緯で新たに導入したシステムですが、これを契機に各検診機関で実効性のある症例検討会が行われるように、先生方からも御指導して頂ければ、本邦の肺がん検診のレベルアップに大きく資することになるのではないかと思います。
御協力頂けますよう、よろしくお願いいたします。

2022年4月21日
肺がん検診委員会
 

「肺がん検診のための胸部単純X線症例検討会」および「肺癌診断を主とした胸部X線読影講習会」の実施要項、および「肺癌診断を主とした胸部X線読影講習会」の申請受付の開始について(2022.4.13)

肺がん検診委員会では、肺癌取扱い規約第8版から「胸部X線による肺がん検診の読影医」に関して「検診機関などで開催される『肺がん検診に関する症例検討会や読影講習会』に年1回以上参加すること」という要件を定めています。それに関しては、日本肺癌学会ホームページの「肺がん検診について」のバナーから、「肺癌取扱い規約 第8版 肺がん検診の手引き改訂について」「肺がん検診に関する症例検討会の具体的な準備について」などで説明されており、「参加証」の発行などを義務付けています。このたび新たに、以下についての説明文書および申請書などをアップしました。

1.「肺がん検診の手引き」にて「読影医の条件」に挙げられている「症例検討会・読影講習会」の実施要項

この中には、「肺がん検診のための胸部単純X線症例検討会」としての要件や開催方法について、および、「肺癌診断を主とした胸部X線読影講習会」としての要件、特にWEB下の要件について述べています。参加証発行の要件などについても詳しく述べており、その要件に合致した場合には、当委員会あてに申請をすることができます。当委員会の審査で要件に合致していると認められた場合には、ホームページで周知します。

「肺がん検診の手引き」にて「読影医の条件」に挙げられている「症例検討会・読影講習会」の実施要項

 

2.「肺癌診断を主とした胸部X線読影講習会」認定申請書・開催報告書

「1」で述べた「肺癌診断を主とした胸部X線読影講習会」の認定に用いる申請書と報告書です。講習会開催の3カ月前までの月の1~10日まで「肺がん検診委員会」で受付を行い、その月末までに審査の上、認定された場合にはホームページで周知します。2022年5月1日から申請の受付を開始いたします。

 

2022年6月2日
日本肺癌学会肺がん検診委員会

 

肺がん検診に関する症例検討会の具体的な準備について(2021.3.15)

 

2020年の「肺がん検診の手引き」改訂部分の「読影医の条件」および「精度管理」の項目に追加された
「症例検討会」に関しての、具体的な準備と必要な備品等についてまとめましたのでご参考いただけましたら幸いです。

2021年3月15日
日本肺癌学会肺がん検診委員会
委員長 佐川元保


症例検討会の具体的な準備について
 

 

肺癌取扱い規約 第8版 肺がん検診の手引き改訂について

 

日本肺癌学会会員の皆様へ

肺がん検診委員会では、肺癌取扱い細則 肺がん検診の手引きを以下のように変更しました。
また、改訂に関するQ&Aを掲載いたしました。

第8版からの改訂点


肺癌取扱い規約第8版「肺がん検診の手引き」改訂に関するQ&A

 

肺がん検診委員会委員長
 佐川 元保

NLSTおよびNELSONの結果に関する日本肺癌学会のコメント 2020.8.1

 

肺癌は本邦のがん死亡の第1位を占めており、その克服は国家的な急務である。わが国では胸部X線検査と重喫煙者に対する喀痰細胞診併用法による肺がん検診を行っており、症例対照研究により有効性は示されているものの、その効果は1年しか続かないなど十分とは言えず、より効果の高い検診方法の開発が望まれている。低線量胸部CTによる肺がん検診は、その点で期待できるものの一つであったが、有効性を示す証拠は十分ではなかった。2011年6月に、米国国立がん研究所が実施したNational Lung Screening Trial (NLST)1)の結果の論文が公表された。55-74歳の喫煙指数600以上の現在および過去喫煙者53,454人を無作為に2群に振り分け、研究群には1年に1回、合計3回の低線量胸部CTによる肺がん検診を、対照群には同様のスケジュールで胸部X線による肺がん検診を提供した結果、研究群は対照群に比べて肺癌死亡率が20%、全死因死亡率が7%、有意に減少することが示された。しかし、研究群の要精検率が極めて高いこと、有効性を有意に示す研究が一つのみであったことなどから、その後も低線量胸部CT検診が世界で広く利用されるには至らなかった。

2020年1月にNELSON研究2)の結果が論文として公表された。50‐74歳、喫煙指数300または375以上、現在および過去喫煙者15,789人を無作為に2群に振り分け、研究群にはCTが4回行われ、対照群は無検診であった。CT検診の間隔は、0, 1, 2, 2.5 年であり、最後の検診は最初から5.5年後となった。Volume doubling time を測定するプロトコールであり、それにより精密検査の適応なども決定した。CT検査受診率は各ラウンドで95.6%、92.3%、87.6%、66.8%であった。CT群の肺癌死亡率に関する、対照群を1とした相対危険度は0.76と有意に減少した。女性では有意ではないものの0.67と良好であった。このことは、重/中喫煙者に対する5.5年間に4回のCT検診は肺癌死亡率を減少させると考えられた。

NELSON論文の公表からはまだ時間が経っていないため、NELSON研究に対する十分な検証が行われた状況とは言えず、今後発表される関連論文などを注視する必要がある。とはいえ「有意に有効とするRCTが2つ」公表されたので、「限定された喫煙者の集団に対する毎年あるいは1年おきの低線量CT検診受診は、肺癌死亡率減少に関して有効」の可能性は高い。ただし「がん検診ガイドライン」等で「推奨される」ためには「有効」のみでなく「不利益(偽陽性・過剰診断など)が少ない」ことも必要なので、それに関する今後の検討が必要である。

さらに、対策型検診として展開させる場合には「マンパワー・機器のリソースなどが十分か」も重要である。実施施設が増えた場合の精度管理の問題も避けて通れない。一方で、今回の研究は重喫煙者に対するものであり、非喫煙者に対する低線量CT検診の有効性に関する証拠はきわめて少なく、過剰診断の懸念が大きい。日本を含むアジア人では非喫煙者でも肺癌死亡率は相当高いので、非喫煙者に対する胸部CT検診の有効性に関するエビデンスも積み重ねていく必要がある。

これらの問題は残るものの、NLSTとNELSONの結果により低線量胸部CTによる肺がん検診が喫煙者に対して死亡率減少効果を有する可能性が高くなったことを踏まえて、低線量胸部CTによる肺がん検診受診を希望する喫煙者は、医師と利益および不利益について十分な意見交換をした上で受診するか否かを決定する(shared decision-making)ことが望ましいと思われる。ただし、非喫煙者に対しては、低線量胸部CTによる肺がん検診の利益および不利益に関する証拠が不十分であることを周知する必要がある。

日本肺癌学会は、今後も低線量胸部CTによる肺がん検診の有効性評価、不利益、およびリソースに関する研究に常に注目し、国民および医師・医療従事者に対して適切な情報を提供できるように努める。また、必要に応じて日本CT検診学会を始めとする他学会等と協調しながら、国内における有効性評価、不利益、およびリソースに関する研究を推進するよう努める。

1) The National Lung Screening Trial Research Team. Reduced lung-cancer mortality with low-dose computed tomographic screening. New Eng J Med 2011;365:395-409

2) de Koning HJ, et al. Reduced lung-cancer mortality with volume CT screening in a randomized trial. New Eng J Med 2020;382:503-513

 

「肺がん検診のための胸部X線読影・自己演習システム」の胸部単純X線画像をモニタで観察する上での留意点

肺癌学会員の皆様へ

肺がん検診委員会では『肺がん検診のための胸部X線読影・自己演習システム』の胸部単純X線画像をモニタで観察する上での留意点 ~DICOM Part14に準拠した画像で読影演習ができる環境の構築方法~ を公開しました。


胸部単純X線写真をモニタで観察する上での留意点

 

*利用希望者は学会のホームページの「肺がん検診のための胸部X線読影演習システム」のバナーから入って、日本肺癌学会会員のIDとパスワードでログインしてご利用ください。



引き続き読影能力の維持向上に活用してくださいますようにお願いいたします。
 

2020年6月5日
日本肺癌学会 肺がん検診委員会
委員長 佐川元保

 

肺がん検診のための胸部X線読影演習システム開始のお知らせ(2019/5/14)

 

平素より学会活動にご尽力いただきまして有難うございます。

さて、肺がん検診委員会では、肺がん検診における胸部X線の読影力の維持向上を目指して、昨年度の総会で展示していた肺がん検診のための胸部X線読影演習システムを公開します。肺癌学会員はどなたでも利用できます。

利用希望者は学会のホームページの「肺がん検診のための胸部X線読影演習システム」のバナーから入って、日本肺癌学会会員のIDとパスワードでログインしてご利用ください。

  肺がん検診のための胸部X線読影演習システム

3つの演習コースにそれぞれ3セット各20例の演習セットが設定されています。肺がん検診の胸部X線を読影しているつもりで症例に判定を付けてください。回答ボタンを押すと正解が表示されます。最後の症例まで回答すると総合成績が表示されます。画像のセットや表示順はログインのたびにランダム化された異なる画像が提示され、またデータセット全体も定期的に入れ替えますので何度でも演習することが可能です。また、当委員会が編集した「肺がん検診のための胸部X線読影テキスト」の一部が参照可能であり、肺がん検診の判定法や胸部X線の読影の基礎も学ぶことができます。

 

システムは「Windows」に対応しており、ブラウザとして「Internet Explorer 11」での利用を推奨します。ログイン画面やコース選択画面に、利用に必要な手順や設定、注意文書がありますのでよく読んで開始してください。

なお、システムのご利用時は通常のパソコンやタブレットのモニタを利用されるため、モニタによっては所見がとりにくい画像も含まれていることや同時に利用できる人数が制限されていることをご了解ください。ログインできない場合には、時間をおいて再度トライしてみてください。

 

なお、システムに関する問い合わせは学会事務局(office@haigan.r.jp)までご連絡ください。
 

 

令和元年5月14日

日本肺癌学会 肺がん検診委員会 

委員長 佐川元保

 

 

肺癌検診における喀痰細胞診の判定区分別標準的細胞 (2015/12/25)

 

 

日本肺癌学会・日本臨床細胞学会による2学会合同委員会
日本肺癌学会集団検診委員会 喀痰細胞診による肺癌検診小委員会
日本臨床細胞学会 肺癌検診ワーキンググループ

 肺がん検診における喀痰細胞診は、肺門部早期肺癌の唯一のスクリーニング法であるが、地域によっては喀痰細胞診発見肺癌症例がほとんど認められないなどの問題点も包含している。日本臨床細胞学会ならび日本呼吸器内視鏡学会、日本肺癌学会による喀痰細胞診の合同委員会報告(肺癌2011;51:777-86)では、2006年、2007年に診断された肺門部早期肺癌ならびに肺門部進行扁平上皮癌の症例アンケートを実施した。その結果、全国における肺門部早期肺癌の初回診断数は年間150〜270例と推定され、喀痰細胞診が主たる発見動機であった。進行肺門部扁平上皮癌数は年間約4000例と推定され、肺門部扁平上皮癌における早期の比率は10%以下であった。また、この比率は、地域差も認められた。(北海度16.7%、東北14.5%、近畿4.1%、東海5.5%などと地域別に有意差が認められた。)

 合同委委員会報告で認められたこの地域格差の原因については、喫煙率の相違、罹患率の相違、診断精度の相違など様々な指摘がなされているものの、依然として正確な原因は不明である。喀痰細胞診は難度の高い細胞診領域の一つで、肺がん取扱い規約等で所見が提示され,各施設により所見が発表されているが,未だに地域あるいは施設間に細胞所見判定のばらつきがある可能性が推測される。しかし,その実態は明らかではなく,所見の標準化が十分になされているとは言い難い。

 全国的に肺がん検診における喀痰細胞診発見症例がきわめて少ないことは放置できない問題であり,発見成績において実績のある複数の施設の既成標本を用いて所見の標準化を図ることは極めて重要である。

 今後、喀痰細胞診の有効性評価を行う上でも、こうした地域較差や施設較差が存在するのであれば、それは解消されるべきである。そして、較差是正に向けてまず取り組むべき事は、喀痰細胞所見判定の標準化と考えられる。そこで、合同委員会では、肺がん検診の喀痰細胞診に長年従事してきた6施設より喀痰細胞診標本150症例を集積し、再判定を行い、原則として6施設の判定が一致した症例を各判定区分の標準細胞と定義し、ここに提示する。

標準症例概要   ・標準症例C判定  ・標準症例D判定  ・標準症例E判定

 

集団検診委員会からのお知らせ (2014/11/1)

集団検診委員会および喀痰細胞診による肺癌検診小委員会では、昨年度より喀痰細胞診による肺癌検診の改善点に関して検討し、以下のような結果を得ました。

日本の主たる喀痰細胞診肺癌検診施設における喀痰細胞診発見肺癌例を詳細に再度、解析した結果では、血痰のみによる肺癌発見例は見られませんでした。また、血痰例はいずれも喫煙歴を有しており、仮に「血痰を有するもの」という項目を除外しても、喫煙歴により喀痰細胞診検診の対象者となることが確認されました。

また、非喫煙者が喀痰検診を受診していることで、喀痰検診の肺癌発見率が著しく低値となっておりました。喫煙指数600以上の喫煙者に対する肺癌発見率はいずれの施設においても10万対100前後を示していました。一方、指針の文言が高喫煙者に限らないような表現になっていることから、一部地区では受診者全員に喀痰細胞診が行われるなど、明らかな過大解釈による不適切な検診が行われる不利益が生じております。

一方で、血痰例の中に担癌例が潜んでいたとしても、検診時の喀痰内に確実に癌細胞が存在するとは限らず、検診で偽陰性になった場合には、結果的にむしろ医療機関受診のチャンスを奪うことになってしまいかねません。一般に、症状のある例に検診を行うことは意味がないばかりかむしろ有害で医療機関への受診を勧めるべきとされています。

これらをもとに、以下のような2つの結論に至りました。

1)血痰例は、至急、医療機関での精密検査を行うことが妥当であり、検診として行うことは不適切である。

2)喀痰細胞診は、喫煙者に発生する扁平上皮癌を早期に発見するために行うべきであり、非喫煙者に対する喀痰検診は、検診費用の浪費になるばかりでなく、不要な偽陽性者の増加による受診者の不利益につながり、妥当ではない。肺がん検診として非喫煙者に対する喀痰検診を行うことは不適切である。

これらの2つの結論を受けて、

①喀痰細胞診による肺がん検診の対象者から血痰を有する者という項目を除外すること。

②喀痰細胞診による肺がん検診から非喫煙者を除外し,喀痰細胞診は喫煙指数600以上の者のみに行うこと。

の2点につき、厚生労働省がん対策・健康増進課と協議を行いました。その結果、がん検診の実施方法に関する厚労省の公的文書である「健発第0331058号がん予防重点健康教育およびがん検診実施のための指針について(以下「指針」と略)」および「がん検診の結果別人員等調査記入要綱」に関して、2014年6月に改訂が行われ、2015年度から新たな指針での運用が行われる予定です。

当然ながら「肺癌取扱い規約」の中の「集団検診の手引き」も同様な改訂が必要ですので、以下のように改訂をいたします。

肺癌取扱い規約「肺癌集団検診の手引き」の改訂点

改訂点は以下の2点です。

● 180ページ

3.検診方法
1)問診
検診受診者全員に必ず実施し、受診者の登録ならびに高危険群(喀痰細胞診が必要)の選別に用いる。

原文
a.問診の内容:氏名,生年月日,性,現住所,喫煙歴(1日平均喫煙本数,喫煙開始年齢,過去喫煙者の場合はこれに加えて禁煙時年齢),胸部の自覚症状(6カ月以内の血痰),前年度肺癌検診受診歴(X線検査,喀痰細胞診)。

変更後の文
a.問診の内容:氏名,生年月日,性,現住所,喫煙歴(1日平均喫煙本数,喫煙開始年齢,過去喫煙者の場合はこれに加えて禁煙時年齢),前年度肺癌検診受診歴(X線検査,喀痰細胞診)。

● 184ページ
3)喀痰細胞診
検診受診者中の高危険群に必ず実施し,胸部X線検査で捕捉できない肺門部の癌の発見を目指す。

原文
a.高危険群:問診によって次の条件の一つに該当するものを肺門部肺癌の高危険群とする。

i.50歳以上の男・女で,喫煙指数(1日平均喫煙本数×喫煙年数)が600以上の者(過去における喫煙者を含む)。

ii.40歳以上の男・女で,6カ月以内に血痰のあった者。

iii.その他の高危険群と考えられる者(例,職業性など)。

変更後の文
a.高危険群:50歳以上の男・女で,喫煙指数(1日平均喫煙本数×喫煙年数)が600以上の者(過去における喫煙者を含む)に該当することが問診によって確認されたものを肺門部肺癌の高危険群とする。(i. ii. iii.はすべて削除)

上記の改訂部分は、次回の取扱い規約改訂版の出版の際に反映されます。
周知のほどよろしくお願いいたします。

 

検診精査結果調査への協力のお願い (2012/12/14)

集団検診委員会より、検診精査結果調査への協力のお願いがございます。
会員の皆さまのご協力をよろしくお願い申し上げます。

お願いはこちらから

 

NLSTの結果およびそれに関連したIASLC Statement に関する日本肺癌学会のコメント (2011/10/1)

内容はこちらから



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