非小細胞肺がんの治療には,外科治療,放射線療法,薬物療法,緩和ケアがあります。医師は,
①がんの進み具合〔臨床病期(ステージ)〕(図参照)
②想定される治療の目標
③患者さんの状態:パフォーマンスステータス(PS,表参照),基礎疾患(持病),年齢など
に基づいて患者さんに最適の治療法を提案します。そのうえで患者さんがご自身の治療方法を選択します。
治療前の検査で臨床病期Ⅰ期と診断された場合,標準治療として提案される治療は外科治療です。手術に伴う症状には緩和ケアを活用します。ただし,患者さんの状態が外科治療に耐えられないと判断された場合,あるいは患者さんの希望に基づき,放射線療法が実施されることもあります。いずれの場合も,治療の目標は,がんの完治を目指すことです。一般的には70~90%の患者さんが完治します。
外科治療で切除された病変の詳細な検討に基づき,外科治療で完全に病変が取り除かれていても薬物療法を追加で実施することが勧められることもあります。
治療前の検査で臨床病期Ⅱ期と診断された場合も,標準治療として提案される治療は外科治療です。手術に伴う症状には緩和ケアを活用します。ただし,患者さんの状態が外科治療に耐えられないと判断された場合,あるいは患者さんの希望に基づき,放射線療法が実施されることもあります。患者さんの状態が薬物療法を実施できる状態の場合,外科治療で完全に病変が取り除かれた後に,薬物療法を追加で実施することが勧められています。
治療の目標は,がんの完治を目指すことです。一般的には40~70%の患者さんが完治します。
治療前の検査で臨床病期Ⅲ期と診断された場合,標準治療として提案される治療は,多くの患者さんでは放射線療法と薬物療法を組み合わせる化学放射線療法です。一部の患者さんでは,病変の分布などに基づき,外科治療が勧められることがあります。病気そのもの,治療に伴う症状には緩和ケアを活用します。
治療の目標は,がんの完治を目指すことです。一般的には20~40%の患者さんが完治します。
治療前の検査で臨床病期Ⅳ期と診断された場合,標準治療として提案される治療は薬物療法と緩和ケアです。臨床病期Ⅰ期からⅢ期の患者さんでも,最初に受けた治療の後,病気が再発した場合には,Ⅳ期と同様の考え方で治療を行うことが一般的です。さまざまな理由で薬物療法により病気を制御して対処することが難しい場合も,緩和ケアはすべての患者さんに勧められています。
治療の目標は,がんと診断されてもできるだけ長く元気に過ごし,また,がんに伴う症状をやわらげることであり,完治は難しいことが一般に知られています。
小細胞肺がんの治療には,外科治療,放射線療法,薬物療法,緩和ケアがあります。医師は,
①がんの進み具合(限局型,進展型)
②想定される治療の目標
③患者さんの状態:PS,基礎疾患(持病),年齢など
に基づいて患者さんに最適の治療法を提案します。そのうえで患者さんがご自身の治療方法を選択します。
治療前の検査で病変の範囲が,片側の肺に限局し,リンパ節転移が反対側の縦隔リンパ節や鎖骨上窩リンパ節に限られているなどの条件を満たした場合,「限局型小細胞肺がん」と呼ばれます(Q71参照)。臨床病期では,ⅠからⅢ期がおおむね限局型と一致しています。限局型小細胞肺がんと診断された場合,標準治療として提案される治療は,外科治療と術後の薬物療法,薬物療法と放射線療法を組み合わせた治療法です(Q72参照)。
いずれの場合も,治療の目標はがんの完治を目指すことです。一般的には20~30%の患者さんが完治します。
治療前の検査で病変の範囲が,限局型の範囲を越えてひろがっていると診断された場合,「進展型小細胞肺がん」と呼ばれます(Q74参照)。標準治療として提案される治療は薬物療法と緩和ケアです(Q75参照)。
治療の目標は,がんと診断されてもできるだけ長く元気に過ごし,また,がんに伴う症状をやわらげることであり,完治は難しいことが一般に知られています。
一言でいうと患者さんの元気さの指標で,0~4の5段階に分類されます(表)。数字が大きいほど,「PSが悪い」と表現されます。治療の選択に重要であり,治療後の経過をみるのにも大事な指標です。たとえば,がんの進み具合(臨床病期)によって最も勧められる治療法であっても,PSが3や4の患者さんの場合では,むしろ有害(体調悪化を早める,命に関わる)といわれています。PSが一定以上に悪い場合には,緩和ケアは有効な治療のひとつです。