第3章 肺がんと診断されたら,まず知って欲しいこと
Q13
とにかく不安で,何から考えてよいかわかりません。どうすればよいでしょうか

 がんの診断は大きなショックを伴い,不安や落ち込みは自然な反応です。徐々に気持ちが落ち着いてくることが多いですが,深刻な場合は専門的な助けが必要です。つらい気持ちは押し込めず,信頼できる人や医療者に話すことが重要です。また,医療者との信頼関係を築き,信頼できる情報源を活用して正しい情報を収集し,メモを活用して疑問や不安を整理することが効果的です。これにより,より自分らしい生活を送るためのサポートが得られることでしょう。

A

 がんと告げられて衝撃を受けることは無理もありません。ショックは計りしれないことでしょう。「もしかしたらがんかもしれない」と,がんの疑いについて告げられることでも,不安になるのは正常なこころの反応です。「どうして自分が」「まさか自分ががんのはずがない」「頭が真っ白になった」「何も覚えていない」という人もたくさんいます。怒りがこみ上げてきたり,気持ちが不安定になったり,食欲がなくなったり,眠れなくなったり,何もやる気が起こらないといった状態になることもあるかもしれません。

 このように,病気のことについて告げられるストレスは,とても大きなものですが,不安や落ち込みは,ある程度は通常の反応であり,自然なことです。そうなったからといって,すぐに問題になるというわけではありません。

 多くの患者さんでは,2週間ほどでこころが落ちついてきて,これからのことについて整理できたり,見通しを立てて前向きな気持ちになっていきます。

 一方で,ひどく落ち込んで何も手につかない状態が長引いたり,日常生活に支障をきたすようであれば,適応障害やうつ状態かもしれません。このような場合には,専門的な診療が手助けになります。

 こころの悩みへの対応について,いくつか大切な内容をご紹介します。より詳しく知りたい・読んでみたい場合には参考情報をご覧ください(p42参照)。

1.つらい気持ちを押し込めず,伝えてみましょう
―自分や周囲を責めるのはやめましょう

 がんになったのは誰のせいでもありません。理由や原因を考えるよりも,今の状況を受け入れて,これからの生き方を考えることによって,今後の生活をより自分らしくしていくことができます。心配ごとや不安をそのまま自分だけで押しとどめるのではなく,誰かに伝えることを考えてみましょう。

2.話すことで,気持ちが少し軽くなります
―こころの中にあることを,親しい人にありのままに話してみましょう

 「つらい」「不安だ」といった気持ちを自分の中にため込まないで,家族や親しい人に話してみましょう。涙を流しても構いません。心配をかけたくないからといってためらう方もいますが,大切な人にこそ,率直な気持ちを伝えてみましょう。身近な人に話すことが難しいときには,担当医や看護師などの医療者やがん相談支援センター(Q23参照)の相談員に話を聞いてもらうのもよいでしょう。がん相談支援センターは電話でも対面でも話すことができます。話すことで,落ち込んでいる気持ちが少し軽くなるでしょう。

3.医療者とよく話し合える関係を作りましょう
―対話を重ねて,信頼関係を築いていきましょう

 病状や治療のことについて,あなたの病状を最もよく理解しているのは,担当医や看護師です。一方で,あなたの自覚症状(息苦しさや痛みなど)や,困っていること,心配ごとなどはあなたにしかわかりません。納得しながら治療を進めていけるように,治療やこれからのことについて率直に話し合える関係を築いていくことが大切です。日常の人間関係と同じように,医療者とも何度か顔を合わせていく間に,お互いに人柄や考え方がわかってきて,自然に信頼関係が築かれていくはずです。

4.信頼できる情報を集めましょう
―なかには信頼性の乏しいものもあります。情報源を確認しましょう

 病気や治療のこと,これからの生活やお金のこと,利用できる制度のことなど,信頼できる情報を集めましょう。病気や治療のことは,本やインターネットで情報を得ることができますが,情報源の信頼性について注意しながら役に立つ情報を集めましょう(Q2021参照)。本書「患者さんと家族のための肺がんガイドブック」では,肺がんに関する正しい情報を網羅していますので,ぜひ調べてみてください。

5.メモを活用して,書きとめておきましょう
― 書くことで疑問点や不安,希望などが整理できます

 あらかじめ疑問や不安なこと,希望などをメモに書きとめておくことで,自分が何を大切にしたいのかをはっきりさせ,疑問点を整理することができます。メモにしておけば,限られた診察の時間でも要領よく質問でき,聞き忘れることを少なくできます。疑問点をうまく伝えられなければ,そのメモを担当医に示しながら質問するのもよいでしょう。家族や親しい友人と話し合うときにも参考になります。病状・診断・治療・副作用・費用・これからの生活・仕事・家族との関係など,どのようなことでも構いません。その場では解決できなくても,不安を減らすヒントやきっかけにつながることがあります。

参考情報

 がんといわれて不安なとき,医療者と良い関係を作りたいとき,話し合うときのコツ,信頼できる情報源について,役立つ情報を紹介します。

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がんと診断されたあなたに知ってほしいこと(国立がん研究センター がん情報サービス)

がんと診断されたときに,これからの生活を考えるなかで参考にしていただきたい情報として,向き合い方,相談できる場所,医療者との対話のヒント,情報探しのポイントなどがまとめられています。

患者必携 がんになったら手にとるガイド 普及新版(国立がん研究センター がん情報サービス)

がんと診断されたときに手にとって読んでいただきたい情報を,患者さん・家族の視点で取りまとめたものです。こころの支えのこと,対話のヒント,診療や治療のこと,生活や療養のことなど,幅広い内容がまとめられています。

がん診療連携拠点病院などを探す(国立がん研究センター がん情報サービス)

全国各地の「がん診療連携拠点病院」に設置されている「がん相談支援センター」には,がん患者さんや家族,地域の方も利用できる相談窓口があります。がん相談支援センターでは,専門の相談員が,がんに関わるさまざまな質問や疑問,心配ごとなどの相談に対応しています。相談には料金はかかりません。対面のほかに,電話やメールでの相談に対応しているところもあります。その病院にかかっていなくても相談できます。

がん情報サービスサポートセンター(国立がん研究センター がん情報サービス)

0570‒02‒3410(ナビダイヤル),03‒6706‒7797

受付時間:平日10 時~ 15 時(土日祝日,年末年始を除く)

がんに関する心配ごとや知りたい情報を電話で相談できます。がん患者さんや家族に必要な情報について「がん情報サービス」の内容をもとに相談を受けることができます(相談は無料ですが通話料金は利用者負担となります)。

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