第6章 非小細胞肺がんの治療 6-2 放射線療法が中心となる治療
Q63
放射線療法のみを行うこともあるのでしょうか

 臨床りんしょうびょうⅠ~Ⅱ期の小細胞しょうさいぼうはいがんでは,手術が行えない,もしくは手術を希望しない患者さんに対してていほうしゃせんりょう(ピンポイント照射)やりゅうせん治療といった高精度放射線治療を行うことが一般的です(粒子線治療は2024年6月から保険診療として可能になりました)。手術が行えない臨床病期Ⅲ期では,通常化学療法を併用しますが(がく放射ほうしゃせん療法りょうほう),からだの状態によっては化学療法を行うことも困難な場合があり,そのような場合は放射線療法のみを行うことがあります。

A

 臨床病期(ステージ)Ⅰ~Ⅱ期の非小細胞肺がんの患者さんでは,基本的には手術が第一選択となりますが,何らかの理由(元気さの程度や臓器機能など)で手術が行えない場合,または手術を希望しない患者さんには,放射線療法を行うことが勧められています。また,手術は可能であっても,やはり何らかの医学的な理由で十分な範囲の切除が難しい場合には,しゅく小手術しょうしゅじゅつが行われるか,それに代わるものとして放射線療法が考慮されます。とくにリンパ節への転移がなく,病変も十分に小さい臨床病期Ⅰ期では,Q38で述べたように高い線量を集中させて照射する方法,すなわち定位放射線治療(ピンポイント照射)や粒子線治療といった高精度放射線治療が一般的であり,高い治癒率が期待できます。

 リンパ節転移など病変がより広い範囲にみられる状態(臨床病期Ⅲ期)においては,手術を行う場合も,からだへの負担がより大きくなることが予想されます。合併症や再発の危険性から,手術を選択すべきではないと判断された場合には,化学放射線療法が勧められます(Q64参照)。しかしながら,からだの状態によっては化学療法を行うことも困難な場合があります。そのような場合であっても,放射線療法のみを行うことで生存期間が延長したとの報告があります。個々の状況に応じた判断が必要となりますが,可能なかぎり60 Gyグレイ以上の放射線照射を行うことが勧められています。

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