化学放射線療法後の小細胞肺がんの再発防止に有効とされる薬剤は今のところありません。脳への再発を予防するために予防的全脳照射を行うことがあります。
限局型小細胞肺がんの再発防止に,抗がん剤(細胞傷害性抗がん薬)を用いたいくつもの臨床試験が行われてきました。しかし,いまだ無治療での経過観察と比べて,再発防止率や生存率を向上させる薬剤はないのが現状です。
また,小細胞肺がんは一定の割合で脳に転移し,そこで再発します。もともと脳は外から侵入してきたものが脳に入り込まないような仕組みになっているため,薬剤が脳には到達しづらいという性質があります。そのため,小細胞肺がんにきわめて有効な抗がん剤であっても,脳に転移した腫瘍を制御することは困難です。
そこで,化学放射線療法によりがんがほぼ消失したと判断された患者さんに対しては,脳への再発を予防するために脳全体に対して放射線療法が行われます(予防的全脳照射)。これにより脳への再発率が減少し,生存期間が延長することが証明されています。
脳転移での再発を予防するために,頭部CTやMRIでがんが確認できない状態に対して脳全体に放射線療法を実施します。線量は1回2.5 Gyを10回(合計25 Gy)が推奨されています(図参照)。予防的な脳全体への放射線療法を行った場合の副作用として,脱毛や白内障,認知障害などの合併症があると考えられていますが,とくに認知障害などの神経障害をはじめとする長期的な副作用や,もともと脳の血管が動脈硬化などの変化をきたしている患者さんへの安全性は,正確にはわかっていません。